SP研委員長としての活動を振り返って
~国内外の交流で生まれた新たな視点

NUA-SP研究会会員のみなさまにインタビューし、スパコンの利用目的やスパコンへの思いなどを伺います。第1回にご登場いただいたのは、昨年度までNUA-SP研究会の委員長を務めておられた、東北大学の小林広明教授。ご自身のスパコンとの関わりや、NUA-SP研究会委員長としての活動を振り返って、印象に残ったことなどをお話しいただきました。

SP研究会前委員長 (2008年~2018年)
小林 広明 氏

(プロフィール)
工学博士
東北大学 教授
大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻
アーキテクチャ学講座
サイバーサイエンスセンター長特別補佐
工学部機械知能・航空工学科(兼担)

2001年から、SXシリーズのアプリケーションを研究

――初めに、小林先生の研究内容をご紹介ください。

私の専門分野は、コンピュータのシステム設計とソフトウエア開発を行うコンピュータアーキテクチャです。研究テーマは、高性能なコンピュータに関する研究をおこない、その成果を取り入れて開発されたスーパーコンピュータを運用して全国の研究者の先生方に提供し、それを活用した応用プログラムを一緒に開発することです。具体的には、津波のシミュレーションや航空機設計のシミュレーションといったアプリケーションなどがあります。

東北大学はNECのコンピュータを長年導入して、全国の研究者や技術者に提供してきました。私は2001年に東北大学のサイバーサイエンスセンターに着任し、初めてNECのスーパーコンピュータ(以下、スパコン)の運用に携わるようになりました。当時のモデルはSX-4。その後、SX-7、SX-9を経て、現在はSX-ACEと、4つのモデルにわたって、SXシリーズのシステムの性能を最大限に引き出し、効率よくアプリケーションを動かすための技術を開発してきました。

また、東北大学サイバーサイエンスセンターに、高性能計算技術の産学連携研究拠点としてNECとの共同研究部門を設立し、NECのエンジニアのみなさんと日ごろから議論を重ねて、我々の研究やスパコンユーザーの諸先生方が取り組んだ研究によって得られた知見を、次世代の新たなシステムの開発に生かしていくということに取り組んでまいりました。

――小林先生がNUA-SP研究会(以下、SP研)の活動に参加されるようになったのは、どのようなきっかけからですか。

NECのスパコンユーザーになったことをきっかけにSP研に入会はしていましたが、初めて活動に参加したのは、2004年にNECの本社で行われたSP研の第3回国際会議でのこと。20人程度の小さな国際交流会でしたが、NECの担当者さんから「ドイツのシュツットガルトハイパフォーマンス計算センター(以下、HLRS)からNECスパコンに関係する研究者の方々が来られるので、ぜひ講演してほしい」と言われ、参加したんです。

その後、私が東北大学サイバーサイエンスセンターのセンター長に就任した2008年にSP研の役員に就任し、SP研の委員長には、前委員長が引退されたタイミングで就任しました。

国内外でユーザー同士の交流が持てるのは、SP研の醍醐味

――SP研の活動の中で、最も印象に残っているのはどのようなことですか。

私が初めてSP研の活動に参加した第3回国際会議をきっかけに、ドイツとの連携が深まったことでしょうか。翌年の2005年から、HLRSと東北大学で国際ワークショップを毎年1回ずつ開催しており、今年30回目を迎えました。そこでは、ドイツと日本のスパコンユーザーに集まっていただき、SXシリーズを使った研究の最新成果を発表することを続けています。

ドイツのシュツットガルトは自動車産業が非常に盛んで、ダイムラーやメルセデス・ベンツ、ポルシェ、ボッシュなど、さまざまな自動車会社が拠点を構えています。同じ地で、HLRSは自動車産業を中心にスパコンの産業利用を進めており、その一方我々のセンターは航空機設計のシミュレーションや発電タービンなど工業製品の応用に取り組んでいる先生方が数多くおり、東北大学とHLRSのスパコン利用者には共通点が多くあります。そのため、国際ワークショップはお互いに情報交換ができる場として非常に重要なイベントとなっています。

東北大学で行われる国際ワークショップのあとは毎年秋保温泉に行くのですが、そこではみんな温泉に入り、カラオケをして、交流を楽しんでいます。研究発表とはまた違う懇親の場でも、非常に親しい付き合いができる場を提供できたということが良かったと感じています。これからもぜひ続けていきたい取り組みの一つですね。

――小林先生はSP研の委員長としての活動期間に、さまざまなイベントを企画されてきました。ご自身で企画して良かったと思われたイベントは何でしょうか。

NECのスパコンを導入している企業や大学の研究所を訪問するサイトビジットですね。SXシリーズのシステムがどのように使われているかを実際の現場で見ることができ、非常に楽しかったです。また、私たちと同じようにシステムのアプリケーションをユーザーに提供しているサイトでは、運用のノウハウを共有したり、現場で実際に起きている課題について話し合い、一緒に解決に向けて取り組んだりと、交流も深まりました。

NECの開発現場や工場にも見学に行かせていただき、スパコンがしっかりとつくられていることを肌で感じられました。製造の現場で何が行われ、どれだけ大変な作業でシステムをつくられているかを体感できた、貴重な経験でした。

サイトビジットの最後は飲み会になってしまうのですが(笑)、その土地のおいしいものを食べながら、講演の場ではなかなか話せないようなことまでざっくばらんに話ができることも楽しみの一つ。スパコンユーザー同士で本音を言い合い、「今度NECにこんな要望を出そう」という話をしたこともありましたね。

SP研の活動を通じ、研究者として新たな視点が得られた

――SP研の活動が、ご自身の研究に役立ったと感じることはありますか。

NECのスパコンユーザーになるまでは、大学の研究室で研究して、論文に書ければ終わりという感覚でした。もちろん高性能なコンピュータをつくるということがテーマではありましたが、それが実際にどう使われるかということまではあまり気にしていなかったと思います。しかし、サイバーサイエンスセンターに移ってNECのスパコンに携わるようになり、いろいろな分野の先生方との交流が広がったことで、実際に現場で使われる目的に合ったシステムをつくるという視点が持てるようになったと感じています。

一方で、NECのエンジニアの方々との交流からも、新たな視点が得られたと感じています。研究レベルではさまざまな可能性を試すので、我々はコストも何も考えずに自由な設計でシステムの在り方を求めていくのですが、NECのエンジニアのみなさんは、実際にそれを商品として実現するうえでいろいろな制約条件を考えて議論を進めます。議論を重ねるうち、我々研究者もより現実的な立場で研究を進めることができ、とてもいい形での共同研究が実現できたのではないかと思います。

大学では論文を書いて終わってしまうことも、NECのみなさんが少しでも形にしてくれるというのは、大学にいるものとしてはとして非常に幸せだと感じていますね。

――最後に、今後NECのスパコンやSP研に期待することはありますか。

NECは、ベクトル型スーパーコンピュータという、世界で見ても非常にユニークですばらしい技術を製品として世の中に送り出しているので、これからもその技術を失うことなく、軸足をぶらさずに、より高度な技術として製品化を続けていってほしいと考えています。そして、日本のHPCのコミュニティにより貢献していただきたいと心から願っています。

私自身も、NECのみなさんとはスパコンを通じて20年近く交流させていただきましたが、さまざまな時流のなかで、NECさんは一貫していいマシンをつくり続けて来られたと感じています。我々もそこを信頼し、少しでも日本のスパコン技術の発展に貢献できればと研究してまいりました。これからも、ともに取り組んでいければと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。