いのちのまなざし~Look of Life~

雪の「聖なる山」 ~チェコ~

(写真/文 小松 義夫)

チェコ周辺の地図

ヨーロッパ大陸のほぼ中央にあるチェコの国土は日本の約5分の1で、人口は約1,100万人。中世の面影を色濃く残すプラハやビールで知られるピルゼンなどの町が日本では馴染み深い。工業国でもあり、昔から優秀な車の生産で知られている。

ポーランドやスロバキアとの国境に近いベスキディ山地にあるラドホシュチ山は、聖なる山として人々に愛されている。この山に住んでいたラデガストは、土地、戦争、太陽そして豊穣の神様として山の上に像が立てられたと言われる。ところが9世紀頃に宣教師がやってきてラデガストの像を取り壊しその場所に十字架を立てた。以降この地方はキリスト教が広まったという言い伝えがある。

ベスキディ山地には、夏はトレッキング、冬はスキーや雪遊びをするため人々がやってくる。標高約1,000mのプステヴニは聖なる山の直下にある。そこには「木の詩人」と言われている建築家ドゥシャン・ユルコヴィッチにより造られた築124年の建物がある。実は15年前にここを訪れたとき車で山に迷い込み、たまたま古い木造の建物でコーヒーを飲んだ。そのとき見た室内の装飾が強く印象に残り、その感激を確かめるために再訪したのだ。

あいにく記憶のカフェレストランは2014年3月に付属の厨房が火事になり、修復のために閉じられていた。運良く隣のマムニェンカと呼ばれる宿泊設備に泊まることができ、民族模様が描かれた室内と土地伝統模様が彫られたベッドなどの調度品が醸し出す雰囲気に包まれぐっすり眠れた。

プステヴニに訪れる人たちは、麓の駐車場に車を置きロープウェイを使う。冬はここまで来ると、大抵雪が積もり、雪原に喜ぶ子どもたちの声が弾けている。多くの人で賑わう広場では、焼き芋、ソーセージ、土産物などが売られている。そのなかで、特に人気があるのはトルデルニークという中央ヨーロッパでよくある焼きケーキで、木製の棒にパン生地を巻き付けて炭の遠火で焼き上げる。伝統のケーキを焼くところを見ていたら、日本の備長炭で焼く焼き鳥を思い出してしまった。

雪に遊ぶ家族。背後は建築家ドゥシャン・ユルコヴィッチによって124年前に建てられた木造の民族建築
ペスキディ山地を下りると国境をこえてスロバキアに入ってしまう。
素朴な木造民家が並んでいる
約15年前に迷い込んで入った木造民族建築のカフェ。
細部の細工や模様が素晴らしくて長い間心に残っていた
宿泊できる木造民族建築マムニェンカにはこの地方の民族建築の要素が詰め込まれている。
屋根の突端の小さな帽子のようなところは警鐘を吊るすためのものだった
ベッドボードや家具にはこの地方の太陽の模様が彫られている。
壁には民族模様がさり気なく描かれている
雪を求めて山の稜線のプステヴニに集まる人々
山の斜面をスノーボートで下る。
子どもの表情は世界共通
トルデルニークという串焼き菓子。生地を焼いて砂糖、クルミなどのナッツをまぶす。チェコやスロバキア、オーストリア、ハンガリーなど中欧に多い