いのちのまなざし~Look of Life~

引き潮の海岸 ~セーシェル共和国~

(写真/文 小松 義夫)

赤道のほんの少し南にある「インド洋の真珠」と言われるセーシェル諸島は115の島から成っている。昔、イギリスとフランスが領有権をめぐって綱引きし、約200年前にイギリス領となった。その後独立し、現在はイギリス連邦の加盟国だ。マヘ島にある首都のヴィクトリアに着いてホテルのベランダから夜空を見ると大きな満月だった。日本のニュースで、この日はスーパームーンだと知った。

ここには青い海と美しいサンゴ礁などを求めて世界中から観光客がやってくる。有名な奇岩が並ぶ海岸があるラディーグ島へは、まずマヘ島からプララン島に豪華客船で渡り、小さなボートに乗り換えてゆく。ラディーグ島に着くと、港に貸し自転車屋が並んでいる。料金先払いで、使い終わったら店先に置いてくれ、と言う。自転車には鍵もない。小さな島には盗む人もなく、必要ないのだ。

海風を頬に受けながら自転車を走らせるのは気持ちよい。同じように自転車で島内を巡る人たちとすれ違うと、自転車人の連帯感で自然と挨拶する。気持ちも軽く、昔フランス人が経営していたココナツ農園を歩き、大きな陸ガメを見てから奇岩が並ぶ海岸に行った。

スーパームーンの強力な引力のためだろうか。引き潮はいつもよりはるかに遠いと思われた。海とたわむれるためやってきた観光客は遠くまで引いてしまった水を追いかけて歩く。せっかく来たのだから、と海水から首を出している人たちは、まるで温泉に浸かっているようで、なんだか可笑しい。引き潮の海岸に並ぶ岩の間を、裸足で砂を感じながらゆっくりと歩いた。

遠くまで引いてしまった海。仕方がないので首まで水に浸かる人がいる。まるで温泉だ
大きな陸ガメに葉のエサをあげる。カメがゆっくり食べるのを見る
港に着いたら自転車を借りて島内巡りをする
スーパームーンの光が海を照らしていた

(コンセンサス 2017年7月-8月号 掲載)