当社企業グループにおける研究開発活動のうち、当社は、今後の成長分野であるブロードバンド&モバイル領域における事業推進の基盤となる新技術の研究開発や事業運営に直結する新技術、新製品の研究開発に取り組んでいる。当中間連結会計期間における当社の主要な研究開発成果は次のとおりである。
(NECソリューションズ)
ベクトル型スーパーコンピュータ「SX-6シリーズ」の開発
最大ベクトル性能8テラフロップス(注1)という、商用機としては世界最高速のスーパーコンピュータ「SX-6シリーズ」を開発・製品化した。「SX-6シリーズ」は、従来機の「SX-5シリーズ」に比べて1.6倍の高速処理を実現するとともに、高集積CMOS(相補型金属酸化膜半導体)LSI技術の採用により、従来約30個のLSIチップで構成されていたベクトルプロセッサを1チップ化することなどで、大幅なコストパフォーマンスの向上および約5分の1以下の省スペース、省電力化を実現した。
(NECネットワークス)
メトロ(都市内)通信網向けギガビットイーサ多重光伝送装置の開発
メトロ(都市内)通信網向けとしては、世界最大容量の40ギガbps(注2)を実現したギガビットイーサ多重光伝送装置「MetroGiga(メトロギガ)」を開発・製品化した。「MetroGiga」は、8本のギガビットイーサ信号を10ギガbpsの時分割多重信号に変換し、さらに4つの10ギガbps信号を経済的なCWDM(低密度波長多重)に多重することが可能である。これにより、32チャンネルのギガビットイーサ信号を多重した40ギガbpsの伝送容量を実現した。
(NECエレクトロンデバイス)
世界最先端のシステムLSIプロセス「UX-6」の開発
次世代デジタルコンシューマエレクトロニクス、携帯電話機、基幹通信システム、インターネットサーバを駆動・制御する0.10マイクロメートル世代(ゲート長=65ナノメートル、動作電圧=1.0V)システムLSIプロセス「UX-6」の基本モジュールの開発を完了した。「UX-6」は、当社の従来プロセスと比べて1.5倍の高集積度および低消費電力を実現した。
(その他)
上記の社内カンパニーのほか、全社的な基盤技術の研究を担当する部門(NECラボラトリーズ)において、カーボンナノチューブを用いた携帯機器用小型燃料電池の開発に世界で初めて成功した。(注3)
カーボンナノチューブは、ナノテクノロジーの代表的な素材として、水素吸蔵、複合材料、電子デバイスなどの幅広い分野への応用が期待されている。当社は、このカーボンナノチューブを電極に用いた携帯機器用の小型燃料電池を開発した。この小型燃料電池の特徴は、電極に活性炭を用いた従来の燃料電池に比べ、電池の出力が約2割向上することであり、この技術を発展させると、将来的にはノートパソコンを数日間連続して使用することなどが可能となる。
また、当社以外の研究活動については、国内においては、当社製品の生産を担当している会社の一部において新製品の開発を行っているほか、日本航空電子工業(株)、アネルバ(株)、日本アビオニクス(株)など独立した事業基盤を有する会社において、基盤技術の研究開発および各社の事業運営に直結した新技術、新製品の研究開発を行っている。また、海外においては、NECアメリカ社、NEC USA社、NECヨーロッパ社などにおいて新製品の開発を行っているほか、NECリサーチ・インスティチュート社において新しい材料科学、デバイス物理、コンピュータ科学などに関する基礎研究を行っている。当中間連結会計期間における当社企業グループ全体の研究開発費は、 172,726百万円であり、これを事業の種類別セグメント別に示すと以下のとおりとなる。
NECソリューションズ 27,980百万円
NECネットワークス 78,571百万円
NECエレクトロンデバイス 49,881百万円
その他 16,294百万円
(注1)1テラフロップスは、1秒間に可能な浮動小数点演算の回数が1兆回の計算性能。
(注2)bps(bit per second)は、1秒あたりに伝送可能なデータの量を表す通信速度の単位。
(注3)本開発は、当社、科学技術振興事業団および(財)産業創造研究所との共同で行われたものである。