第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当中間連結会計期間のわが国経済は、平成14年4月から6月の国内総生産(GDP)が5四半期ぶりにプラス成長に転じたものの、内需は依然として力強さに欠け、また輸出も鈍化傾向がみられるなど厳しい状況が続いた。米国経済は、個人消費は堅調に推移したものの、企業のIT(情報技術)分野を中心とした設備投資が引き続き低水準で推移したため、本格的な回復には至らなかった。また、米国企業の不正会計疑惑に端を発した株価急落やイラクとの緊張関係の高まりなどが経済に悪影響を与え、景気が再失速する懸念がでてきた。欧州経済は全体としては回復傾向を示したが、極めて脆弱なものにとどまった。

 国内のエレクトロニクス業界は、サッカーのワールドカップ開催による需要増などにより民生機器の生産が好調に推移した一方、パーソナルコンピュータや携帯電話機の生産は低迷するなど、分野によりばらつきがあったが、全体では緩やかな回復傾向を示した。こうした状況を受けて、半導体をはじめとする電子デバイス市場も回復基調をたどったが、夏場以降、国内外の景気減速懸念などから先行き不透明感が強まった。

 このような環境にあって、当社は経営改革を第2フェーズへと進化させることとした。具体的にはNECエレクトロンデバイスにおいては、汎用DRAM事業を除く半導体事業を分社化し、新会社を設立することにより「半導体ソリューション」に注力するとともに、その他の事業については第三者出資を活用し、将来的に当社の持分をマイノリティとする方向で構造改革を推進することとした。また、NECソリューションズおよびNECネットワークスについては注力する事業領域を「オープン環境におけるミッションクリティカルなシステムを実現するソリューションの提供」と定めることとした。これらの施策により、当社の事業ドメインを大きく2つに分け、各々に経営資源を集中することで、企業価値の増大を目指すこととした。

 

 当中間連結会計期間の業績は、売上高が、2兆1,738億円と前年同期に比べ2,941億円の減収(前年同期比12%減)となった。これは、国内SI(システム・インテグレーション)サービスおよび半導体が堅調に推移したものの、国内向け携帯電話機やサーバ、パーソナルコンピュータなどのハードウェア関連事業が伸び悩んだことなどによるものである。

 収益面については、売上の減収があるものの、前年度に実施した構造改革による固定費削減効果や原価低減促進により、税引前中間純損益は203億円の利益(前年同期比546億円増)となった。中間純損益は、持分法投資損益が半導体関連会社の業績低迷などにより98億円の損失(前年同期比17億円減)となったことなどにより、10億円の利益(前年同期比309億円増)となった。

 

 一方資産効率の改善などにより、当中間連結会計期間のフリー・キャッシュ・フローは401億円の収入超過となった。当中間連結会計期間末の有利子負債残高は、フリー・キャッシュ・フローの改善などにより、2兆1,338億円(前中間連結会計期間末比1,010億円減、前連結会計年度末比1,258億円減)、デット・エクイティ・レシオ(株主資本に対する有利子負債の割合)は4.02倍(前中間連結会計期間末比1.35ポイント増、前連結会計年度末比0.02ポイント増)となった。またリース事業に持分法を適用した場合の有利子負債は、1兆5,891億円(前中間連結会計期間末比1,019億円減、前連結会計年度末比1,075億円減)で、デット・エクイティ・レシオは3.00倍(前中間連結会計期間末比0.98ポイント増、前連結会計年度末比増減なし)となった。

 

 以下の表は、リース事業を連結した要約連結貸借対照表とリース事業について持分法を適用した要約連結貸借対照表を比較したものである。リース事業は事業拡大によって有利子負債が増加するため、当社はこのような比較表示による分析が極めて重要であると考えている。

 

要約連結貸借対照表                            (金額単位 百万円)

 

 

リース事業に持分法を適用した要約連結貸借対照表

(エレクトロニクス事業要約連結貸借対照表)

 

リース事業を連結した要約連結貸借対照表

 

平成13年度中間

平成14年度中間

平成13年度末

 

平成14年度中間

 

連結会計期間末

連結会計期間末

 

 

連結会計期間末

 

(平成13年9月30日)

(平成14年9月30日)

(平成14年3月31日)

 

(平成14年9月30日)

資産

 

 

 

 

 

現金および現金同等物

211,948

248,074

348,021

 

272,859

受取手形および売掛金

924,036

697,176

938,179

 

675,889

たな卸資産

882,766

636,261

650,043

 

636,261

リース債権

 

492,082

投資および長期債権

(除くリース債権)

643,740

513,643

640,957

 

493,797

有形固定資産

1,102,928

916,980

939,470

 

944,255

その他

773,607

1,021,589

947,201

 

1,060,243

資産合計

4,539,025

4,033,723

4,463,871

 

4,575,386

負債および資本

 

 

 

 

 

有利子負債

1,691,123

1,589,178

1,696,739

 

2,133,834

その他負債

1,910,817

1,680,898

1,987,805

 

1,661,262

少数株主持分

101,356

135,822

117,212

 

152,465

子会社発行優先証券

97,500

97,200

 

97,500

資本

835,729

530,325

564,915

 

530,325

負債および資本合計

4,539,025

4,033,723

4,463,871

 

4,575,386

 

 

 当中間連結会計期間の業績を各事業別にみると、エレクトロニクス事業の売上高は2兆1,648億円と前年同期に比べ2,837億円減少(前年同期比11.6%減)し、セグメント利益は前年同期比200億円増加の239億円となった。リース事業の売上高は196億円、セグメント利益は39億円である。

 エレクトロニクス事業の各セグメント別の業績は以下のとおりである。なお、各セグメントの売上高およびセグメント損益にはセグメント間取引を含んでいる。

a NECソリューションズ

 

 NECソリューションズの売上高は、前年同期に比べ1%減少し、9,496億円となった。売上高の主な分野別状況については、SIサービス/ソフトウェア分野では、公共、医療向けなどのSIサービスが堅調に推移し、前年同期比9%増加の2,287億円、インターネットサービス/サポートサービス分野では、BIGLOBEの付加価値サービスやサポートサービスが伸長したことなどにより、前年同期比11%増加の1,693億円となった。一方、パーソナルプロダクト分野においては、国内の個人・ビジネス向けパーソナルコンピュータ市場における需要低迷により、前年同期比10%減少の3,247億円となった。

 セグメント利益は、ソフトウェア・サービス領域での売上増による増益に加え、ハードウェア領域においてもコストダウンにより損益改善を果たした結果、前年同期比111億円増加の299億円となった。

 

b NECネットワークス

 

 NECネットワークスの売上高は、前年同期に比べ33%減少の7,050億円となった。売上高の主な分野別状況については、ネットワークインフラが前年同期比33%減少の4,210億円、モバイルターミナルが前年同期比45%減少の1,854億円、その他が986億円となった。これは、世界的な通信機器市場の低迷継続によりネットワークインフラ機器の出荷が減少したことや、国内携帯電話の新規加入者数の伸長が鈍化したことなどの影響により、携帯電話機の出荷が好調であった前年同期に比べ大幅に減少したことによるものである。

 セグメント利益は、大幅な売上減少の影響を受けたものの、前年度に実施した構造改革による固定費削減の効果により121億円の黒字を確保した。

 

c NECエレクトロンデバイス

 

 NECエレクトロンデバイスの売上高は、前年同期に比べ11%増加の4,769億円となった。売上高の主な分野別状況については、半導体は前年同期比7%増加の3,507億円、ディスプレイは前年同期比19%増加の575億円、電子部品その他についても前年同期比25%増加の687億円となった。これは、前年度後半以降アジア地域や日本の民生機器の生産拡大による半導体市場の回復基調が継続したことや、カラーPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)市場が急速に立ち上ったこと、また電子部品の事業統合によりNECトーキン鰍ェ新たに連結対象となったことなどによるものである。

 セグメント損益は50億円の損失となったが、前年度に実施した構造改革による固定費削減の効果や、半導体やカラーPDPの出荷増などにより、前年同期に比べ502億円改善した。

 

d その他

 

「その他」セグメントの売上高は、半導体製造装置などが売上減となったが、連結子会社の増加などにより、ほぼ前年同期と同額の3,041億円となった。セグメント利益は、前年同期比8億円増加の34億円となった。

 

 

地域別セグメントの状況は以下のとおりである。

 

a 国内

 国内携帯電話の新規加入者数の伸びが鈍化したことなどの影響により、携帯電話機の出荷が前年同期に比べ大幅に減少したことや、ネットワークインフラ機器の出荷が減少したことなどにより、売上高は前年同期に比べ13%減少の1兆7,831億円となった。地域別利益は、売上減の影響などにより、前年同期比24億円減少の262億円となった。

 

b 海外

通信機器市場の低迷継続によりネットワークインフラ機器の出荷が減少したことなどにより、売上高は前年同期に比べ9%減少の3,906億円となった。地域別利益は、前年度に実施した構造改革による固定費削減の効果により、前年同期比238億円改善の4億円となった。

 

(2) キャッシュ・フロー

 当中間連結会計期間末の現金および現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,049億円減少し、2,728億円となった。

 

 営業活動により増加したキャッシュ(純額)は506億円となり、前年同期に比べ213億円の増加となった。これは、前年同期と比較し買掛債務の減少幅が大きかったものの、資産効率化などによる売掛債権およびたな卸資産の減少幅が大きかったことなどによるものである。また、減価償却費は、前年同期に比べ224億円減少し、956億円となった。

 

 投資活動により減少したキャッシュ(純額)は、104億円となり、前年同期に比べ1,236億円の減少となった。これは設備投資を抑制したことや資産効率化の観点から有価証券の売却を行ったことなどによるものである。

 

 財務活動により減少したキャッシュ(純額)は、1,394億円となった。これは社債の償還を行ったことなどによるものである。

2【生産、受注および販売の状況】

 当社および連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式などは必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

 このため、生産、受注および販売の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメントの業績の記載に含めて示している。

 なお、前中間連結会計期間および当中間連結会計期間において、それぞれ連結売上高の18.9%および13.09%を占める主要顧客があり、その売上は主にNECソリューションズおよびNECネットワークスの売上に含まれている。

 

3【対処すべき課題】

 当中間連結会計期間において、当社企業グループが対処すべき課題について重要な変更はない。

 当社企業グループは、さらなる競争力強化に向け、コンピュータとネットワークを含めたトータル・ソリューションである「IT・ネットワーク統合ソリューション」と高度化するシステムニーズを実現する「半導体ソリューション」という2つの事業領域において、それぞれの事業特性の違いに応じた戦略を展開していく方針である。