2019年度 ユーザー事例論文 受賞者インタビュー
特選 岩瀬 猛 氏

  • 受賞者紹介
    生産設備IoT化の課題をSDNで解決
    ~セキュリティ強化と保守の自前化を実現~

    岩瀬 猛 氏
    アイシン・エィ・ダブリュ(株) 製造本部 製造管理部 IoT企画チーム リーダー

  • 論文の概要
    現在、完成車メーカーは自動車部品の現地調達を進めているが、当社のトランスミッション事業でも生産の現地化が必須になり、その結果、生産活動の質を国内外全拠点において同レベルで管理し、実行できる仕組みづくりが必要となる。
    生産の質を管理するには、製造管理の評価指標をグローバルに共通化し、見える化する必要がある。そこで、評価指標の原データとなる製造情報を、生産設備をIoT化することで自動取得できるシステムを構築した。
  • インタビュー

    ―― 生産設備IoT化によるIT生産管理版システムの必要性や、その背景について説明してください。

    100年に1度の変革期を迎えている自動車業界において、生産性向上は必須の課題です。そんな中、弊社工場においては、改善の要の役割を担う現場管理者が「生産データ入力」という生産性のない作業に追われ、改善業務に十分取り組めないという大きな問題がありました。この問題を解決するため、生産設備IoT化システムを開発しました。


    ―― システム開発の方針や開発体制において、どのような工夫をされましたか。

    一部署に特化したシステムになってはいけないという思いがあり、製造×生技×情報の3本部合同のワーキンググループを結成して開発を進めました。また各本部の役員をアドバイザーとしてつけることで、本部間をまたぐ課題もスムーズに解決してきました。


    ―― 生産設備ネットワークの不具合による問題点をどのように解消されましたか。

    生産設備にはIPアドレス重複を検知する機能がなく、IPアドレスが重複すると設備誤作動が発生してしまいます。また、FA系ネットワークの保守ができる技術者は少なく、今後さらにIoT化が進んだ場合、保守要員確保が困難となります。それらの問題を、SDNネットワークを導入することで解決してきました。


    ―― 実際のネットワーク構築ではSDNのどんな機能を採り入れることで、どのような成果を上げることができましたか。

    SDNの主要機能の一つである、VTN(仮想テナントネットワーク)を活用し、生産設備ネットワークを小集団で仮想的に分離することで、IPアドレス重複トラブルの極所化を実現しました。
    また、物理・論理ネットワーク可視化機能を活用すれば、GUI画面上で仮想ネットワーク、物理ネットワークの両方を可視化してみることができます。この機能があれば、専門的なネットワーク技術者がいなくても、十分にネットワークの運営が可能であり、設備IoTネットワーク保守要員の自前化を実現しました。


    ―― 論文執筆のきっかけと実際に書かれた感想をお聞かせください。

    現場を無視した理念先行型の製造向けITシステムが氾濫し、導入しても実効果が見えないという現象が発生しています。そんな中、現場主導で生産設備IoT化を行い、成功した事例もあるということを多くの生技・製造技術者に知っていただき、日本のものづくりのIT推進に寄与できたらと思い、論文を執筆させていただきました。


    ―― 受賞の感想や周囲の評価、今回の経験で得たものについて教えてください。

    たくさんの技術者の方々と意見交換ができるチャンスをもらえて、とても良い刺激になりました。また、自分自身の業務に対するモチベーションの向上にもつながりました。