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官民連携で実現する未来の都市
10年後の私たちの暮らしとは

デジタル活用が進んでいるのはビジネスだけではない。行政をはじめとする社会全体でデジタル活用は大きなテーマとなっている。では、人口の減少、少子高齢化という大きな社会課題を抱える中、これからの社会や都市、私たちの暮らしはどうなっていくのか。
リードコンサルタント熊谷 健彦が課題解決のアプローチや有効な技術について考える。どうやらカギは「共同」と「連携」にありそうだ。

この10年で社会はどう変わったか

──企業がDXに取り組むだけでなく、政府もデジタル庁の発足に動いたり、印鑑に代表されるアナログな行政手続きの見直しを図ったりするなど、デジタルは社会全体の重要なキーワードとなっています。これから、どのような社会が実現するのでしょうか。

NEC
デジタルビジネスプラットフォームユニット
戦略コンサルティングオフィス
エグゼクティブコンサルタント
熊谷 健彦

これから10年、どのような技術が、どんなことを実現していくのか。それを考えるために、まず10年前を振り返ってみます。

2010年は、4Gの台頭によってモバイル通信が飛躍的に向上。800MBの動画のダウンロードにかかる時間が5時間から43秒に短縮されました。いうまでもなく、現在、ちょうど5Gによって同様の進化が起こっています。「2時間の映画が数秒」とも表現されていますね。このモバイル通信の進化により、この10年の間にYouTubeのようなサービスが爆発的に浸透しました。モバイルデバイスの1日当たりのオンライン利用時間は、10年前は約30分。現在は3時間超といわれています。

また、10年前といえば、クラウドサービスが台頭しはじめたばかりで、データの90%はまだローカルのサーバに保管されていましたし、10年前の街には、まだ電気自動車がほとんど走っていませんでした。

整理してみると、改めてとても大きな変化が起こったのだと感じますね。では、次に10年先の未来を予想してみましょう。

4Gが5Gに置き換わろうとしているように、2030年には6G通信が登場するという予測があります。また、劇的に進化しそうなのがバッテリーの技術です。バッテリーの進化は、スマートフォンのようなモバイルだけでなく、さまざまな産業領域でIoTデバイスの進化を促すでしょう。さらに現在もDXの中心的な技術であるAIやXRはさらに高度化し、新しいサービスの実現を促すはずです。

──具体的に、どのようなサービスが生まれそうですか。

例えば、オンライン診療や遠隔診療のような医療分野の進化に期待が寄せられています。また、地図や気象、路面状況などのデータをリアルタイムに分析して、危険があれば、そこを通る予定のあるドライバーに事前に通知する「路面状態事前警告システム」が現在試験運用されていますが、技術の進化が、このようなサービスの実現を促すでしょう。

ほかにも、生体認証があらゆる場面で利用され、身分証や会員証などが存在しない社会の実現、駅、空港、商業施設などで、相手の感情までを検知、理解して、アシスタントするロボットの登場など、さまざまな新サービスが期待されています。

人口減少、少子高齢化に起因するさまざまな課題

──とても夢のある話ですね。

はい。これらのサービスによって、社会全体のスマート化、いわゆるスマートシティ構想がさらに加速するでしょう。とはいえ、やみくもにデジタルを実装するのではなく、社会全体で優先度の高い課題を理解して、それを解決する視点を持たなくてはなりません。

実際、国土交通省の定義でもスマートシティとは「都市の抱える諸課題に対して、ICTなどの新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営など)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」とあります。

では、現在、そしてこれからの都市が抱える諸課題とはなんでしょう。最も大きいのは人口の問題ではないでしょうか。さまざまな予測がありますが、ある発表によれば2050年の日本の人口は約8000万人といわれています。今の7割です。また人口が減るだけでなく少子高齢化も進み、労働力の減少が大きな問題となります。

これにより、企業は、アルバイトや派遣社員などがなかなか集まらない、欲しいスキルを持つ人材をなかなか採用できないなど、今以上に人事面の課題を抱えることになります。また、人口減少、少子高齢化は都市部より地方都市において顕著であり、地方経済が縮小していきます。つまり過疎化です。また、人が減るということはサービスをシェアする分母が減るということですから、社会全体でリビングコストが上昇していく可能性があります。

これらの課題は、数年前から指摘されていたことですが、新しい状況も加わっています。コロナ禍によって在宅勤務などが進み、郊外に移り住む人が増え始めていることです。もちろん、それ自体は問題ではありませんが、郊外だけですべての活動が完結するわけではありません。在宅勤務が中心となっても、月に何回かは出社したり、打ち合わせなどのために都市部に出かけたりするでしょう。同じ状況の人がたくさんいたら、たちまち交通網が混乱します。都市間移動の効率性は、新たな課題として浮上しそうです。

官民の密接な連携で課題解決に取り組む

──人口減少、少子高齢化に起因する問題は深刻ですね。どのように解決していくべきでしょうか。

解決の方向性として考えられるのは3つ。「サービス提供の省力化」「サービス提供の広域化によるコスト削減」、そして「政府・地方自治体の積極的な民間サービスとの連携」です(図1)。省力化によって人材不足に対応しながら、サービスをより広い範囲に提供して提供コストを下げる。そして、政府や自治体がそのために必要な規制緩和を進めるということです。省力化は、UIを使いやすくするだけでも効果が期待できるし、現在、各地域で個別に運用されているサービスには共同利用できるものも多いはずです。

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図1 顕在化している課題と解決の方向性
人口の現象と少子高齢化は、さまざまな課題につながる。
解決するには3つの方向性が考えられる

先ほど、コロナ禍をきっかけに住まいを移す人が増えているという話をしましたが、郊外都市のさらに外側の地域に移住した人たちに話を聞くと、自然豊かな環境や家賃面などの魅力はある一方、やはり駅が遠いといった移動、防犯、エネルギー、教育など、さまざまな課題があると聞きます。ただ、この地域の市町村は、規模が小さく、単独で課題を解決したり、住民サービスを向上したりしていくのは困難です。ならば、複数の市町村が連携してサービスを共同運営し、課題を解決してはどうでしょうか。「仮想大都市」という打ち手です(図2)。

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図2 郊外での生活の主な課題と解決の道筋
郊外やその外側の市町村は、都市部に比べると利便性に関する課題が多い。
それらの課題を複数の自治体で連携して解決していきたい

実は国土交通省のホームページや、各自治体のホームページを見ると、交通サービスの最適化による持続可能なモデルへの転換、リモート授業、オンライン診療のための環境整備など、既に日本中でさまざまな実証が進んでいます。

──NECは、どのような事例で貢献していますか。

防災、観光、医療、交通など、NECもさまざまな社会課題を解決するためのスマートシティプロジェクトに参画しています。最新の事例では、ハワイ州の5つの主要空港に、生体認証・映像分析技術とサーマルカメラを組み合わせた感染症対策ソリューションを提供しています。

このソリューションで生体認証やサーマルカメラが重要な役割を担っているように、センシングはスマートシティの中核技術の1つですが、NECは、特にこの領域に強みを持っていると自負しています。例えば、さきほど人の感情を理解してアシスタントするロボットの話をしましたが、NECも感情分析技術を持っており、スマートフォンカメラなどの表情をもとに、幸せ、驚き、怒り、困惑、蔑視、嫌悪、恐怖といった指標に基づいた感情を抽出します。これまで、人の感情はアンケートなどを通じて知るしかありませんでしたが、本当の感情は無意識ににじみ出るものではないでしょうか。この技術を使えば、表情から幸福度などを読み取って、街づくりに反映するコトも可能です。

もちろん技術を提供するだけではありません。デザイン思考で新しい解決策を提案するなど、幅広い取り組みを通じて、これからもスマートシティの進展、社会課題の解決に貢献していきます。

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