NECものづくりコラム 匠の系譜 <第10回>

NECものづくりコラム 匠の系譜 <第10回>

2つのシミュレーションで生産効率を向上

近年、甲府事業所ではシミュレーション技術を積極的に活用し、更なる効率化を目指している。シミュレーションの活用領域は、大きく分けて2つある。

1つは、部品を3次元で仮想的に組み立てて、設計前に改善を行う『製造容易性』シミュレーションだ。「3次元で組み立てると、ドライバーがまっすぐ入らない箇所などを事前に見付けることができます。ドライバーが傾けば作業効率が落ち、不良発生の可能性が高まるので、このような場合、事前にねじの位置を変えるなどの設計変更を行います。
ほかにもケーブルのルートや、樹脂のかみ合わせなどもシミュレーションで確認できます。このシミュレーションを開発と生産が一緒に行うことにより、試作を1回で終わらせ、開発リードタイムを大幅に短縮することができるのです」と滝沢はメリットを話す。

もう1つは、最適なラインを組むためのシミュレーションだ。「ラインシミュレータ」と呼ばれるシステムによって、工程手順や仕掛け方等についてラインの止まる条件が明確にできるので異機種混流生産でも流れ続けるラインづくりができる。中西は「量産と同時に生産ラインを垂直立ち上げし、最初から狙った通りの目標に到達できる」とラインシミュレータを評価する。

成功の反対は失敗ではなく、何もしないこと

「機種ミックスの工程では、工程通り人が動けないと効率が上がらないので、それを教えるためにはじめたのが作業トレーニング施設である『信玄翔世塾』です。最初は教材があるだけで、教える人のレベルもバラつきがあり、あまり機能していませんでした。その後、どうすれば質の高いトレーニングができるのか試行錯誤を重ねてきました。その試行錯誤の末に生まれたのが、現在使っている教育用ロボットです。
ロボットというと大げさですが、筐体の中にマザーボードが設置されている装置で、そこにドライバーで正しくネジを締める教材です。実際の製品の擬似モデルを、正しい姿勢で規定時間内に締められれば合格ですが、ドライバーが規定値以上、傾くと警告音が鳴るよう設計されています。信玄翔世塾では、このような装置を使ったり、ながら設備(ラインに組込む自前設備)の研究・開発などを通じて技能向上に取り組んでいます」と中西は説明する。

「改善活動は、目に見えて成果が上がるうちは楽しいですが、あるレベルまで効率化すると、やれることがなくなってきます。しかし、そこで足を止めたら終わりです。つらくても、足を止めず、やりつづけるしか前に進む方法はありません。私が好きでいつもみんなに言うのは『成功の反対は失敗ではなく、何もしないことだ』という言葉です。失敗は、その人の財産になり、前進する糧になる、だからどんどん失敗しなさい、そう言い続けています」と滝沢は人材育成の方針を話す。

お客様に良品を届けたい、そこに日本のものづくりの原点がある

2014年7月1日、新会社NECプラットフォームズが動き出した。NECグループの中で最大の製造会社となるこの会社には、ものづくりの未来が託されている。

「4社の力を活かすには、お互いのとがった部分を伸ばす必要があります。もちろん、共通化・標準化も大切ですが、それによってとがった部分を削いでは、元も子もありません。世界で戦うものづくりの会社になるために、お互いの強みを活かし、弱みを補完し、シナジーを発揮していきます」と滝沢は今後の展望を話す。

新会社は、自らのものづくり力を高めるだけではなく、「ものづくり共創プログラム」を通じて、日本の製造業全体の底上げに貢献することも重要な使命と考えている。

「誰かが利益を得れば、誰かが損をするというのが、資本経済のルールかもしれませんが、日本の製造業には、それとは違う価値観があると思っています。どの企業もお客様には必ず良品を届け、いただく費用以上の価値を提供する。我々自身はその対価から収入を得て、部材サプライヤ、輸送業者など、製品に関わる全ての人が永続的に繁栄し続けることが、日本の製造業の素晴らしいところであり、いつまでも残さなくてはいけない日本が誇る文化だと、先輩からこの技術手法と伴に伝えられてきました。
私は、NECが『ものづくり共創プログラム』を推進する意義は、そこにあるのではないかと思っています。多くの企業が切磋琢磨してものづくりを磨き、より良い製品をお客様に届ける、それが結果的に日本経済を強くする、これを『ものづくり共創プログラム』を通じて叶えられたら、本当に素晴らしいですね」と中西は「ものづくり共創プログラム」への期待を話す。

(2014年8月掲載)

NECものづくりコラム「匠の系譜」は、今回で終了となります。長い間ご愛読いただき、誠に有難うございました。NECグループが20数年間に渡り、迷い、悩み、つまずきながら挑んできた生産革新活動のエピソードが、会員の皆様のヒントになりましたら幸いです。
ものづくり研究グループでは、今後も会員限定の企画、情報発信を続けてまいります。
是非ともご期待ください。