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「発見」を価値に変える「実装」
挑戦が遅すぎるということはない

新しいビジネスモデルの多くがAIなどの新しい技術の活用を前提にしている。技術は、現在のビジネスにおいて、ステップを上がるための「梯子」のようなものだ。だが、他社に先駆けて新しい技術を採用しようとして空回りしたり、自社には不似合いな技術にムダな投資を行ったり、技術に振り回されるべきではない。あくまでも技術はビジネスのためにある。技術を梯子にビジネスモデルを変化させる方法を考える。

発見の価値を高めるシステム化

──多くの企業がDXの実現を掲げ、クラウドやAI、IoTなど、新しい技術をどうビジネスに取り込むべきかに注力しています。技術とビジネス、そしてイノベーションの関係をどのように考えていますか。

NEC
デジタルビジネスプラットフォームユニット
戦略コンサルティングオフィス・リーダー
マネージング・エグゼクティブ
桃谷 英樹

イノベーションは、どう生まれて、どう育つのか。まずは過去の例を振り返ってみましょう。

現在も感染症の治療に用いられるペニシリンを見つけたのはアレクサンダー・フレミング博士です。フレミング博士は、偶然、ペニシリンカビによって細菌が死滅していることに気付き、それをマウスに投与。副作用がないことを確認しました。ただ、ペニシリンが実際に医療に活用され、産業的な価値につながるのは、そこから10年以上かかります。というのも、フレミング博士は、あくまでもペニシリンを病気ではないマウスに投与して、副作用がないことを確認しただけ。細菌感染症を起こしているマウスに投与して、治療効果があることを確かめたわけではなかったからです。

この発見を医学的な価値につなげたのがセルマン・ワクスマン博士です。ワクスマン博士は、ほかの生物を抑制する物質があるという事実を体系的・科学的に捉え、抗生物質という普遍的な存在として定義したのです。実際にストレプトマイシンをはじめ20を超える抗生物質を発見し、その後の微生物学研究、および抗生物質による治療の基礎をつくりました。

どちらがすごいという話をしたいのではありません。このことが示すのは「発見は、体系化を通して、科学となる」ということです。ともすれば、多くの人がまっさらな技術にいちはやく着目しなければ、成功者になれないと思っていますが、決してそうではありません。

──誰よりも早い者が最も大きな果実を手にできるとは限らないのですね。

はい、そのとおりです。新しい技術へのチャレンジに遅いということはありません。そして、単に早いということ以上に、システム化、実装の視点が重要です。

実際、フレミング博士とワクスマン博士の発見と研究は、ペニシリンの抽出に成功するオックスフォード大学のハワード・フローリー博士、エルンスト・ボリス・チェイン博士に引き継がれ、さらに、その成果に着目したファイザー社の莫大な投資および量産化を経て、さらに大きな産業的な価値につながっていきます。ファイザー社は、第二次世界大戦の際に、さらなる投資を行って量産体制を拡充し、利益をさらに大きなものとしました。多くの人の命を救ったということだけでなく、ビジネス的なチャンスを見逃さなかったという点でも注目すべきエピソードです。

既存ビジネスだけでは発展性を失っていく

──では具体的に、企業はどのように技術やイノベーションと向き合えばよいのでしょうか。

最近、よく言われる「両利きの経営」が、1つの解です(図1)。これは、経営学のイノベーション理論の1つで、ビジネスモデルという「知」について、「探索」と「深化」という2つの異なる取り組みを行うべきと訴えています。その様子を、あたかも右手と左手のどちらも上手に使える人に例えて、両利きの経営と言います。

まず「探索」とは、新しいことへのチャレンジを指します。さまざまなことを試してみながら、知の広がりを探索するのです。一方、「深化」は、得意分野に磨きをかけ、さらに深めていくこと。改善などを積み上げながら、既存のビジネスの継続的な成長を促すような取り組みのことです。

すでに軌道に乗っている「知の深化」が効率的な一方、「知の探索」は手間やコストがかかる割に不確実でリスクが大きい。「アイデアはよかったのだが、結局、ビジネスにはならなかった」と実にならない可能性も当然あります。こうしたことから、ともすれば、企業は目先の利益を優先して「深化」に比重を傾けがちです。しかし、それでは、企業の中長期的なイノベーションは停滞していき、将来の発展性や競争力を失ってしまう。その結果、既存のビジネスを一気に破壊するようなイノベーションに足下をすくわれ、一瞬にして市場から退場させられる可能性もあります。

デジタル・ディスラプターなどと呼ばれるベンチャー企業が既存のビジネスをどう変えたかを考えれば、このことが現実に起こることだと分かるはずです。そうならないためにも、企業は、既存のビジネスを通じて継続的、安定的な収益を得ながら、常に将来のイノベーションに向けたチャレンジにも投資を行うべき。両利きの経営は、そう訴えているのです。

図1 現在、求められる両利きの経営
「知の深化」「知の探索」、2つのアプローチで既存のビジネスを大事にしながら、新しいことに挑戦する経営が求められている

──では、知の探索は、どのように行っていけばよいのでしょうか。

あるビジネスモデルに他の手法を取り入れてみる、他のビジネスモデルと組み合わせてみる──。「知の範囲」を広げて、さまざまなことを試していくべきです。新しい取り組みは、基本的に不確実なものですから、こうした検証を繰り返し行うしかありません。ただ、実になる可能性が見えてこない取り組みに、いつまでも投資するといったことは避けるべきです。不確実性を管理する意味でも、検証のサイクルは短く、早いほうがよいでしょう。

例えば、あるIT企業では以前、事業を「新規事業」「成長事業」「中核事業」の3つに分類し、それに応じた基準で事業の成長をマネジメントしました。例えば、新規事業については、設定した基準を満たせなければすぐに撤退するという具合です。これなら、見込みのない事業に優秀な人材を塩漬けにしてしまうようなリスクを低減できます。現在でも、事業をセグメント分けする考え方は残っており、各事業の現在地を評価して、全社的に不確実性が高まりすぎたり、低くなりすぎたりするリスクを管理するためのポートフォリオに活かされています。

──かけ声や姿勢などに頼るのではなく、挑戦を仕組み化するわけですね。

そうですね。ただ、姿勢や気構えが必要でないかといえばそうではありません。例えば別のある企業では、市場には明らかにシーズがあり、もはや成功は目の前ともいえそうな場合でも、その上で「やりたいかどうか」を重視するそうです。使命感に近い、この「やりたい」という動機とエネルギーがなければ、そのビジネスへの挑戦も、自らが変革していく姿も楽しむことができないからです。

イノベーションの種の育て方

──探索を経て、有望株に育ったイノベーションの種は、どう育てていけばよいのでしょうか。

新しいビジネスモデルをどういう方法で拡張していくか。意識したいのは、オープンな戦略をとるか、クローズドな戦略をとるかです。

例えば、Windowsはオープンにして、さまざまなソフトウェアと互換性を保つことで今の地位を築きました。モデムやFAXなどもそうですね。一方、既存製品との連続性や周辺環境との互換性は意識せず、クローズドな戦略で利益を独占するという方法ももちろんあります。例えば、市場のゲーム機のほとんどはほかのゲーム機との互換性を持ちません。

自分たちが投資できるリソースに限界があるならオープン戦略で市場からの投資を促すほうが効率的ですが、いずれにせよ、最も大きな価値は何かを見極め、そのためにオープンとクローズのどちらが有効かを判断すべきです。

また、経営者の姿勢も重要です。経営者自身が、知の探索の必要性を理解するのは当然ですが、あまり関与しすぎると、周りの忖度につながりかねません。また、経営者は、多くの成功体験を持っているものですが、ともすれば、それがイノベーションの種を見極める邪魔をしてしまうこともあります。AirbnbやFacebookなどイノベーションを実現した企業も、当初は投資家の評価が低かった。著名な投資家でも、これらの企業の将来性は見通せていなかったわけです。

ですから、具体的な検討は現場のチームに任せて、経営者はマネジメントに注力する。挑戦を促し、ダメなときには、すぐに次の挑戦にとりかかるスピードを実現するための組織や制度、仕組み作りなどに力を注ぐべきです。

そして、欠かせないのが技術の視点。新しいビジネスモデルを実装する上で、どの技術と組み合わせるべきか。イノベーションの種を育てるには、その見極めが重要です。

──NECも新価値創造のためのノウハウを持っているのでしょうか。

NECは、イノベーションの育成と技術の実装の両面から、お手伝いすることが可能です。

まずNECはAIをはじめ、ビジネスモデルの実装に欠かせない最新の技術を持っています。そして、NEC自身のビジネスに加えて、多くのお客様のビジネスを支援する中で培ったイノベーションの育成と実装のための豊富なノウハウがあります。ベースになっているのはアジャイル開発の進め方です(図2)。アイデアを基に価値やソリューションの検証と確認を繰り返し、市場に提供した価値を継続してアップデートするための仮説検証を繰り返す。持ち前の技術力とこのサイクルの実践によって、お客様と共に新しい価値を創出しています。デジタルビジネスにご興味をお持ちの企業は、ぜひお声がけください。

図2 NECのデジタルビジネス支援
アイデアをベースに価値や技術的な実現性の検証をアジャイル的なアプローチで繰り返し、デジタルビジネスの実装を実現する

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