サイト内の現在位置を表示しています。

【この記事で総ざらい!】2025年の労働法改正は実務にどんな影響があるのか

公開日:2024年12月25日(当記事の内容は公開時点のものです)
new window監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

人事労務分野に関わる法律は改正が多く、常に最新の情報をキャッチアップが求められます。しかし、どの法律がどのような内容に改正されるのを把握することは容易ではありません。今回は、2025年の法改正をまとめ、その中で育児、介護、高齢者に関する改正に焦点を当てて実務への影響や事前に準備したい内容などを解説していきます。

改正の全体像

2025年に施行される主な法改正は以下のとおりです。本稿では実務への影響が大きい育児、介護、高齢者に関連した改正について解説していきます。

「育児」に関する改正

出生後休業支援給付の創設

現行の育児休業給付では、休業開始から180日目までは67%(手取の8割相当)が支給されていますが、2025年4月より「出生後休業支援給付金」による上乗せが開始されます。
出生後休業支援給付金は、子の出生直後に夫婦双方が14日以上の育児休業を取得する場合に最大28日間支給されます。支給額は休業開始前賃金の13%相当額であり、育児休業給付と合わせた給付率は80%(手取の10割相当)です。

新制度のため、手続き時に混乱も予想されます。従業員へ制度を周知するとともに、支給要件などをしっかりと把握し施行に備えましょう。

育児時短就業給付の創設

2025年4月以降、2歳未満の子を養育するために時短勤務を行った場合、時短勤務中に支払われた賃金の10%を支給する「育児時短就業給付金」が創設されます。
支給には以下のいずれかの要件を満たすことが必要です。

  • 時短就業開始前の原則2年間にみなし被保険者期間が12か月以上存在する
  • 育児休業給付金または出生時育児休業給付金を受けていた場合で休業終了後引き続いて、時短就業を開始した

この給付金も新設の制度です。内容を把握するとともに手続き等を押さえておきましょう。

子の看護等休暇

2025年4月以降、「子の看護休暇」は以下の点が変更されます。これに伴い名称も「子の看護等休暇」に変更されます。

  • 対象となる子の範囲
    • 現行
      :小学校就学の始期まで
    • 改正後
      :小学校3年生修了まで
  • 取得事由
    • 現行
      :病気や怪我、予防接種・健康診断
    • 改正後
      :上記に「感染症による学級閉鎖」「入学(入園)式、卒園式」が追加
  • 労使協定による除外
    • 現行
      :(1)引き続き雇用された期間が6か月未満
       (2)週所定労働日数が2日以下
    • 改正後
      :(2)のみ除外可

対象範囲が拡大すると同時に、除外範囲も限定的となるため、休暇取得者の増加が想定されます。特に入園式や感染症の流行する時期などには、子育て世代が一斉に休暇を取得する可能性もあるため、シフトの調整や業務の配分などにも目を配る必要があるかもしれません。

所定外労働の制限の対象となる子の範囲拡大

2025年4月以降は、残業免除の対象が拡大されます。これまでは3歳に満たない子を養育する労働者が対象でしたが、改正後は小学校就学前の子を療育する労働者まで範囲が拡大されます。
残業が恒常的に発生している事業所では、代替人員の確保等が必要となるでしょう。

育児のためのテレワーク導入の努力義務化

2025年4月以降は、3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できる措置を講ずることが努力義務化されます。
これに対応する場合には、テレワーク規程等の整備が必要となります。

短時間勤務の代替措置にテレワークを追加

3歳に満たない子を養育する労働者については、短時間勤務制度を設けることが困難な場合の代替措置を講ずることが義務付けられています。この代替措置に2025年4月以降はテレワークが追加されます。改正により講ずべき代替措置は、以下のようになります。

  • 育児休業制度に準ずる措置
  • フレックスタイム制度
  • 始業・終業時刻の繰上げや繰下げ(時差出勤制度)
  • 事業所内保育施設の設置運営 そのほか、これに準ずる便宜の供与
  • テレワーク制度 ※追加

代替措置としてテレワークを選択する場合には、テレワーク規程等の整備が必要となります。

育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業へ拡大

現在は、従業員数1,000人超の企業に育休等取得状況の公表が義務付けられていますが、2025年4月以降、対象が300人超まで拡大されます。
新たに対象となる企業では、公表のための体制整備が必要になります。

柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化

2025年10月以降、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者について、柔軟な働き方を実現するための措置等を講じることが義務化されます。事業主は、以下の中から2つ以上の措置を選択し、講ずることが求められます。

  • 始業時刻等の変更(フレックスタイム制の導入含む)
  • テレワーク等(10日/月)
  • 保育施設の設置運営等
  • 新たな休暇の付与(10日/年)
  • 短時間勤務制度

労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
事業主が講ずる措置を選択する際、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。なお、法改正前に、すでに社内で2つの措置を講じている場合でも、職場のニーズを把握するため、改正後の育児介護休業法に基づき、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要がある点には注意が必要です。

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化

2025年10月以降は、妊娠や出産の申出時、または子が3歳になる前に、労働者に対する仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務付けられます。意向聴取は、面談や書面の交付等により、行うことが必要です。
また、勤務時間帯や休暇数に関して配慮することも求められるため、人手不足となる時間帯などを洗い出し、事前に備えることも求められます。
なお、自社の状況によって、労働者の意向に沿えない場合は、困難な理由を説明するなど丁寧な対応をすることが重要です。

上記で紹介した改正の結果、子の出生から小学校3年生になるまでの仕事の育児の両立支援制度は以下のようになります。

「介護」に関する改正

介護離職防止のための個別の周知・意向確認

2025年4月以降、介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、面談や書面等の交付による個別の周知・意向確認の措置が必要となります。介護離職を避けるためにも、担当者を定め、しっかりと制度の周知に努めることが求められます。

雇用環境整備、両立支援制度等に関する情報提供

2025年4月以降は、40歳等の介護に直面する前の早い段階における両立支援制度等に関する情報提供が必要となります。自社における対象者をリストアップするなどしておきましょう。
また、両立支援に資する雇用環境の整備も義務付けられるため、研修の実施や相談窓口の設置などを行うことが必要です。

介護のためのテレワーク導入の努力義務化

2025年4月以降は、介護を行う労働者に対して、テレワークを選択できるようにすることが必要となります。これに対応する場合には、テレワーク規程等の整備が必要となります。

労使協定に基づく除外の廃止

現行の制度では、以下の場合に労使協定による介護休暇からの除外が認められています。
(1)引き続き雇用された期間が6か月未満
(2)週所定労働日数が2日以下
2025年4月以降は、(2)のみが除外可能となるため、休暇取得者増加による人手不足に備えることが必要です。

ここまで紹介した育児、介護に関する改正については以下の資料も確認しておきましょう。
PDF「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

「高齢者」に関する改正

⾼年齢雇⽤継続給付の見直し

現行の高年齢雇用継続給付の給付率は、最大で賃金の15%です。これが2025年4月以降は10%まで引き下げられます。対象となる労働者が在籍している場合には、給付率で混乱が生じないように改正点を説明しておくことが求められます。

詳細な内容については、以下の資料をご確認ください。
PDF「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了

65歳未満の定年を定めている企業は「①定年制の廃止」「②65歳までの定年の引き上げ」「③希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入」のいずれかを講じなくてはなりません。これには経過措置があり、労使協定を締結することで、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められていました。この経過措置が2025年3月31日をもって終了します。したがって、2025年4月1日以降は、上記の①~③のいずれかの措置を講じる必要があります。

詳細な内容については、以下の資料をご確認ください。
PDF「4月1日以降は別の措置により、高年齢者雇用確保措置を講じる必要があります」

おわりに

今回の改正には、育児や介護を行う労働者の勤怠管理に関するものも含まれており、改正内容を正確に押さえるだけでなく、適切に運用・管理していくことも求められます。その際、システムを利用すれば、管理の手間を増やすことなく法改正に対応できます。当記事の解説を参考にするとともに、システムの導入もご検討ください。

お問い合わせ・無料トライアル