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ゲイツ、ノーベル賞受賞ら世界の賢人10人に聞く、「気候変動」と戦う方法

ゲイツ、ノーベル賞受賞ら世界の賢人10人に聞く、「気候変動」と戦う方法

気候変動問題に起因する災害が世界中で増加しているにもかかわらず、対策は遅々として進んでいない。テクノロジー、気候科学、経済学、物理学、政策などさまざまな分野の10人の著名人に、気候変動のリスクを軽減するために有効なものをひとつだけ挙げるとすれば、それは何なのか聞いてみた。

気候変動に関する警告は何十年も前から発せられ、壊滅的な災害が増えている。それにもかかわらず、気候変動を減速させる取り組みはほとんど進んでいない。

代替策であるクリーンエネルギーは現在、市場のほんの一握りを占めるにすぎない。再生可能エネルギーは世界の発電量の約10%で、電気自動車は新車販売の約3%を占めるだけである。その一方で、温室効果ガス排出量は、時折起こる不景気やパンデミックの影響を除けば、年々増え続けている。

気候変動対策に勢いが欠けていることに鑑み、より迅速かつ大規模な進歩を遂げるにはどうすればよいだろうか。気候科学者、経済学者、物理学者、政策専門家など、さまざまな分野の10人の専門家にひとつの質問を提示してみた。

「気候変動のリスクを軽減するために最も有効だと考えられるものを1つだけ発明、投資、実施できるとしたらそれは何ですか。また、その理由は?」

以下は、この質問に対する彼らの回答である。

ビル・ゲイツ

マイクロソフト共同創業者/ブレイクスルー・エナジー※1会長(米国)

私は現在、核分裂関連に多く投資しています。私たちの企業「テラパワー(TerraPower)※2」はちょうど、「ナトリウム(Natrium)」と呼ばれる原子炉を開発するための大規模契約を米政府と締結したところです。

エネルギー貯蔵における奇跡が必要であると言う人はたくさんいますし、非常に安価なクリーン水素が重要だという人もいるでしょう。非常に安価なクリーン水素のいいところは、数多くの問題を解決できる可能性がある※3ことです。ただし、クリーン水素が乗用車分野で競争力を持つようになるかと言われれば、おそらくそうはならないでしょう。

水を電気分解する電解槽でクリーン水素を生産するには、世界で最も安い電気と最も安価な資本コストが必要になります。うまくいくかもしれないので試してみる価値はあるでしょうが、それだけに頼ることはできません。核融合や(次世代)核分裂、貯蔵上の奇跡を達成できないかもしれないのと同じように、クリーン水素が行き詰まる可能性もあるからです。

サリー・ベンソン※4

スタンフォード大学グローバル気候エネルギープロジェクト所長(米国)

賢明で、包括的で、勇気ある果断なリーダーシップですね。

気候問題はリスクが非常に高く、解決が非常に困難であるため、賢明さが求められます。また、問題を解決するには全員が取り組む必要があるため、包括的でなければなりません。 多くの難しい決定を下さねばなりませんから勇気も必要です。そして、そうした決定の多くにより、不幸になる人々が出ることは確実です。果断さが必要なのは、無駄にできる時間がないからです。

エリザベス・コルバート※5

ニューヨーカー誌記者/『白い空の下で(Under a White Sky、未邦訳)』の著者(米国)

私なら経済全体に、年々増加する仕組みの炭素税を課すでしょう。その税収の一部を低所得世帯における税の逆進性を改善するために利用し、残りは低炭素インフラに投資します。

経済モデルを信頼しすぎるのもよくありませんが、この方法が二酸化炭素排出を削減するための最も効率的な方法であるという科学者の意見は正しいと考えるべきです。現時点では、非効率的な方法を選択している時間はないのです。

ジョン・ダビリ※6

カリフォルニア工科大学航空工学・機械工学教授(米国)

私なら挑戦的なプロジェクトと回避策に投資します。

前者としてはモジュール式の核融合があげられます。それにより、無制限の燃料、長期にわたって影響を及ぼさない廃棄物、そして兵器拡散のリスクを制限したオンデマンド電力を提供できるでしょう。設置面積が十分に小さくなれば、エネルギー需要が最も大幅に増加する発展途上国で利用できる可能性があります。

これらすべての条件を満たす、カーボンフリーの他のエネルギー源はありません。

回避策としては、膨大で増え続ける計算能力を活用して、数週間前に異常気象を予測できる高精度の地球モデルを開発します。洪水や火災といった最も深刻な気候リスクのいくつかは、現在予測できないため、特に危険です。天気予報の期間を広げて数週間から数か月にできれば、季節的な干ばつでさえ、人々の存在に対する脅威というほどではなくなるでしょう。

アダム・マーブルストン※7

シュミット・フューチャーズ(Schmidt Futures)※8イノベーション・フェロー(米国)

幸いなことに、地球上のほぼどこでも、十分に熱い岩石にたどり着くまで十分深く掘削すれば、クリーンで安全で、1日の需要の最低基準を満たし、出力を制御可能な地熱エネルギーを利用できます。少なくとも原理的にはそういうことです。地熱エネルギーの利用可能性を大きく拡大すれば、再生可能エネルギーの間欠性に伴う主な需給ギャップを埋められるでしょう。ただし、そのためには次世代貯蔵や送電テクノロジーの大規模な展開が望まれます。

地熱は、1日の需要の最低基準を満たし、出力を制御可能なエネルギーに関する長期的パイプラインにおける他のオプション、例えば高温超伝導体や小型モジュール炉を利用した新しい小型核融合炉などに取って代わるものではありません。とはいえ、地熱発電はより一般的なテクノロジーを利用していますから、既存の石油・ガス分野の人材やサプライチェーンを活用できるメリットがあります。

リアナ・ガン=ライト

ルーズベルト研究所 気候政策部長/グリーン・ニューディール立案に関与(米国)

まず、新型コロナウイルス(SARS CoV-2)による景気後退と気候変動は、別々に起こっているわけではないことを明確にしておきましょう。米国政府は、森林火災が激しさを増し、海面が上昇し、家々が破壊されているのと同じ場所で、同時に経済の再建に取り組んでいるのです。この不況の深刻さと気候災害の差し迫る脅威を過小評価すると、大きなツケを払うことになるでしょう。そして、残念なことに、私たちはすでに、その過ちを犯しているのです。

私が気候変動のリスクを緩和するために何か1つだけ実施できるとしたら、現在の経済危機に対応するための刺激策が持続可能かつ長期的な成長をもたらすものになるよう設計するでしょう。そして、このようなグリーンな景気刺激策※9を迅速に立ち上げるために、エネルギー貧困やインフラ老朽化の改善を目的とした既存のプログラムを利用して、低炭素経済への恒久的な移行を推進するための救済資金を提供します。

さらに、主要な商品及びサービスの生産を迅速に拡大し、脱炭素化に不可欠な様々な分野に労働者を移動させるため、リソースを再配分するでしょう。

スティーブン・チュー※10

元米国エネルギー省長官/スタンフォード大学の物理学教授、ノーベル物理学賞受賞者(米国)

私が最優先課題として挙げたいのは、低コスト、長期間のエネルギー貯蔵です。

現在設置されているリチウムイオン電池システムは、電力システムの安定性を向上させるために利用され、毎日、発電ピーク時に数時間分のエネルギーを貯蔵し、需要のピーク時にそれを放出しています。例えば、太陽発電のピークは正午ですが、電気の需要は午後4時頃にピークを迎えます。科学誌『ジュール(Joule)』に最近掲載された研究によると、再生可能エネルギー源が送電網の電力の80%を供給するためには、太陽光や風力による発電量が季節によって大きく低下することを考えると、100時間分ほどのエネルギーを貯蔵可能なテクノロジーが必要であると見積もられています。

貯蔵コストもはるかに安価になる必要があります。最終的に米国は、あらゆる種類の電力貯蔵設備を構築し、提供可能な予備電力を現在のわずか25ギガワット※11ほどから1万ギガワットに拡大する必要があるでしょう。

ケン・カルデイラ※12

ゲイツ・ベンチャーズ 気候科学に関するシニア・アドバイザー/カーネギー・グローバル・エコロジーの上級名誉科学者(米国)

気候変動のリスクを軽減するために1つだけ実施できるとしたら、地中から化石燃料を採取する際に毎年一定の割合で料金が増加し、都合よく操作することが不可能なシンプルな料金体系を設定するでしょう。こうすることで、化石燃料から二酸化炭素を排出する全てのテクノロジーは結果的に、代替策より高くつくことを市場に明確に知らせることができます。

化石燃料の採取を減らすことで削減される炭素量を正確に測定することは比較的簡単です。近年人気が高まっているカーボン・オフセット・プログラムが、植林活動などに資金を投じることで気候汚染者が排出量を相殺しているのと異なり、操作の余地が少ないと言えるでしょう。

ナディア・S・オウエドラオゴ※13

国連アフリカ経済委員会 経済担当官(エチオピア)

パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5 ?C以下に抑えることを目標に掲げています。再生可能エネルギーだけではこの目標を達成できません。パリ協定の温度目標を達成するために必要な排出削減の約44%はエネルギー効率向上により実現し、36%は再生エネルギーへの切り替えによって実現する必要があるでしょう。エネルギー効率化対策を実施するだけで、2040年までに温室効果ガス排出量を12%削減できる可能性があります。適切な政策を実施すれば、新たなテクノロジーの開発を待たずに、世界は気候目標の達成に必要な排出削減のかなりの部分を成し遂げられるでしょう。

ナブロス・ドゥバッシ※14

政策研究センター教授(インド)

国の公約が、科学で必要とされる排出削減につながらないことについて多くの議論が重ねられています。私たちは、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、ビジョンを政策に変換する統治機構の欠如について議論する必要があります。

気候変動の緩和と気候変動への適応に関する共同対策に欠けているのは、恒久的な国家機関です。戦略的ビジョンを提示し、目標を定め、実行面で部門間を調整し、政治的な調停役となるため、そうした機関が必要なのです。とはいえ、気候変動ガバナンスへのアプローチは、国の状況に適したものでなければなりません。国が気候政策に先んじると、結果として政策や目標、システムが不安定になったり、達成できなくなったりする可能性があります。

ジェームス・テンプル [James Temple]
米国版 エネルギー担当上級編集者
MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。

この記事は、角川アスキー総合研究所『MIT Technology Review/執筆:James Temple』(初出日:2021年3月8日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

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