いのちのまなざし~Look of Life~

カナックの文化に触れる ~ニューカレドニア~

(写真/文 小松 義夫)

日本からニューカレドニアへの飛行時間は8時間を少し超える程度だ。地球を縦方向に移動するため、時差が2時間なので身体は楽だ。

首都ヌメアには深夜に着く。飛行場が町から離れているため、町中のホテルまではバスで行くことになる。キップ売り場に並んだが、なかなか進まない。一人ひとり、ゆっくりと切符を売っているのだ。効率優先の日本から南国の時間の流れに適応するのは難しい。順番を待ちながら少しイライラした。しかし来たからには、現地のペースに合わせなければ、と思い直した。言葉も苦手なフランス語だ。それがかえって旅気分を際立させる。ホテルの朝食はフランス式のプティ・デジュネでコーヒーとフランスパン、バターとジャムだけのシンプルなもの。パリで朝食をとっているような気分になる。

国内線の飛行機で1時間弱、ロイヤルティ諸島の島に着いた。白い砂浜と深さによって変わる青い海はため息がでるほど美しい。その青いグラデーションを見ているだけで心が落ち着く。夜、することもないので空を見上げると、オリオン座が見えた。日本とは逆の斜め下向きだ。ああ、南半球に居るのだな、としみじみ思う。

青い海と白い砂浜を堪能しヌメアに帰ってきた。町を歩くと市場の近くのココティエ広場の片隅に人が集まっていた。ステージがつくられていて「カナックの集い」と書かれた幕が張られている。カナックとはこの島々の先住民のことだ。天幕の下にご婦人たちがココ椰子の葉でマットや飾り物などを編んでいる。その光景は、まるでゴーギャンの絵のようだ。すぐ近くに腰を下ろして作業を見ていると何とも言えない安心感に包まれる。拒否されるわけでもなく、かといって歓迎されている気もしない。自分が居ることがあまりにも当たり前なのだ。言葉は交わしていないが沈黙の会話が成り立っているような気がした。だいぶ時間が経ってしまったので、周囲に会釈をして立ち上がり歩き始めると、後ろから女性が近づいてきて椰子の葉で編んだ帽子をかぶせてくれた。ああ、気にしてくれていたのだ、と温かい気持ちになった。

帽子を被ったままバスに乗った。カナック文化の神髄が集まるチバウ文化センターに行くためだ。そこには芸術センター、博物館、劇場、図書館などがあり敷地にはカーズという伝統的な家屋が移築されている。パリのポンピドー・センターや関西国際空港を設計したイタリア人の建築家レンゾ・ピアノが長い調査の結果1993年に建築にとりかかり1998年にオープンした。伝統家屋のカーズをモチーフにした10戸の建物は土地から生えてきたようで風景にとけ込んでいる。カナック文化がこれからも発展するように、と未完の状態にしてあるのが好ましい。

展示を見て外に出ると、賑やかな「戦いの踊り」が始まっていた。町に戻り港まで歩くと観光客が三々五々クルーズ船に戻ってくるところだった。沈む寸前の太陽の光が船をロープで繋いでいる鉄のドックに映った。太陽が姿を隠してからしばらく残る明るさも、色を変えながら徐々に消えて夜が来る。

青い海はどこにでもある。ロイヤルティ諸島にて
ヌメアの町角。左の白いポストのようなものはバスストップです
みんなでココ椰子の葉を編む。近くに座って長居させてもらった
お母さんに編みかたを教えてもらっているのだろうか
チバウ文化センターの伝統家屋のカーズをモチーフにした建物。10棟ほどあるが未完の状態にしてある。建物の手前、旗の後ろにカーズの屋根が見える
チバウ文化センターの広場で戦いの踊り
これから踊る女性たち。椰子の葉のドレスが素晴らしい
船をつなぐ鉄のとめ具に一日の最後の光が映った。三々五々船にもどる観光客