いのちのまなざし~Look of Life~

アンデスの峠を越える ~チリ~

(写真/文 小松 義夫)

チリで一番古いサンペドロ・デ・アタカマの町は、アンデス山脈の太平洋側、標高約2,400メートルのアタカマ砂漠にある。このあたりは雨がほとんど降らず空気が乾燥しているため、日本をはじめ世界各国の天文台が集まっている。町には中南米のどこにでもあるアドベ(日干しレンガ)造りの家が並び、生活に使う水はアンデス山脈からの雪解けの地下水が頼りだ。

この町に来たのはアンデス山脈の峠を越えてアルゼンチンのウマワカ渓谷に行くためだ。ところが異常気象のため雪で峠が閉ざされていて、荷物を載せた大型トラックが数珠つなぎで峠が開くのを待っている。

これでは直接アルゼンチンに入るのは無理だと思い、ボリビアに抜ける峠を越えて迂回し、下って行くことにした。有名なボリビアのウユニ塩湖まで2泊3日で向かう乗り合いの車が出ているというので申し込み、そこから世界各国から訪れた若者たちと2台のランドクルーザーを連ねてボリビアに向かった。

最初に越えようとした峠はやはり雪のため越えられず、もうひとつ先の峠に向かうことにした。標高5,000mの峠は、酸素が地上の半分だ。若者と一緒なので、つられて若返ったような気がするが、実際は息苦しい。ようやく峠を越え、1日目はその近くのホテルに泊まった。夕食はウサギの肉だったが、明朝ホテルの近くにはウサギがたくさんいて近づいても全く逃げない。昨夜はこのフレンドリーなウサギを食べたのか、と少し複雑な気分になった。

アンデスの峠周辺には小さな湖が散らばっていて移動中にリャマやフラミンゴの姿が見られる。休憩をとるため車を止め、ドイツから来た仲良し女性二人組と一緒に湖のほとりを歩いた。空気が薄いせいか太陽の光がサラサラしているように感じた。少しとぼけた姿のリャマやピンク色のフラミンゴを見て、二人とも幸せそうな良い顔をしている。もしかして私も二人と同じ満足した顔をしていたのかもしれない。

その後、峠を下ってウユニ塩湖に入り、ひたすらアルゼンチンへ抜ける道路を目指した。標高約3,700メートルの平らな塩湖の大きさは日本の岐阜県に相当する。雨季で冠水した水に含まれる塩の結晶が沈殿する時に地球の重力に向かって落ち着くので水平に近い平面ができると何かで読んだことがある。

大雪のため思いがけず大回りのルートになったが、その分印象的な旅になった。

アドベ(日干しレンガ)を積み上げたサンペドロ教会
教会内部は建材として昔このあたりに林のように生えていたサボテンの芯がふんだんに使われている
サンペドロ・デ・アタカマの街はアドベを積んだ家が並ぶ。中南米の典型的な家並み
大雪で閉ざされたアルゼンチンへの峠が開くのを待つトラック
耳が長いのでリャマ。よく似ているアルパカと間違えるがアルパカは耳が小さい。背後にトラックが走る
高原の湖に集うフラミンゴ
2泊3日の旅で、同じ車に乗って仲良くなったドイツ人の女性は高校の同級生だったとか。フラミンゴなどを見て幸せそうな顔