第2【事業の状況】

 

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当中間連結会計期間のわが国経済は、米国の景気悪化により、輸出および設備投資が減少したことや株価の低迷から、4月から6月までの実質国内総生産がマイナス成長となるなど景気後退は一段と深刻な状況となった。米国経済についても、米国政府が再三の金利引き下げや大型減税を実施したものの、IT(情報技術)企業の業績悪化や9月に発生した同時多発テロの影響などにより、経済環境は急速に悪化した。また、欧州経済も輸出減速および米国同時多発テロの影響から先行き不透明感が強まった。

  国内のエレクトロニクス業界については、企業のIT投資が底堅い動きを示した一方で、パーソナルコンピュータ市場の減速や海外通信事業者の設備投資抑制、さらに半導体市況の悪化がエレクトロニクス企業の収益に大きな打撃を与えた。

  このような環境にあって、当社および連結子会社はパーソナルコンピュータ関連市場の急激な変化への対応力向上を目的としてDRAM、ディスプレイ事業の戦略転換、パーソナルコンピュータ事業の再構築を図ることとした。また、 当中間連結会計期間の事業構造改革の一環として、レーザープリンタ事業の富士ゼロックス鰍ヨの売却、宇宙事業における鞄月ナとの事業統合、NECグループ内の重複事業の統合再編など具体的な施策を着実に実行してきた。

 

 当社は従来持分法を適用していたリース事業会社である日本電気リース鰍平成13年4月1日に連結子会社とした。リース事業は、従来のリース事業以外の事業(以下、「エレクトロニクス事業」という。)とは性質が異なることや当社の連結財政状態に与える影響が大きいため、エレクトロニクス事業とリース事業を区分して業績管理を行うこととした。

 

  リース事業を新たに加えた当中間連結会計期間の業績は、売上高が2兆4,680億円と前年同期に比べ103億円の減収(前年同期比0.4%減)となった。これは、国内向けの携帯電話機が好調に推移したものの、IT関連機器市場の急激な悪化により、パーソナルコンピュータ事業や電子デバイス事業が減収となったことによるものである。

  収益面については、売上の減少や半導体の価格下落に伴う原価率の悪化などにより、税引前中間純損益は342億円の損失(前年同期比697億円減)となった。中間純損益は、持分法投資損益が半導体関連会社の業績悪化などにより80億円の損失(前年同期比187億円減)となったことに加え、デリバティブとヘッジ活動に係る新会計基準の適用に伴う過年度の累積影響額を計上したことなどにより、298億円の損失(前年同期比504億円減)となった。

 

 一方、収益の減少や資産効率の悪化により、当中間連結会計期間のフリー・キャッシュ・フローは1,048億円の支出超過となった。当中間連結会計期間末の有利子負債は、フリー・キャッシュ・フローの悪化やリース事業を新規に連結対象としたことなどにより、2兆2,349億円(前中間連結会計期間末比3,743億円増、前連結会計年度末比5,507億円増)、デット・エクイティ・レシオ(株主資本に対する有利子負債の割合)は2.67倍(前中間連結会計期間末比0.76ポイント増、前連結会計年度末比0.83ポイント増)となった。しかしながら、リース事業について従来と同様に持分法を適用した場合の当中間連結会計期間末の有利子負債は、1兆6,911億円(前中間連結会計期間末比1,695億円減、前連結会計年度末比69億円増)、デット・エクイティ・レシオは2.02倍(前中間連結会計期間末比0.11ポイント増、前連結会計年度末比0.18ポイント増)となっている。

 

 以下の表は、当中間連結会計期間からリース事業を連結した要約連結貸借対照表とリース事業について従来と同様に持分法を適用した要約連結貸借対照表を比較したものである。リース事業は事業拡大によって有利子負債が増加するため、当社はこのような比較表示による分析が極めて重要であると考えている。

 

要約連結貸借対照表                           (金額単位 百万円)

 

 

リース事業に持分法を適用した要約連結貸借対照表

 

リース事業を連結した要約連結貸借対照表

 

平成12年度中間

平成13年度中間

平成12年度末

 

平成13年度中間

 

連結会計期間末

連結会計期間末

 

 

連結会計期間末

 

平成12年9月30日現在

平成13年9月30日現在

平成13年3月31日現在

 

平成13年9月30日現在

資産

 

 

 

 

 

現金および現金同等物

456,939

211,948

386,835

 

234,660

売上債権

862,476

968,625

1,102,988

 

943,588

リース債権

 

481,873

投資等

782,052

599,151

683,782

 

585,113

有形固定資産

1,146,988

1,102,928

1,128,813

 

1,136,199

その他

1,444,669

1,656,373

1,521,206

 

1,694,254

資産合計

4,693,124

4,539,025

4,823,624

 

5,075,687

負債および資本

 

 

 

 

 

有利子負債

1,860,622

1,691,123

1,684,259

 

2,234,914

その他負債

1,782,651

1,910,817

2,155,942

 

1,887,955

少数株主持分

74,392

101,356

68,387

 

117,089

負債および少数株主持分計

3,717,665

3,703,296

3,908,588

 

4,239,958

資本

975,459

835,729

915,036

 

835,729

負債および資本合計

4,693,124

4,539,025

4,823,624

 

5,075,687

 

 当中間連結会計期間の業績を各事業別にみると、エレクトロニクス事業の売上高は2兆4,485億円と前年同期に比べ297億円減少(前年同期比1%減)し、セグメント利益は前年同期比707億円減少の38億円となった。リース事業の売上高は347億円、セグメント利益は28億円である。

 エレクトロニクス事業の各セグメント別の業績は以下のとおりである。なお、各セグメントの売上高およびセグメント損益にはセグメント間取引を含んでいる。

 

a NECソリューションズ

 

 NECソリューションズの売上高は、前年同期に比べ4%減少し9,612億円となった。売上高の主な分野別状況については、SI(システム・インテグレーション)サービス/ソフトウェア分野が前年同期比27%増の2,106億円、また、サーバ/ストレージ/ワークステーション分野が前年同期比17%増の1,628億円となった。一方、パーソナルプロダクト分野においては、国内個人向けパーソナルコンピュータ市場の需要低迷により、前年同期比24%減の3,609億円となった。

セグメント利益は、SIサービスを中心としたソフトウェア・サービス分野で増益となったものの、パーソナルコンピュータ市場の一層の低迷による損益悪化により、前年同期比110億円減少の187億円となった。

 

b NECネットワークス

 

 NECネットワークスの売上高は、前年同期に比べ36%増加し1兆600億円となった。売上高の主な分野別状況については、ネットワークインフラが前年度に受注した光海底ケーブルプロジェクトや、次世代移動通信システムの売上の増加により前年同期比39%増の6,330億円、モバイル・ターミナルが国内のiモード対応携帯電話機の増加により前年同期比62%増の3,355億円、その他が916億円となった。

セグメント利益は、国内のiモード対応携帯電話機の売上が当中間連結会計期間を通じて好調であったことや次世代移動通信システムの売上増により、前年同期比337億円増の549億円となった。

 

c NECエレクトロンデバイス

 

 NECエレクトロンデバイスの売上高は、前年同期に比べ34%減少し4,299億円となった。売上高の主な分野別状況については、半導体は前年同期比36%減の3,268億円、ディスプレイは前年同期比38%減の484億円、電子部品等は前年同期比7%減の548億円となった。

セグメント損失は553億円で、前年同期600億円の利益から1,153億円の悪化となった。これは、前年同期がパーソナルコンピュータ、携帯電話機の需要拡大時期であったのに対し、当中間連結会計期間においては北米市場の景気が減速したことや欧米市場での携帯電話機の需要が低迷したことなどにより、売上高が前年同期に比べ大幅に減少したこと、および固定費の大幅な削減などのコストダウンに努めたものの、需要減および価格低下の影響などにより、大幅な損失を計上することとなったものである。

 

d その他

 

 「その他」セグメントの売上高は、前年同期に比べ11%減少し3,041億円となった。これは、半導体市況の低迷に伴う半導体製造装置の需要減およびモニター事業の持分法適用会社への移管などによるものである。

 セグメント利益は、前年同期比21億円増の26億円となった。

 


地域別セグメントの状況は以下のとおりである。

 

a 日本

 

IT関連機器市場の急激な悪化により、パーソナルコンピュータ事業や電子デバイス事業は低迷したものの、iモード対応携帯電話機が好調に推移したことなどにより、売上高は前年同期に比べ6%増の2兆407億円となった。地域別利益は半導体の価格下落に伴う原価率の悪化等により、前年同期比366億円減の287億円となった。

 

b 北米

 

 北米市場の景気減速に伴う電子デバイス事業の低迷などにより、売上高は前年同期に比べ38%減の1,259億円となり、地域別損失は163億円で前年同期の1億円の利益から164億円の悪化となった。

 

c その他

 

 欧州におけるパーソナルコンピュータ市場の需要停滞や、アジア・欧州市場における電子デバイス事業の低迷などにより、売上高は前年同期に比べ16%減の3,013億円となり、地域別損失は70億円で前年同期の91億円の利益から161億円の悪化となった。

 

(2) キャッシュ・フロー

当中間連結会計期間末の現金および現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,522億円減少し、2,346億円となった。

 

営業活動により増加したキャッシュ(純額)は、292億円となり、増加額は前年同期に比べ1,849億円の減少となった。この減少は、中間純損失を計上したことに加え、買入債務の減少額が前年同期に比べ増加したことによるものである。また、減価償却費は、前年同期に比べ31億円増加し、1,180億円となった。

 

投資活動により減少したキャッシュ(純額)は、1,341億円となり、減少額は前年同期に比べ774億円増加した。これは、市場性のある有価証券の売却が前年同期に比べ減少したことに加えて、前連結会計年度に実施した設備投資により、有形固定資産にかかる支払が増加したことによるものである。

 

財務活動により減少したキャッシュ(純額)は、449億円となった。これは社債の償還および長期借入金の返済を行ったことによるものである。

 


 

2【生産、受注および販売の状況】

 当社および連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

 このため、生産、受注および販売の状況については、「1 連結業績等の概要」におけるセグメントの業績の記載に含めて示している。

 なお、前中間連結会計期間および当中間連結会計期間において、それぞれ連結売上高の13.9%および18.9%を占める主要顧客があり、その売上は主にNECソリューションズおよびNECネットワークスの売上に含まれている。

 

 

3【対処すべき課題】

当社および連結子会社は、前連結会計年度から世界的なネットワークの高速・大容量化(ブロードバンド化)および移動通信の普及(モバイル化)が急速に進展した次世代インターネット社会「i Society(アイソサエティ)」の実現に向けた、事業活動を推進するとともに、ブロードバンド&モバイル領域をターゲットとした事業戦略「グローバルNo.1事業戦略」を展開し、企業価値の向上に努めている。

前連結会計年度末に計画した対処すべき課題に重要な変更はないが、当連結会計年度に入り米国から始まったIT需要の鈍化が欧州およびアジアにも広がっており、当社および連結子会社は以下のさらなる課題に取り組んでいく方針である。

 

(1)電子デバイス事業の構造改革

電子デバイス事業を取り巻く事業環境は、DRAM価格の下落やパーソナルコンピュータ・通信機器等の製品需要の減速および在庫調整の遅れなど、一段と厳しさを増している。こうした状況を踏まえ、固定費削減による費用構造改革およびシステムLSI事業への経営資源の集中による電子デバイス事業の強化を柱とした事業構造改革を実施する。

 

(2)安定的経営基盤の確保とグローバルな成長の加速

1)NECソリューションズ

国内のSI(システム・インテグレーション)事業で安定収益を確保しつつ、各事業におけるシナジーの発揮により、ブロードバンド&モバイル領域における事業の成長・発展を目指すとともに、ソフトウェア・サービス事業の高成長を実現するため、海外も含めてソフトウェア・サービス要員を増員することを計画している。

 

2)NECネットワークス

厳しい経営環境を克服しつつ、グローバルなリーディングポジションを獲得すべく、ブロードバンド&モバイル領域の中核である光ネットワーク事業、IP(インターネット・プロトコル)ネットワーク事業、モバイルネットワーク事業およびモバイルターミナル事業の4つの領域に経営資源を集中していく。