注目トレンド

政府が本腰入れる新サイバーセキュリティ戦略
その概要と注目すべきポイントとは

全体的なスタンスはよりアクティブに

それでは本戦略には、具体的にどのような特色があるのでしょうか。まずは全体像を俯瞰してみましょう。
従来の戦略は、政府をはじめとする国内のセキュリティ対策強化を中心に策定されていました。セキュリティリスクを低減し、その脅威から国民を守ることが、その主眼でした。これに対し本戦略は、広範囲かつ深い内容になっています。国内における国民の安全のみならず、「経済社会の活力の向上及び持続的発展」や「国際社会の平和・安全及び我が国の安全保障」にも言及しています。サイバーセキュリティに関する施策を国のリスク低減のためだけではなく、日本全体の競争力を強化させる手段であると、明確に位置づけているといえるでしょう。
また政府は、日米、日・ASEAN(東南アジア諸国連合) を中心とした多国間・マルチステークホルダーの取り組みも推進しており、本戦略でも、相互に理解を深めていくことにより、サイバーセキュリティの確保と情報の自由な流通による経済・社会・文化の発展に取り組んでいくと新たに述べています。
本戦略の柱は3本あります。「経済社会」、「安心・安全」、「国際・安全保障」です。またこれらに加えて「研究開発・人材育成」が、3本柱に横串を通す構成になっています。

本戦略の具体的な施策概要

これらの3本柱+横串について、もう少し詳しく見ていきましょう。

経済社会

ここでは、経済産業省が中心になって企画・推進している「セキュリティマインドをもった企業経営の推進~費用から投資へ~」を中心に、以下の3つのテーマが取り上げられています。

  • 安全なIoT(Internet of Things) システムの創出
  • セキュリティマインドをもった企業経営推進
  • セキュリティ産業の振興

安心・安全

政府機関・重要インフラ・国民を守るための取り組みです。これに関しては内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を中心に、担当府省庁が連携して取り組んでいます。

  • 国民・社会を守るための取り組み
  • 重要インフラを守るための取り組み
  • 政府機関を守るための取り組み

国際・安全保障

国際社会の平和・安定と、日本の安全保障に関する取り組みです。警察や自衛隊をはじめとする機関の質的・量的な向上を図るともに、世界の機関や国と積極的に協力していきます。

  • 我が国の安全の確保
  • 国際社会の平和・安定
  • 世界各国との協力・連携

研究開発・人材育成

上記の3本柱となる施策を継続的に実施するには、研究開発や人材開発も重要です。そのため、今後は最新技術の研究やセキュリティ人材の育成も注力ポイントの1つとなります。

  • 総合科学技術・イノベーション会議の各プログラムと連携し推進。
  • 融合領域の研究促進・コア技術(暗号技術など)を保持。
  • 高等教育などの産学連携の推進、実践的演習の充実、セキュリティコンテストの開催。
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(図2)サイバーセキュリティ戦略の概要