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2030年の社会を予測
DXのヒントは顧客の声の中にはない?

スマートフォンが社会基盤となり、産業の工業化からサービス化への転換を牽引している──。企業が今後も継続的に成長していく上で、デジタル社会を正しく理解することは欠かせない。特に意識が必要なのが、顧客が求める価値が大きく変わっていることだ。ハイテク、通信、鉄鋼、医療などさまざまな業界においてデジタル変革の経験を持つリードコンサルタント黒田 和靖が、DXのための顧客理解、そして、陥りがちな落とし穴や必要な人材や組織づくりについて解説する。

デジタル化で社会は工業中心からサービス中心に

──さまざまな領域で社会のデジタル化が進んでいます。企業は、そのことにどのように向き合うべきでしょうか。

NEC
デジタルビジネスプラットフォームユニット
戦略コンサルティングオフィス
黒田 和靖

テレワークの実践、キャッシュレス決済の利用拡大など、今の社会では、ものすごいスピードでデジタル化が進んでいます。企業が業務の効率化や新規事業の創出、顧客体験の向上などを目指していく上で、当然、このことは無視できません。むしろ、この先どうなるのかを予見しながら、取り組みを進めていく必要があります。例えば、このままデジタル化が進んだ場合、2030年はどんな社会になっているでしょうか。現在、起こっていることを振り返りながら、それを考えてみましょう。

総務省の発表によると、2020年の段階で、スマホの保有率は80%を超えています。音楽プレーヤー、ゲーム機、パソコンで行っていたことの多くをスマホで操作できるようになり、スマホは、日常におけるデジタル体験の中心的な入り口となっています。

このスマホの普及がデジタル社会の基盤として、工業化社会からサービス化社会への変化を支えています。モノや技術ではなく知覚価値や体験などのコト、つまり映画はディスクを買って見るのではなく動画配信サービスで見る、クルマは買わずにシェアリングサービスを使う、本や新聞もデジタルサービスを使うし使わなくなったものはリサイクルショップではなくフリマアプリで売るのが当たり前、といった社会です。

ビジネスでも同じです。かつて買うのが当たり前だったサーバやソフトウェアは、クラウドサービスを利用するのが、ごく当たり前になりました。既存のサービスであっても、どこかにデジタルが活用されており、もはや純粋にオフラインだけの環境を探すのは困難なほどです。

実際、サービスを提供する側である企業にデジタル化がどれくらい進んでいるか──。2020年に日本情報システムユーザー協会が「企業IT動向調査」で「商品やサービスのデジタル化実施レベル」を調査したところ、かなり多くの企業が「既に実施している」と答えました。売上規模が1兆円以上の企業では、約半数が「デジタルでサービスを高度化している」1/3程度が「デジタルによる創造・革新に取り組んでいる」と答えています。

2030年の社会はどのような変化を遂げているか

──近い将来の社会はどのように変わっているのでしょうか。

現状を踏まえて2030年がどうなるかを考えてみましょう。私の考えを簡単な図にまとめました(図1)。

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図1 2030年の社会を予測
働き方やデータの種類など、これから10年でさらに大きな変化が起こることが予想される

現在、6割の企業が行っているといわれるリモートワークはさらに定着し、より多くの業種や職種でテレワークが選択できるようになるでしょう。また、日本の人口が減り、労働力不足が課題として顕在化する中、企業は人材を確保するために外部リソースを頼ることが増えるでしょう。結果、いわゆるデジタルノマドといわれる場所や時間にとらわれずに仕事をする人の数も増えていくはずです。海外では、こうした人材が労働力の半数を占めるようになるともいわれています。

増え続けるデータは量の変化もありますが、種類や質の変化にも注目すべきです。センシング技術の進化に比例して、人の行動や知覚、そして経験のデータ化が進展。より精緻にパーソナライズされた提案が行われるなどして、私たちの生活に役立てられていきます。

ほかにも、オフィスやオフィス機器のような物理的資産をできるだけ持たない企業が増えたり、仮想空間技術の用途が拡大したりし、工事現場などでは安全性を考慮して遠隔オペレーションが中心になるなど、さまざまな変化が予想されます。

DXを前提に顧客理解を高め、自社の独自性を活かす

──よりデジタル化が進んだ社会で企業には何が求められるのでしょうか。

DX時代の生活者・顧客は、感動や共感を得ることで生まれる商品やサービスの付加価値である「感性価値」を重視します。モノが取引に介在したとしても、重視されるのはモノのスペックではなく、それがどんな体験につながったかです。モノの価値はあって当たり前。生活者は、プラスアルファの感性価値で買うかどうか、契約を続けるかを判断します。

モノに例えると、製造業の話だと誤解されてしまうかもしれませんが、同じ構造はあらゆる産業に当てはまります。提供する製品やサービスのスペックではなく、それが、個人のどんな物語につながり、どんな体験ができるのかが重要。これまで、優れた商品の公式は「商品の価値=機能価値(x)」でしたが、これからは「商品の価値=機能価値(x)×感性価値(y)」となり、この方程式を解いていかなくてはならないのです。

──どうすれば、その方程式を解くことができますか。

DXの目的をもう一度見直すべきです。多くの企業がデジタルを活用して業務プロセスの効率化を進めようと考えていますが、それだけで未来の顧客に対応できるのか。事業開発、顧客開拓、事業構造の改革など、行わなければならないDXのテーマがあるはずです。

──事業開発、事業構造の開拓のようなDXを目指しているが、うまく進まないという企業も多いようです。

確かにDXによる価値創出の課程で陥りやすい状況はあります。例えば、経営層が期待するような創造性を現場が発揮できないケースだと、その背景には、ルールや既存の慣習が足を引っ張っている、AIやIoTなどの技術知識がないなどの理由があります。また、全く新しい事業にチャレンジしようとする余り、誰を対象にするのか、どれだけ売れる見込みがあるかといった判断ができず、プロジェクトが頓挫してしまうというケースもあります。

なぜ、このような事態に陥るのか。それは、既存の業務とDXを兼務する、万全なことを確認して意思決定をするなど、DXを既存ビジネスと同じ位置付け、方法で進めようとするからです。

ビジネスにおいて最も重要な顧客理解でも同じです。一人ひとりに応じた商品・サービスを提供するカスタマーインは、徹底して顧客の声に耳を傾けるような顧客第一主義だけでは実践できません。顧客が口にする顕在化したニーズだけでなく、観察を通じて社会や顧客の潜在的なニーズを捉え、それを満たす提案を行っていく。それがカスタマーインに必要な顧客理解です。どんな人が、なぜ、どんな商品を購入したいのか、顧客の価値意識に踏み込んでDXのベースをつくる(図2)。それがあれば、どの市場をターゲットにするのか、どれだけ売れる見込みがあるかでプロジェクトが頓挫することはないし、技術志向の発想に偏ってしまうこともありません。

これらのことを踏まえるとDXを牽引するのは、やはり人材と組織。それらを支える企業風土の現状にも目を向けるべきでしょう。

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図2 DXに向けてこれから求められる顧客理解
どんな人が、なぜ、どんな商品を購入したいのか、顧客の価値意識に踏み込んで理解を深める

──ほかにはどのような成功のポイントがありますか。

自社の強みに目を向けることも重要です。いくら新しくても独自性がなく、他社がすぐに真似できてしまうような製品やサービスでは、持続的に成長していくことはできません。ユニークでオリジナリティのある製品やサービスにデジタル技術を融合させることで、独自の価値が生まれ、強力な競争力を得ることができるのです。

そのためには、現在の顧客が、なぜ自分たちの製品・サービスを買ってくれているのかを考えてみるとよいかもしれません。自分たちの勝ちパターンを再認識することからDXを始めてはどうでしょうか。

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