いのちのまなざし~Look of Life~

木の文化とチーズの町 ~ポーランド~

(写真/文 小松 義夫)

ポーランド周辺の地図

ショパンとコペルニクスの国、ポーランドは、非常になだらかな丘陵地帯が続き、その微妙な高低差の変化に気がつかないほど平らな国だ。唯一、南部のザコパネにはかろうじて山がある。そこは2000メートル級の山が連なるタトラ山脈の麓で、国定公園に指定されている。日本ではあまり知られていないが、中央ヨーロッパでは人気を集める山のリゾート地だ。

ザコパネは社会主義時代の昔から、夏にはキャンプやトレッキング客で賑わい、冬はスキーやスケートを楽しむ人々が訪れる。町の近くの山の斜面には数多くのスキー場があり、リフトの周りにはたくさんの人々がスキーを楽しんでいる。

リゾート地とはいってもザコパネには不思議に落ち着いた雰囲気がある。町の中心部や周辺に木造の家や建物があるからだろうか。この環境を好んだ音楽家、詩人、画家、言語学者などの文化人たちがザコパネに住み、創作や研究活動をしたことがうなずける。木と文化の伝統がこの町の空気、雰囲気に厚みを与えているようだ。

ザコパネ周辺はクリスマスツリー型の針葉樹トウヒなどの木材が豊富だ。その材木を惜しげもなく使う建築様式はザコパネスタイルと呼ばれている。17世紀中頃に造られた町で一番古い「旧木造教会」は、屋根、床、天井、壁、祭壇、柱もすべて木製で手作りの温かいぬくもりがある。教会のセメトリーも木を使った墓標が多い。ポーランドの人口の90パーセントがカトリック教徒で、ヨハネ・パウロ2世は長くローマ法王の地位にあった。教会の姿もポーランドに深く根差している。

町を歩くとそぞろ歩きを楽しむ人がこの地方名物のオスツィーペックを手にして歩いている。これはタトラ山地の特産品で、羊の無殺菌乳を発酵させてつくられるチーズの燻製を温めたものだ。近くで採れたラズベリーやブルーベリーなどのジャムを塗って食べる。試してみるとチーズの塩気にほのかな煙の香りがして、甘いジャムが絶妙の取り合わせだ。口に入れると幸せが広がった。

郊外に出たらログハウスを造っている現場があった。大工さんが材木に彫り物をしていたので、声をかけて写真を撮らせてもらった。自分の仕事に対する自信に溢れたザコパネ人の表情。まさにポーランド人の顔だなと思った。

背後の山並みはタトラ山脈。2000m級の山々だ
各種の宿泊設備が整っているので学校の集団旅行も多い
タトラ山地伝統の木造の家の土産物屋さん。屋根も木板で葺かれている
200年以上前に造られた「旧木造教会」。内部もすべて木で造られている
「オスツイーペック」という珍しい羊のチーズの燻製を売るワゴン。この地方の特産品だ。ジャムも一緒に並んでいる
ログハウスを造る現場。材木を飾り削りしている大工さん
体全体から仕事に対する自信があふれている大工さんは、典型的なポーランド人の顔をしている