いのちのまなざし~Look of Life~

青い迷路 ~モロッコ~

(写真/文 小松 義夫)

モロッコ周辺の地図

ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡は意外に狭い。スペインの港からモロッコまで船で1時間足らずだ。モロッコのリフ山脈に位置するシャウエンの街では、人々が隠れるように、壁に囲まれて暮らしている。街がつくられたのは15世紀の半ば過ぎ、その後1492年の国土回復運動によりスペインを追われたアラブ人やユダヤ人が移り住んできた。一時期はポルトガルやスペインの勢力がやってきたこともある。この町にはイベリア半島の文化の影響が色濃い。

青く塗られた壁に囲まれた旧市街は、青い迷路のようで、歩くと爽やかで独特な気分になる。漆喰壁に塗られた青を前にするとそのまま壁に吸い込まれそうになる。壁はユダヤ人が塗り始めたという説があるが、定かではない。

ゆるい上り坂になった道の奥から羊の群れがやってきた。山で草を食んできた羊が小屋に帰るのだ。椰子の葉を編んでボンボリ飾りの帽子を被った羊飼いの女性が羊を追っている。すれ違うとき端によけたが、女性は羊に気を取られ、こちらのことは眼中にない。
通りがかりの家の扉が開いていたので覗くと男が機織りをしている。さらに角を曲がると子どもたちがサッカーをしていた。洗濯物がぶら下がる青い路地を歩いていると街の人達の生活にほんの少し参加させてもらっているようで心地よい。

街を後に壁の外に出ると、山から豊富な水が湧き出ていて、洗濯場は女性たちで賑わっていた。山には低い木しかないのに、一体どこからこんなに水が出てくるのか。多分、地下水脈があるのだろう。山の斜面に街ができたのはこの豊富な水のおかげなのだ。

坂を下って広場に出たらそこは青空市場だった。広場を囲む家の屋根はスペインの半円瓦だ。市場に並ぶ野菜や果物は種類が豊かでジャガイモ、ソラマメ、トマト、人参、ピーマン、カリフラワー、玉ネギ、ビーツ、リンゴ、マンダリンオレンジなど。市場ではモロッコの伝統的なコート「ジェラバ」を着た男の姿が目につく。市場でいろいろと観察しながら買い物をすると、その土地の文化に触れることができて楽しい。

帰国後、あらためてシャウエンの青を思い返していると、20世紀の代表的な画家シャガールが青を好んで使い、その絵がシャガール・ブルーと言われていることを思い出した。ドイツの聖シュテファン教会の青いステンドグラスも彼が手掛けたものだ。次はドイツを訪れてステンドグラスの青い光に浸ってみたいと思った。

坂道が多いシャウエン
背後は山。旧市街は壁で守られている
洗濯物も風景の一部。青い迷路
迷路で羊の群れとすれ違う
モロッコの伝統的服装のジェラバ姿は実に怪しい。でも実際は携帯電話中
道はサッカー場にもなる
背後の山から豊富な水が湧き出している。
潤沢な水で洗濯
路上市場のある広場を囲む家の屋根はスペイン瓦、ここはスペインの影響が濃い