いのちのまなざし~Look of Life~

親しみあふれる都会 ~バレンシア~

(写真/文 小松 義夫)

バレンシア周辺の地図

地中海に面したバレンシアはスペインで3番目に大きな都市だ。古代ローマが植民都市を作ったのが始まりと言われ、大都会だが人々は素朴で親切だ。

この町の人々の生活に触れたくて中央市場に行ってみた。建物の外側や内部の装飾にはタイルが使われている。タイルを焼く技法はレフレコ・メタリコといいアラビアから伝えられたものだ。当時高価だった金属の質感を焼き物で表していたのが好まれていたという。

市場の店を見て歩くのは実に楽しい。スイカの赤色の奥には仏様の頭のようなアーティチョークが並んでいる。これは地中海沿岸諸国でとても好まれている野菜だ。いろいろな食べ方があるがシンプルな塩ゆでがおいしい。外側の弁を一枚一枚剥がし、根本部分を塩を落としたオリーブ油を付けて歯でしごくように食べる。やがて中心にたどり着くので、最後にその部分をいただく。地中海地方に流れる時間を味わうようにゆっくり食べるアーティチョークは、お酒を飲みすぎた身体にも良い。

海産物屋でカラスミに目が止まった。隣にはタコの干物が凧のようにぶら下がっている。他にも酒飲みには興味をそそられるものばかりで、この町にしばらく住んで市場に通いたい気分になる。

市場のコーナーにオルチャテリアという飲み物のスタンドがあった。オルチャータは、カヤツリグサ科植物の根を潰した飲み物で夏のバレンシアの国民的飲料として人々に愛されている。さっそく試してみたが、豆乳に似てはいるものの味や喉ごしが上品で深い。

市場から出て路地歩きをした。そこには本格的で歴史あるオルチャテリアがあった。入り口のタイルに描かれた樽はオルチャータを保存するために使われていたもので、柄杓で汲んで客に供したのだという。

バレンシアから南に12km、アルブフェイラ湖周辺は自然公園で米作りが盛んだ。日本の水田のような風景が広がる。湖畔の町エル・パルマールにはコメ料理パエリアの店が並ぶ。パエリアは昼に食べるものらしく、時間を外すと閉まっている店が多い。昼をかなり回った時間に行ったが、オートバイでパエリアを食べに来た人々もほとんど食事を終えていた。

街角の壁に昔の風景が描かれていて興味深い。右側には田植えをする人々、左には女性たちが大きなパエリアパンで調理をしている様子が描かれている。パエリアは野趣豊かな料理なのだとわかる。

夕方、アルブフェイラ湖畔の舟乗り場を通りかかった。湖上にはボートが漂っている。一人5ユーロで静かな水上の雰囲気を味わっているのだ。桟橋では若者が日光浴をしている。
大都会の近くに誰でもくつろげる場所がある。バレンシアは人々に優しい都会だと思った。

中央市場の建物。金属のように見える部分はレフレコ・メタリカという技法の焼き物だ
地中海諸国で好まれるアーティチョークとスイカ
タコの干物!ボラのタマゴの塩漬けのカラスミ、カツオの塩漬けなどがぶら下がっている
市場には夏になるとバレンシアの人たちが好のむ飲料、オルチャータを飲ませるオルチャテリアのスタンドもある
バレンシアの路地散歩で出会ったオルチャテリアのタイル絵
オートバイを連ねてパエリアを食べに来た気の良い男たち。
パエリアパンはほぼ空になっている。エル・パルマールの町にて
アルブフェラ湖のほとりのエル・パルマールの町の片隅に建物の壁の絵
アルブフェラ湖畔のエル・パルマールの町にて。
アルブフェラ湖に集う人びと