いのちのまなざし~Look of Life~

竹のブランコに揺られる ~ネパール~

(写真/文 小松 義夫)

ネパール周辺の地図

首都カトマンズから小さな飛行機でポカラに飛んだ。そこは標高827mの盆地だ。町からはアンナプルナ山群がよく見える。
ポカラはヒマラヤ山脈の各方面に行くトレッキングの基地の町で、入域許可証などはここで手配すると便利だ。今回は時間が少ないのでトレッキングはできないが、少しでも山に触れたくてガンドゥルンという村を目指した。

バスで近くまで行って、終点から村までは歩くつもりで準備した。ところが、バスに乗るといきなり終点のガンドゥルン村の下に着いてしまった。聞くと、3週間前に大きな岩を割って道路を開通させたばかりだという。久しぶりにザックを背負って歩くつもりだったので、少々拍子抜けした。バスを降り、斜面を上がって村に行き宿を探した。主なトレッキングルートにあるこの村では、ホテルを探すのに苦労はしない。眺めの良いホテルに泊まることにした。

朝起きると標高7219mのアンナプルナ南峰が目前に見えた。清々しい朝だ。この山の背後にある主峰は8091mで世界第10位の高さだ。幸運にも村は、ヒンドゥー教のダサイン祭の最中だった。9月から10月の約2週間、ネパール全土で行われる収穫を祝う祭りだ。学校も10日ほど休みになって子どもたちはのびのびとしている。
各所に竹のブランコ(バンブースウィング)が設置されていて子どもだけではなく、大人も揺られて楽しんでいる。標高1951mのガンドゥルン村には竹は生えないが、わざわざ低地から太い竹を運んでくるようだ。バンブースウィングに座ってみると、誰かが背中を押してくれる。空高く振られるのはとても気持ちがよい。こんなふうに子供時代に戻れる経験はなかなかできるものではない。

この村に住む人たちはグルン族でアンナプルナの山麓に広く分布して住んでいる。チベット系なので何となく日本人に似ている。家の庭に出て景色を味わっている老人は、日本のどこにでもいる田舎のお爺さんのようだ。年齢を尋ねたら85歳だという。それでも気持ちは若く、耳に花を挟んで身だしなみを整えている。宿の近くのお寺では少年たちが祭りの音楽の練習に励んでいた。中庭では婦人が芋茎を薄く切っている。干して保存食にするのだろうか。ここは昔の日本のようで気分がとても安らぐ。

次回は数日間のトレッキングに来ようと思う。遠くないところに温泉もあるようだ。村の坂道の上で休んでいた60代後半かと思われるアメリカ人のトレッカーと話しをした。坂を上がるのが苦しかったので息を整えているというこの男性は「ネパールには気を付けろ、くせになるから。いつも登坂がきつくてネパールなんて二度と来るものかと思うが、俺なんて今まで23回も来てしまっているんだ」と言った。くれぐれも気をつけよう。

ポカラからのバスは村のすぐ下に着く。乗り合いの4WD車で来る人達もいる
朝起きて部屋から出るとアンナプルナ南峰が見える
大きな竹ブランコ。これに乗るためだけでもネパールに行きたい
子どもたちがお寺の境内で楽器の練習をしていた
ガンドゥルン村は標高1951mでグルン族が住む。家の屋根はスレートで葺かれている
85歳の貫禄。耳に花を挟む若い心の持ち主
中庭で作業する婦人の胸にはサンゴの首飾りが。山の中に海からの交易品が渡ってくる