いのちのまなざし~Look of Life~

運河の町でタイムスリップ ~パナマ~

(写真/文 小松 義夫)

パナマシティの地図

パナマは太平洋とカリブ海(大西洋)を分かつ細長い国だ。南米大陸と北米大陸をつなぎ紐のようにかろうじて結んでいる。
パナマ運河が開通した1914年当時、運河とその両側の土地は、アメリカの永久租借地だった。1970年代に条約が見直され、1979年12月からアメリカとパナマの共同管理となり、さらに20年が過ぎた1999年12月31日、運河は正式にパナマのものとなった。

全長約80キロメートルの運河は、その途中の山の中に二つの湖がある。最高地点の湖面が海抜26mなので、閘門(こうもん)という水を堰き止める水門で船を閉じ込めてから水位を調節することによって、徐々に持ち上げていく。このように船を進めていく様子は「水の階段」とか「船が山を越える」などと表現される。閘門を開け閉めするため、船が運河を通過するのに24時間ほどかかる。昨年は約13,000隻の船が行き来したという。
閘門は全部で9つあり、そのうちの1つミラフローレス閘門には、通過する船を見学する観覧席がある。船の通過中にスピーカーから説明の音声が流れ、閘門に浮かぶ船を曳く電気機関車は日本製だと言っている。運河関係者は重い船を曳いても絶対へこたれないこの機関車をミュール(ラバ)と呼ぶ。

運河に隣接する首都のパナマシティは、人口90万人弱、全土がスペイン語だ。船舶保険会社とか銀行が集中する町は、金融センターとして栄え、高層ビルが立ち並び、バスや地下鉄網も整備されている。日曜日には車が大幅に侵入制限され、人々が車道を自由に行き来できるようになり、ジョギングする人、道路や公園でテニスやバスケットボールに興じる人の姿が見られる。
近代的な中心部とは異なり、歴史的な旧市街には、スペインのコロニアル建築が建ち並ぶ。広場には教会、海岸線には昔つくられた砦が見られる。

旧市街を出て庶民的な雰囲気の地区に入り、渋い外観のレストランを見つけたので入ってみた。店内は1950~1960年代のまま時が止まったようで、壁にかかる絵や店のレイアウトなどが古い時代を語っているようだ。
隣の人が食べていた料理を真似して「その日のメニュー」を注文してみた。大きなスープ皿で運ばれてきた料理は、骨付き牛肉、中南米発祥のユッカ芋(タピオカをつくるキャッサバ芋)、そして料理用バナナなど。食べきれないほどボリュームがある中米スープ料理に大満足していると、お婆さんが二人入ってきて、同じ「その日のメニュー」を頼み、ゆっくりと昼食をとり始めた。タイムスリップして懐かしい過去に迷い込んだような、くつろいだ時間が過ぎていく。

水位を整えるため閘門(こうもん)で仕切られた運河。運河両側の線路は船を曳く電気機関車が使う
大型のヨット(クルーザー)も大きな貨物船に紛れて通過する
パナマ新市街の中心には高層ビルが立ち並ぶ。車用の道路は日曜日には市民に開放される
新市街の片隅。日曜日はゆっくりと犬の散歩
コロニアル建築が並ぶ旧市街の道。向こうに新市街の高層ビル群が見える
半世紀以上前のままのカフェ・レストラン。左の壁にレストラン外観の絵が掛けてある
氷で冷やしたスイカ、パパイヤを売る売店。背後は昔ながらのカフェ・レストラン