2020年度 ユーザー事例論文 受賞者インタビュー
特選 澤田 光弘 氏

  • 受賞者紹介
    デジタルトランスフォーメーション(DX)推進と
    ワークスタイル変革のススメ
    ~ITツールの活用と意識改革~

    澤田 光弘 氏
    (株)ゴールドウイン システム・物流企画部

  • 論文の概要
    創業70年の歴史のある(株)ゴールドウインは、業態に応じた独自のシステムを長年開発し、部門異動者・キャリア採用者には使いにくい属人化したシステムになっていた。近年の急激なIT環境の変化に対して、根本的なシステムの見直しが待ったなしの状態であった。そこで、2018年に「システム・物流企画部」を立ち上げ、攻めのITへ大きく舵を切った。IT改革推進にあたり、最新技術の利用、クラウド化の推進、強固なセキュリティの3点のIT軸と、利用者が使いたくなるシステム、具体的な他社事例や社内からの声を収集、会社の風土ににあった導入プロセスの検討の3点の目線を融合させることで自社に適したIT環境を作り出すことができた。
    その成果として、ネットワーク強化、ペーパレス化、PC変更、Office365導入、Box導入、横串のIT活用施策など、2年間かけて「DX推進」と「ワークスタイル変革」を実現できた。
  • インタビュー

    ―― 既存のシステムにはどのような課題がありましたか。

    これまで現場の声に耳を傾け、それぞれの業態に最適な独自システムを開発・運用してきました。長年にわたり、業務の変化に応じたシステム開発を続けてきましたが、特殊な業務ロジックや個別処理が複数作り込まれました。その結果、システム全体が属人化し、部門異動者・キャリア採用者など、初めてシステムを利用する人にとっては使いづらいものになっており、また近年の急激なIT変化に対応することが難しくなってきていました。

    ―― IT改革の推進にあたり、何が重要なポイントと考えましたか。

    IT改革推進にあたっては、IT(システム)と業務の2軸に分け、それぞれの対応方針を決めました。まず、IT軸では“いつでも・どこでも・誰とでも”システムが利用できる基盤の構築を実現するため、最新技術の利用・クラウド化の推進・強固なセキュリティにフォーカスしました。一方、業務軸では利用者が使いやすい・社内からの声を収集する・自社の風土に合った導入プロセスを検討するという方針で進めました。
    この2つの軸を融合させることにより、最適なIT環境が実現できると考えました。利用者が使いやすく・使いたくなるシステムであることと、業務を効率化し、従業員が本業に集中できるシステムを構築することが最大のポイントになると思ったからです。

    ―― 課題の抽出や利用者の意識改革では、どんな工夫をしましたか。

    社内利用者の協力は不可欠であり、社内利用者の意識がIT活用に積極的になるような活動を心掛けることが重要です。攻めのIT戦略と利用者意識改革を融合させ、IT改革を推進する必要があります。そこで「DX・ワークスタイル変革」といった話題の言葉をあえて使わず、社員が意識しやすい「いつでも・どこでも・誰とでも」というコンセプトと「標準化」という言葉で、2つの話題の意味を取り込み、社内利用者の意識改革をねらいとしながら、IT改革を始めることにしました。

    ―― 課題への対応方針と実施内容について教えてください。

    利用者からの課題をベースに、システムとして何を実施すべきかを具体的に検討した結果、ネットワーク強化・PC強化・ペーパレス推進・グループウェアの更新・NASクラウドサービス化の5つの対応を軸に、IT改革を推進する方針としました。IT改革では、新たなITツールをむやみに導入するのではなく、5つのテーマの関連性や、利用者にもたらす効果を検討することに時間をかける工夫をしました。特に各テーマ同士の関連性に着目した導入プロセスを策定し、各テーマの対応を実施する方針としました。各テーマには関連性があるため、同時に検討を進めることで統制のとれた展開ができ、より導入効果を発揮できるのではないかと考えたからです。次に実行に移すため、他社の事例やITベンダからの情報収集を行い、導入のスケジュール感と主要なプロセスを明確にしました。そのうえで、各テーマと関連性を考慮するポイントを設け、実施タスクを詳細化しました。タスクの詳細化にあたっては、社内関係者へのプロジェクト参加、情報発信、利用定着化の活動なども考慮した計画にブラッシュアップする工夫をしました。プロジェクトでは、それぞれゴールを明確にし、当初の計画を強く意識したプロジェクトマネジメントを遂行したことにより、スケジュール感に大きいずれもなく、推進することができました。

    ―― 導入効果、特に意識改革ではどのような効果がありましたか。

    導入したITツールの効果はそれぞれもちろんですが、2018年から2年間かけて進めてきたITツールの導入と紙に対する意識の変革は、ほぼすべてのテーマを同時進行で行い、プロセスをしっかり決めながら実行したことにより、想定以上の効果を発揮することができたと思っています。利用者は現在各種ツールを積極的に使い、小さい改善活動が社内のいたるところで自然と実行されるようになっています。なぜなら、短期間で複数のITツールを複合的に導入しながら、利用者の意識改革を進めたことで、会社の変化や目指すべきゴールを明確に感じ取れてきているからだと実感しています。

    ―― 論文執筆のきっかけと実際に書かれた感想・NEC Visionary Weekで発表された感想をお聞かせください。

    論文執筆のきっかけは、2018年から2年間のIT改革において、NECから支援を頂いており、今回の改革の内容を知っていたNEC担当営業から執筆を勧められて執筆した次第です。実施した内容を文字に起こすということは非常に難しく、表現や構成などを組み立てることに苦労致しました。実際に業務で行ったことを評価され、特選という賞を頂けたことを非常に光栄に思っております。また、NEC Visionary Weekでの発表はオンラインとなり、従来とは異なるかたちでの発表となりましたが、多くの方に発表を見て頂けたことを非常にうれしく思っております。

    ―― 今回の経験で得たものについてお話しください。

    今回の論文は私が執筆いたしましたが、推進や改革などは1人でできるものではありません。利用者が自分たちの仕事をもっとよりよくしたいと思い、会社をもっと良い会社にしていきたいという気持ちがあったからこそだと思っています。
    ITは人を助けるものです。ITを作るのも人です、ITを利用するのも人です。使う人の気持ちを考え、ビジネスをつなげ、ビジネス価値を向上できる仕組みを提案することで本当の意味でのICTを実行できたのではないかと思っています。