2019年度 ユーザー事例論文 受賞者インタビュー
特選 屋比久 友秀 氏

  • 受賞者紹介
    “モノ”から“コト”への挑戦!
    ~IoTを使って養殖業を活性化~

    屋比久 友秀 氏
    (株)OCC ITイノベーション推進室 取締役

  • 論文の概要
    近年では、IT企業にもシステム構築だけでなく、経営課題の解決に向けての提案が求められるようになってきた。海ブドウ養殖業の活性化にIoTを用いることで、どのように“モノ”づくりが得意なIT企業が“コト”づくりに挑戦し、成果を上げられたかを紹介する。
  • インタビュー

    ―― プロジェクトマネジメントの役割を担った背景と、プロジェクトの概要について教えてください。

    本プロジェクトの初期メンバーは大学(琉球大学)と糸満市役所と海ブドウ養殖業者の産官学プロジェクトでした。ところが、この初期メンバーだけではプロジェクト全体を把握し、資金調達も含めてプロジェクト全体像を描いて確実に遂行していくには経験が不足していると感じていました。そこで、システム開発によるプロジェクトマネジメントにも慣れ、産学官連携プロジェクトの経験のある弊社にプロジェクトマネジメントの声がかかりました。
    プロジェクトの概要は、海ブドウ生産業者の課題を抽出し、その課題を大学の知恵と技術を使って解決を目指すというものです。海ブドウ養殖では、「夏場・冬場の収穫量が減る」ことが課題になっており、この課題について大学の知見を活かし、「高濃度CO2海水」と「流れ」を使って解決するというのがテーマです。そのデータ収集の役割を担ったのがIoTの利用です。


    ―― プロジェクト推進上で苦労した点や工夫した点などをご紹介ください。

    プロジェクト推進上で最も苦労した点は、「予算確保」です。特に2年目の予算確保は大変難しかったです。1年目での成果をアピールしてもなかなか認めてもらえず、半年間は予算集めに奔走し、実験を進めることができませんでした。
    振り返って、もっと工夫すべきだった点として、提案書に多く詰め込みすぎずに要点を端的にアピールし、全体の分かりやすさに重点を置くべきだったと反省しています。


    ―― 実証実験を繰り返しながら、どのようにIoTを活用した養殖方法を実現していったのでしょうか。

    養殖環境のデータ収集は、これまでの手作業では1日2回から3回しか収集できませんでしたが、IoTセンサーを利用することで10分おきにデータ収集でき、ほぼリアルタイムで養殖環境の変化が分かりました。
    またIoT機器を自作することで、3Dプリンターの技術やセンサー開発の技術なども身につけられ、当社の新たな技術とすることもできました。


    ―― 「モノからコトへ」を実践され、成功することで、今後どのような展開をお考えですか。

    よく聞かれるのが「コト」って何ですか?という質問です。私なりの解釈では「永続性」だと考えています。お客様との関係もそうですが、事業の永続性やプロジェクトの永続性もそうですし、次から次へと変化していく状況にうまく対応しながら、次の展開に繋げていくことが「コトづくり」だと、最近、強く思うようになりました。
    今後の展開としては、現在、沖縄県の支援を受けながら、欧州海ブドウの養殖の可能性について調査を行っています。沖縄からいきなり欧州となると、突拍子もない展開なのですが、これも「コトづくり」の一つと考えています。欧州の自然環境への配慮は、日本人が考えている以上に人々の意識が高く、我々の環境にやさしい「新たな養殖方法」が受け入れられると信じています。海外での養殖についてはまだまだ課題が多くありますが、一つ一つ解決しながら進めていきたいと考えています。


    ―― 論文執筆のきっかけと実際に書かれた感想をお聞かせください。

    執筆のきっかけは、これまでの成果をシステム開発の視点でまとめたことがなかったので、プロジェクトの経緯も含めてまとめたかったことが一つ。また論文で何かしら受賞できれば、全国ユーザー会の皆様へ当社の活動をアピールできると思い、論文を執筆しました。実際に書いた感想は、一言で表現すると「大変だった」。当初、私が書いた論文は20ページもあり、それを論文の制限枚数である15ページに抑えるのが大変でした。また15ページに抑えてからも、読み直しを50回以上行いました。50回読み直ししても修正が出てくるので、終わりのない作業のように思え大変でした。しかし、最後には「これで良い」と納得できる論文を提出することができました。


    ―― 受賞の感想や周囲の評価、今回の経験で得たものについて教えてください。

    ユーザー事例論文の受賞は2回目ですが、1回目と異なり自分の意志で挑戦したユーザー事例論文ですので、思い入れが強く、さらに「特選」を受賞でき、大変うれしく思っています。周囲の評価も、当社の活動を社内・社外へアピールする良いきっかけとなり、私に声かけてくれる人が多くなりました。
    今回の経験で得たものは、多くの人に支えられて本プロジェクトを遂行できていること。そのことを改めて強く感じました。論文を書きながら過去を振り返ると、直接のステークホルダーだけでなく、社内・社外の間接的なステークホルダーからの応援や支えがあってプロジェクトを進められていることを思い出し、関係者の皆様に改めて感謝しております。本プロジェクトを通じて得られた絆を大切に「永続性」を意識して事業発展に取り組み、今後とも本プロジェクトに注目していただけるように頑張っていきます。