
島田 慧 氏
(株)BCC 第二公共事業本部 第一システム部
―― 新サービス開発のきっかけについて説明してください。
弊社は地場に根付く地域密着型のIT企業として、創業以来、長きにわたって多数のお客様にご愛顧をいただいています。ところが、近年お客様や市場のニーズが高度化する中、大規模開発案件の減少や業務システムのコモディティ化などをはじめとするさまざまな課題に直面し、競合他社との差別化や新たな企業価値の創出に向けてさまざまな取り組みを行っていました。
そんな中、弊社とNECの「共創」をテーマに開催したアイデアコンテストを通じて、弊社の大切なお客様である公共図書館様の情熱に触れ、その課題解決に向き合ったことがこのサービス開発のきっかけとなりました。
―― サービス設計において、どんな工夫をされたのでしょうか。
公共図書館様の最大の目標は「利用率の向上」であり、課題は「来館者傾向を分析して集客施策を立案/実行する」というものでした。この課題解決を支援するサービスの実現に向けては、来館者データの収集から分析、施策立案、評価までをオールインワンのトータルサービスとして弊社でご提供することを考えました。
そして、来館者データの収集手段としてNEC製品『画像による人物像分析システム「Field Analyst for Gate」』を採用することにより、AI・IoTを軸に来館者の顔から「いつ、どんな人が、どのくらい来館されたか」という情報が自動的に収集できるようにアプローチしました。
―― ビジネスPoCでは、どのような成果が得られましたか。
ビジネスPoC(Proof of Concept:サービス概念の実証実験)では、事前に立てた仮説や評価項目の検証結果、お客様の反応など、一定の成果も得られたのですが、最も大きな成果は「やってみなければわからない」という私自身の価値観の変化だと考えています。
元来計画を立てて物事を遂行していくのが好きなタイプだったのですが、現場ではまさにトライ&エラーの連続で、求められるのは柔軟さであり臨機応変な対応力でした。このビジネスPoCによって当初の構想は徐々に変化していき、次第にこの取り組みそのものや、そしてオンプレミス型からクラウド化へというサービスの方向性も決定づけられたことを実感しています。
―― サービスのクラウド化において、どのような取り組みをされましたか。
まず、これまでのビジネスPoCで抽出した課題を再整理し、サービスのあるべき姿を定義しました。その結果、以下の3点を新たなビジネスモデルの絶対条件であると位置づけ、NECと十分に協議を重ねて、サービスの分担開発を合意しました。
また、このサービスの開発は、投資プロジェクトとして起案を行いました。そこで、このプロジェクトの有効性と発展性を整理し、投資計画と回収計画をシミュレーションした資料とともに経営層に何度も訴えかけ、開発を承認いただきました。
―― 導入実績、現状、今後の展望について教えてください。
現在、国内の公共図書館3ヵ所に正式導入が完了し、4ヵ所でお客様ご協力のもと、実証実験を行っています。
コロナ禍の影響もあり、このサービス発想時の「集客」のみに焦点を当てたサービス展開は難しい状況ではあります。しかし、現状を可視化しながら、さまざまなデータと連携することにより「密を避けながら利用率の向上を達成する」という目標の達成に向け、お客様と一緒に取り組みを行っています。
現在の実証実験の結果を、サービスご紹介に付随するレポートとして整理することで、よりお客様に価値を感じていただけるご提案ができるものと考えています。
―― 論文執筆のきっかけと実際に書かれた感想・NEC Visionary Weekで発表された感想をお聞かせください。
論文執筆のきっかけは主に上司からの勧めでしたが、この3年間のプロジェクトを会社やチームの共有資産としてまとめたいという想いが自身にも湧き、執筆を決意しました。
第1稿執筆直後は、取り留めもない部分も多く含んだ乱文となってしまい20,000文字をゆうに超えていたため、規定の字数である12,000文字以内に収めるのに大変苦労しました。
内容については、主に取り組みや試行錯誤した部分の整理に注力しましたので、執筆の目的は果たせたと自己満足はしていましたが、高いご評価を頂けましたこと大変嬉しく思います。
発表についてはシンプルにとても緊張しました。今回は事前の動画収録・配信の形式であったため、収録時には聴講者様の反応が見えず、一人で話し続けることになりました。そのため、話し方や間の取り方は非常に難しかったというのが実感です。慣れないこともあり、お聞き苦しい点も多々あり申し訳なく思っておりますが、大変良い経験をさせていただきましたことを感謝しております。
―― 今回の経験で得たものについてお話しください。
今回、輝かしく名誉ある賞をいただきましたことを誠に嬉しく光栄に思います。
受賞や発表をきっかけに、社内外の多くの方々に温かいお言葉をいただき、自分たちの取り組みは間違っていなかったのだと、私自身はもちろんチームメンバーの士気とモチベーションが大きく向上しました。
現在、コロナ禍で大変な状況が長期的に続いておりますが、このサービスがお客様の価値を高め、課題解決のお手伝いができるように引き続き全力で取り組んでいきたいと考えています。