いのちのまなざし~Look of Life~

エッフェルの「鉄の家」 ~ペルー~

(写真/文 小松 義夫)

ペルー周辺の地図

アマゾン川上流の町イキトスは、陸の孤島と言われている。道路がなく、飛行機か川を航行する船でしか訪れることができない。この町は1750年代にヨーロッパ人がキリスト教を布教するためつくられ、以後、布教の中心地になった。
19世紀中頃にアメリカでゴムの加硫法(硫黄を加えて固める方法)が開発され天然ゴムの需要が急増し、産地のイキトスが栄え始めた。さらに1900年になって自動車の普及が進むとタイヤなどに使うゴムの需要が爆発的に増えた。イキトスには数千人の外国人労働者が集まったと言われている。

19世紀の終盤から20世紀初めは、鉄を使った建築物がヨーロッパの各都市で作られた。建築の「鉄の時代」と言われる。イキトスにも鉄骨や鉄板などがヨーロッパから運ばれ、組み立てられ、家が造られた。「鉄の家」(ラ・カサ・デ・フィエロ)の設計デザインはパリのエッフェル塔の設計者ギュスターヴ・エッフェルのグループによるものだ。周辺が川とジャングルのイキトスで「鉄の家」は町のシンボルになった。

繁栄の歴史がウソのようにイキトスの港はのんびりとした雰囲気だ。河口には3500トンの船が航行してくるが、村の人々の生活に触れたいと思い船を頼んで支流を回ってみることにした。水路に浮かぶ小さなボートでは村人が網で魚を捕っていた。そこに船頭が舟を寄せて世間話をする。ほどなくして小さな村に着き船頭の案内で歩き始めた。道の脇には葉が爽やかなアサイーの木が植えられている。ヤシ科でブルーベリーに似た実がポリフェノールを多く含み奇跡の植物といわれる。
さらに歩くと何かが道をノソノソ渡ろうとしている。ナマケモノの子どもだ。この村ではナマケモノが愛され大切にされている。ジイっとして木にぶら下がり、霧や水滴を摂りコケや木の葉など一日8グラムの食事で十分だとか。道を渡ろうとしたナマケモノの子どもは、女の子に抱かれ森に返されるようだ。
通りかかった家のベランダでは男の子がハンモックでくつろいでいた。寝具にも腰掛けにもなるハンモックは中南米が発祥だ。旅人が自分用のハンモックを丸めて持ち歩いているのをよく見かける。体を少し斜めにすることが上手く寝るコツだという。日本に帰ったら庭のどこかにハンモックを引っ掛け斜めに寝てみよう。

アマゾン上流部の空
イキトスのアルマス広場に面した「鉄の家」。
エッフェルの設計で130年前に造られた
130年前にアマゾン奥地に造られた「鉄の家」は今でも現役だ
アマゾン川河口からイキトスまで3500トンの船が上って来る。雲間からの光で虹
子どもを連れて投網で魚を獲る村人に舟を寄せて世間話をする船頭
奇跡の果実アサイーの実をつけるヤシ科の木の姿が爽やかだ
みんなに愛されているナマケモノの子ども。
木の上に住んでいる
ハンモックは中南米が元祖。斜めに寝るのがコツ