いのちのまなざし~Look of Life~

壁画の村 ~イタリア~

(写真/文 小松 義夫)

サルデーニャ島はイタリア半島の西、地中海に浮かぶ島だ。地理的には島からローマに行くよりアフリカ大陸のチュニジアに行くほうが近い。この島にはフェニキア人、カルタゴ人、ローマ人、ギリシャ人、アラブ人、スペイン人、ポルトガル人などが押し寄せてきた。岩が多く、ヌラーゲという大きな石を積んだ遺跡が約7000基、島に散らばっている。神殿、お墓など諸説あるが、これらが何のために造られたか解明はされていない。とても大きな石で造られたものが多く、当時の技術でどのように運んだのかが大きな謎だ。

岩山の中のフォンニ村にはたくさんの美しい壁画がある。ムラーレスという壁画アートだ。教会の壁の絵は技術的にも優れていて荘厳だが、一般の家に描かれた絵にもドキリとさせられる。あまりに写実的なので現実と絵との区別がつかなくなり気持ちが落ち着かず不安定になる。思わず自分の足が置かれている地面を確かめた。

フォンニ村の近くにあるラ・バルバージャ(蛮族の地)地方のオルゴーゾロ村もムラーレスで知られている。静かなフォンニ村とは違い、ここには壁画目当ての観光バスがやってくる。村人は1980年代まで山賊を生業としており、頑固な気質の人が多いという。にわかには信じられないが、この村の壁画は政治的なプロテストのメッセージが込められていて、絵の一つ一つが「頑固のどこが悪い」と言っているように感じた。

山道を行くと皮を剥かれたコルク樫の木の森があった。コルクで知られるポルトガルに迷い込んだのかと錯覚し、気持ちが混乱する。サルデーニャは不思議の島だ。

頑固な人が住むオルゴーゾロ村の壁画。鉢巻きをしている頭の絵の模様はサルデーニャの旗
島に約7000基あるといわれる謎の石積み、ヌラーゲ
あまりに細密で写実的な絵は芸術の域に達している。立木だけが現実のものだ。フォンニ村近くのスーニ村にて
皮を剥ぎとられたコルク樫の木の姿に落ち着かない妙な気分になる。皮が再生するのに約8年かかるという

(コンセンサス 2016年11月-12月号 掲載)