いのちのまなざし~Look of Life~

地中海に浮かぶ山 ~コルシカ島~

(写真/文 小松 義夫)

フランス人に「コルシカ島に行こうと思う」と言うと「何であんなところに行くの」と何度も言われた。そのたびに腑に落ちない気持ちになった。

コルシカ島は長い間イタリア(ジェノヴァなど)領だったが、短い独立を経てフランス領になった。しかし独立の気風が強く、独立派の武力闘争放棄声明からまだ10年も経っていない。そのようなわけで観光客が訪れるようになったのは最近のことだと知った。

ナポレオンの出身地としても有名だが、彼が生まれたのは島がフランス領になった1769年。本来はナポレオーネ・ディ・ブオナパルテというイタリア人名だったが、後にフランス風のナポレオン・ボナパルトに改名したという。

地中海に浮かぶコルシカ島は広島県と同じ程度の広さで、ほとんどが山だ。イタリアの港から船で島の北端にあるバスティアに着き、そこからレンタカーで島の南端の町ボニファシオを目指した。

ボニファシオの旧市街は、石灰岩の崖の上に広がり、ジェノヴァ人によって造られた砦に囲まれている。港から旧市街のある城塞を目指して歩いた。上り坂はつらいけれど眼下の港の青い水がきれいだ。

ジェノヴァ風の門から中に入り、旧市街を歩くと、街路樹の桑の木の下に椅子とテーブルを出しているバー・レストランがあった。外の席では、桑の実に気をつけなければいけない。頭上から落ちてくるかもしれないし、熟した実をお尻で踏みつけると服が紫色に染まってしまうのだ。そんなことを気にしながら腰掛けていては落ち着かないのではないか、とおかしくなった。

ボニファシオの街を海から見たくなり観光ボートに乗った。空は晴れ渡り、海の上をボートで行くのは気持ちが良い。どこまでも続く白い石灰岩、崖の上のボニファシオの町が海を睥睨しているようだ。よく見ると海から60メートルはあると思われる崖の縁の建物の下が崩れている。海に面した部屋の下には何もなく、空中に張り出している。もし自分があの部屋に居たら、と想像するだけで恐くなった。

海を離れ山間部の大学町コルテに向かった。ここはコルシカ島が独立していた時に首都だった町だ。旧市街のパオリ広場には独立運動を指導したパスカル・パオリの銅像がある。その風景を見ているとコルシカ島の魂はこの山間部の町に宿っているように感じる。

この日はちょうどお祭りで、銅像の前に白と黒の仮装した人が並んでいる。人混みの中を進むと小さな子どもたちがアヒル釣りをしていた。日本の縁日に出る金魚すくいを思い出した。

島を去る前の日に泊まったホテルのオーナーが「仕事用の四輪駆動車と自分用の乗用車はフランス車ではなくて日本車だ」と強調していた。独立の気風あふれるコルシカ人のフランス本国に対する意地と頑固さを垣間見た思いがした。

石灰岩の白い崖と海面から約60メートルのボニファシオの旧市街
近くの丘から石灰岩の崖の上のボニファシオ旧市街を望む
ボニファシオの旧市街を散策する人々
崖の下が崩れている。
海を見ながら住むのは不安ではないだろうか
桑の木の下に座っていると熟した紫色の実が落ちてくることがある
ボニファシオ旧市街、レストラン・バーの店外の席
パオリ広場にある独立運動の指導者、パスカル・パオリの銅像。
祭の日なので仮装した人がいた
パオリ広場に向かって進む仮装した女性
日本では、お祭りの日に金魚すくいが出るが、
ここではアヒル釣りだ