いのちのまなざし~Look of Life~

トナカイ遊牧民を訪ねて ~モンゴル~

(写真/文 小松 義夫)

モンゴル周辺の地図

トナカイ遊牧民のトゥバ族に会いに行くことにした。トナカイと、トゥバの人たちが住む移動式住居のオルツを見たかったからだ。モンゴル人は彼らをツァータンというが、それはモンゴル語で「トナカイを連れた人」という意味だそうだ。

トゥバ族の村に通う北海道の日本人に手配してもらい現地に行けることになった。首都ウランバートルで車の運転手と落ち合い、目的地を目指した。運転手が携帯電話でトナカイ遊牧民と連絡をとってくれている。モンゴルの北、ロシア連邦を構成する国の一つのトバ共和国との国境地帯に向かう。遊牧地は山の中なので、麓に車を置いて馬に乗って行かねばならない。

モンゴルの大きな空を見ながら馬が山から下りてくるのを待っていると、トナカイ遊牧民が小型の馬を連れてきた。「馬は神経質で、馬上で写真を撮るとシャッター音で暴れるから気をつけて」と言われた。馬の背に揺られて平地を歩いているときは楽しいが、山の斜面を上るときは傾斜がきつくて自分の身体のバランスをとるだけでも大変だ。腹筋を使って重心を外さないように調節しているうちに疲れてくる。途中、雨が降り出し、ビニールの雨カッパをかぶった。雨カッパの裾がパタパタすると馬が神経質に反応する。7時間ほど馬上に居て、遊牧地に着いたときは疲れ果てていた。そこは標高2000m程度だ。山の向こうを下って少し東に向かうとロシアのバイカル湖だ。

夕方の遊牧地には山の針葉樹林帯から下りてきたトナカイが集まっていた。夜にオオカミなどの攻撃から守るため杭に繋がれ、家族が眠るオルツの近くでまとまって過ごしている。トナカイが全く警戒することなしに近寄ってきた。とても友好的な動物だ。よく見ると、遠くには行けないように二頭が足を一本ずつ縛られていた。夕方の斜めの光の中で少女がトナカイの乳を搾っている。

宿泊用のオルツで眠ったあと早朝に外に出ると、どこからかトナカイに乗った少年たちが現れた。トナカイというとサンタクロースのソリを引く姿を思い浮かべるが、ここでは馬のように背中に人を乗せて移動に使う。

昼すぎに近くの河原に行くと学校があった。周辺に散らばる放牧村から生徒を集める学校だ。円錐型の校舎の前で体育の授業なのだろうかボールを使っていた。

放牧村でオルツの家族と一緒に食事をした。メニューは、干し肉の料理やチーズを混ぜて焼いたパンなど。オルツの中にはストーブがあり暖房と煮炊きはそれでまかなう。円錐型のオルツを支えるカラマツの木は一体何本あるのだろうか。上部にまとめられた所は空いていて煙出しの穴になっている。内部には洗濯ものや山で採れた薬草などが干されている。外には小型の太陽電池パネルがあって携帯電話の充電などに使われていた。

帰国してからもトナカイの人懐っこい姿が忘れられず、北海道の友人に話したら、トナカイ牧場をやっている人がいるという。また、冬にはニセコのスキー場にソリをひいたトナカイが現れることもあるという。トナカイに会いに、いつか北海道に行こうと思う。

大きな空を見ながら山から馬が下りてくるのを待つ
小さな馬がやってきた。荷物用の馬も来た
夕方、トナカイの乳を搾る。一番手前のオルツに泊まった
山の針葉樹林(タイガ)で草をたっぷり食べて遊牧村に降りてきたトナカイ。夜は村で安全に過ごす
早朝、これからトナカイを針葉樹林の山に連れて行く
近くの遊牧村からトナカイに乗って夏の学校に登校する
小川のそばの学校。校舎はブルーシートをかけたオルツ
カラマツの木を円錐状に何本も束ねる。
上部には煙だしの空間が開いている