いのちのまなざし~Look of Life~

バオバブの樹と貝殻の島 ~セネガル~

(写真/文 小松 義夫)

セネガル周辺の地図

セネガルはアフリカ大陸の西端にあり、大西洋の海流に洗われる。その海岸を首都から100数十キロ南に下ったところにある町ジョアル・ファディユには、何度も足を運んできた。陸のジョアルは北西岸にあり、ファディユはそこから木造の橋でつながった島で、貝殻が堆積してできている。

本土から木の橋を渡って島に入り、貝殻を踏みしめながら歩く。この独特な感じと気分は世界でもここでしか味わえない。裸足になって貝殻が敷き詰められた地面を踏むと、貝殻が摩擦の音を立てながら少し沈む。一歩、一歩が貝殻と会話をするような感じだ。擬音語で言うと軽く“ギシギシ”という感じだろうか。

ファディユには約8,000人が住んでいると言われている。キリスト教徒とイスラム教徒で棲み分けているが、それぞれのお祭りのときはお互いが仲良く行き来する。
島の広場は大人も子ともも集う遊び場だ。大きなバオバブの樹があって島の住人を見守っているようだ。バオバブの葉は料理に使えるし、実は中身を粉にして水で溶くとサッパリとした飲料になる。幹の皮をはがして繊維を撚ればロープにもなる。もっとも最近では市販のロープが簡単に手に入るので、バオバブのロープは見かけない。それにしてもバオバブの樹の下はなんとも言えない落ち着き感がある。

ジョアルから15Kmのところに、セネガルで一番古いバオバブの樹があると聞いたので行ってみることにした。ローカルの乗り物が好きなので田舎の乗り合いバスで向かうことにした。随分と使い込んであるバスだけれど信頼のおけるドイツの一流メーカーのものだ。やがて目的のバオバブの樹に着いた。樹齢850年と言われ、円周32メートルのバオバブは圧倒的な存在感を放つ。

樹の周りには観光客目当ての土産物屋がズラリと並んでいる。こちらはローカルのバスで着いたので観光客とみなされず地元民扱いだ。土産物売りにも無視され、声もかけられない。おかげで邪魔されずゆっくりと見事なバオバブを見物できた。バオバブには年輪が無いのでいかにして樹齢を見定めるのかわからないけれど、これほど大きな樹は見たことがない。まもなく車で観光客が到着した。土産物売りがどっと彼らに群がる。

ジョアル・ファディユは国立公園のサルーム・デルタに隣接している。サルーム川などがつくる豊かな湿地で野鳥の繁殖地だ。生物圏保護区になっていてラムサール条約に登録されている。近年、そこで200以上もの大きな貝塚が発見されて世界遺産に登録された。貝塚は数千年にわたって漁労採取生活が営まれてきたことの証として脚光を浴びている。国立公園のすぐ隣で派手さはないが、ジョアル・ファディユの貝の島は、歴史的にも貴重な場所なのだと知った。

朝日が砂塵に霞んでいる。バオバブの姿がきわ立つ
引き潮の海を行く観光客。背後は貝塚に埋まるお墓
島の地面は貝殻。
女の子の遊び方はどこの国でも似ている
ファディユ島の貝殻広場にあるバオバブの樹。
花と若い実が下がる
乗り合いバスで大バオバブを訪ねる。
バスは信頼のドイツ有名ブランド車だ
樹齢850年と言われ、周囲35メートルの大バオバブ。
セネガルで一番大きいそうだ
少女。セネガルの人はオシャレ、そして
料理上手で知られている
軽くスモークされているエビ。買って帰って
日本でセネガルの思い出を味わった