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TOPPANホールディングス
株式会社様

軽量フレキシブルなミリ波反射シートによる不感地帯の解消を検証

NEC CONNECT 5G Labでの実証結果を通じ、5G/6Gの社会実装に向け共創活動を加速

背景・課題

超高速・大容量通信をはじめ、超低遅延や同時多接続など、IoTであらゆるモノと人がつながる時代の産業・社会基盤のネットワークとして注目される5G。

現在普及が進んでいる5Gは「Sub6」という4.5GHz帯の周波数が主流だが、「ミリ波」と呼ばれる28GHz帯の周波数も利用されている。「ミリ波」の帯域幅は「Sub6」より広く確保することができるため、超高速、超低遅延といった5Gのメリットを最大限に活用できる通信手段として、期待が高まっている。

一方、電波には周波数が高いほど直進性が強く、障害物に対し電波が回り込みにくくなる性質がある。特に、「ミリ波」は障害物の影響を受けやすいことから、電波が届かない不感地帯と呼ばれる領域が発生し、通信速度や通信品質の低下がみられ、実用化には技術的なハードルが高いとされている。試験的な対策として、5G基地局の増設や電波反射板の設置などが講じられている。しかし現在、用いられている電波反射板は、厚みと重量のある金属からなるため、取り付ける壁の強度が必要となるほか、金属色のため見映えが悪い、電波を反射させるために傾ける必要があるなど、利便性や安全性が不足している。

このような課題に対し、TOPPANホールディングス株式会社(以下TOPPANホールディングス)様が開発した、軽量でフレキシブルなミリ波反射シートは従来の壁紙と同様、簡単に施工を行うことができ、加えて木目調や大理石調など様々な意匠性を付与できるためオフィスや店舗などの景観を損ねることなく天井や壁に設置することが可能である。※注1

NEC CONNECT 5G Labと、TOPPANホールディングス様のグループ会社であるTOPPANデジタル株式会社様が開設されている新規事業のための試作・実験拠点TOPPAN DIGITAL SANDBOX® ※注2は、5G ビジネス探索の観点で相互交流を 2023 年から開始した。この一環として現在、NEC CONNECT 5G Labでは、TOPPANホールディングス様と連携して、軽量フレキシブルなミリ波反射シートによる不感地帯の解消に関する実証に取り組んでいる。

実証内容

NEC CONNECT 5G Labのミリ波ローカル5Gエリア内に遮蔽物を設置して通信状態の悪いエリア(不感地帯)を疑似的に形成。その後不感地帯に向かって電波を反射するミリ波反射シートを設置して不感地帯の解消効果を検証した。

A:ミリ波一体型基地局UNIVERGE RV1300 ※注3 
B:遮蔽物
C:ミリ波反射シート
D:計測機器+ロボット

実証風景

本実証に用いたミリ波反射シートはメタサーフェス構造を有し、入射電波を所望の方向に反射させることができ、傾けずに設置可能なため、安全性と設置自由度が高くなる。

実証の成果・感想

ミリ波反射シートの設置により、不感地帯における電波強度(5dB)とスループット(200Mbps)の改善が見られ、さらにミリ波反射シートのサイズに比例し不感地帯解消のエリアが拡大することを確認できた。これにより「オフィスや店舗、工場などの広い空間における可能性を示唆でき、今回の実証はとても意味あるものでした」と、TOPPANホールディングスの担当者様は語られた。

<改善効果>
ミリ波反射シートを設置した場合、設計角度である0゜方向においてRSRPの向上が見られた。ミリ波反射シートの 位置を変更してもこの傾向が観測されたことから、電波強度(RSRP)の向上がミリ波反射シートによるものであると判断できる。

本実証のプロセスについては、「今回のNEC様との実証では、5Gに関する高い専門知識を有するラボスタッフの皆さまから、実験計画や結果の分析に関し的確なアドバイスをいただき、ありがとうございました。また、5G Lab内には実証実験に必要な設備が完備されており、スムーズに実証を進めることができました。特に自律走行型ロボットを用いた自動計測システムでは計測結果をリアルタイムで視覚的に見ることができたため、計測の負担軽減と計測時間の短縮ができました。」と感想を続けられた。

今後の共創活動

今後の活動について、「本実証で、ミリ波反射シートの性能を示すことができたと思っています。2024年4月以降は木目調や大理石などの意匠性を付与した軽量化ミリ波反射シートを用いて5Gの実証を行っていきたいです。さらに屋外環境でのミリ波への効果検証にも取り組んでいきたいです」とTOPPANホールディングスの担当者様は、抱負を述べられた。

意匠性を付与したミリ波反射シート

© TOPPAN Holdings Inc.

NEC CONNECT 5G Labは今後も「TOPPAN DIGITAL SANDBOX®」との連携、共創を推進し、TOPPANグループ様が持つ様々なソリューションとNECの持つ最先端のネットワーク・情報処理基盤技術を組み合わせ共創することで、お客さまの様々なニーズに応え、5GおよびBeyond5G、さらには「IOWN®」※注4による通信技術の社会実装を加速していきたい。

実証の詳細

UNIVERGE RV1300
周波数 28.7 - 29.1GHz
ビーム本数 固定1本
ミリ波反射シート
設計角度 33° 入射0° 反射
サイズ 1m角
設置高さ 床から1.0m(中心高さ)

両社の実験の分担

NEC : 端末・基地局等の5Gモバイル通信で必要な機器提供、通信の正常性確認、品質測定が可能なテスト環境提供、実証実験の実施

TOPPANホールディングス : ミリ波反射シートの設計、作製、電波シミュレーションによる設置位置、面積の提案

※注1 new windowミリ波反射シート

TOPPANホールディングスが開発したミリ波反射シートは、電波の反射位相を制御可能な金属パターンであるメタサーフェス構造を有する軽量でフレキシブルなシート。5Gで使用するミリ波帯において、所望の方向に電波を反射させることができるため、電波が届かない不感地帯の高速・多数同時接続を可能にする。また、木目調や大理石調など反射シートの表面への意匠性の付与に優れ、オフィスや工場建屋の室内用壁紙として使用することができる。

※注2 new windowTOPPAN DIGITAL SANDBOX® (読み:トッパンデジタルサンドボックス)

TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANデジタル株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:坂井 和則)が、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業の拡大、および新規事業の創出を目的に、秋葉原と本所の2カ所に開設した試作・実験の拠点。

※注3 UNIVERGE RV1300

※注4  「IOWN®」は、日本電信電話株式会社の商標又は登録商標です

関連プレスリリース

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