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サプライチェーン上の人権デュー・ディリジェンス強化に向けて

NECは、サステナブルなサプライチェーンの実現を目指し、協働と共創を基本的な考え方としてお取引先とのエンゲージメントを進めています。本ダイアログでは、この1年間の取り組みについて振り返るとともに、新型コロナウイルス感染症や欧州で策定中の環境・人権デュー・ディリジェンス義務化法案などの新たなテーマや地政学的リスクへの対応について、有識者のみなさまからご意見をいただきました。

※本ダイアログは、オンラインで実施しました。

2020年度のサプライヤーエンゲージメント

清水  2020年度は、「サプライチェーンにおける責任ある企業行動ガイドライン」(以下、ガイドライン)を改訂し、ガイドラインを遵守する宣言書への署名取得活動を開始した。また、エンゲージメント強化施策として、お取引先の幹部にもサステナビリティの重要性を認識していただくために、環境・人権・安全衛生分野に積極的に取り組むお取引先を評価する「サステナビリティ表彰」を始めた。質問票の配布件数も従来の200社から700社に増やし、評価結果のフィードバックを行いながら、お取引先の改善取り組みを支援している。

ILO駐日事務所
プログラムオフィサー
田中 竜介氏

田中氏 この1年で活動がより具体化されたのがわかる。特に、ガイドラインの改訂について、「ILO多国籍企業宣言」を含む重要な国際基準および文書を参照し、これに沿って労働分野のデュー・ディリジェンスについて具体的な内容まで記載している点が評価できる。責任ある企業行動をいかにサプライチェーンを構成する中小企業に浸透させていくか、業界のリーディングカンパニーとしての役割は大きい。取引先の表彰について、取引先の前向きな姿勢が活動を促進するだけでなく、表彰する側にとっても知識と経験を積み上げるきっかけになる点で有効であると思われる。

清水  サステナブルなサプライチェーンの実現には、お取引先への働きかけだけでなく、NECの調達部員一人ひとりがその意義を納得したうえで取り組むことが重要である。そのため、全従業員向けのWeb研修に加え、国内とアジア地域の調達部員約600人を対象に、外部講師によるセミナーを開催した。取り組みのPDCAを回す体制は整ってきたので、リスクが高いところに対策がとれているかを確認し、新たな課題への取り組みをさらに進めていきたい。

永井氏  エンゲージメントのスコープの中に、ハードウェア・ソフトウェアの開発に従事する非正規・派遣・請負の方々まで入っているのはすばらしい。現時点では質問票や訪問点検の実施結果について大きな問題はないようだが、潜在リスクを見つける取り組みをさらに進め、取引先とともに是正できると、ポジティブなインパクトを創り出すことができる。

BSR
(Business for Social Responsibility)
マネージング・
ディレクター
永井 朝子氏

田中氏 サプライヤーエンゲージメントで重要なことは、サプライヤーの能力強化を重視すべき点とライツホルダー*としての労働者の視点に立つべき点である。SAQ(Self Assessment Questionnaire)だけでは測れないサプライヤーの人権・労働課題対応能力を見極め、強化していくこと、そして課題解決にあたって労働者の意見を取り入れることが大切である。日本企業のアジア地域における建設的な労使関係の構築は「ILO多国籍企業宣言」に照らして好事例としてとらえられており、NECのアジアの工場における現地の労働組合との対話も大切にされるとよい。目に見えにくい価値かもしれないが、団結権や団体交渉権が守られていることは、企業とサプライチェーンのレジリエンスにつながる。コロナ禍で減産した際に、問題点を労働組合との対話により解決し、雇用を維持した事例も報告されている。労使関係や社会対話は、緊急時にも非常に重要である。

  • *
    ライツホルダー(Rights holder):権利を有する人々、人権侵害を受ける可能性のある当事者

新型コロナウイルス感染症への対応

田中氏 パンデミックの中で多様なステークホルダーから求められる中心的課題が、事業と雇用の維持である。雇用を維持しつつ事業も継続する観点から、生産需要の変動などに対応しうる労使の信頼関係構築などサプライチェーンの強靭性も求められている。日本国内においても、社会保障が十分でなく貧困と隣り合わせの脆弱層が存在し、特に非正規労働者やシングルマザーなどに対して企業による特別な配慮も必要となる。中でも重要なことが安全衛生で、感染防止に努めることが最優先であるが、それに加え、テレワークにおける不公平感やストレスが起きていないかの把握・対処も必要である。

中村 本社スタッフや営業部門の8割が在宅勤務している中で、プロジェクトルームでの作業が多い従業員やお取引先に不公平感が生じないよう、早い段階からお取引先に働きかけて在宅で勤務できる環境を開発・確保した。どうしても出社が必要な場合は、徹底した感染予防対策や健康管理を実施している。これらの取り組み内容やスピード感についてはお取引先からも評価していただいている。

NEC 調達本部 本部長代理
中村 敏之

高橋氏 コロナ禍において、取引先訪問など直接の対話をとおして信頼関係を高めることが難しくなっていると思われる。どのように対応されているのか。
沖見 お取引先とともに新しいコミュニケーションスタイルを模索している。既存のお取引先とは信頼関係のベースがあるためオンラインでのエンゲージメントを継続できる一方で、新規のお取引先とのコミュニケーション方法は工夫が必要と考えている。

NEC 調達本部 本部長
沖見 和弘

国際基準の人権デュー・ディリジェンスの取り組み

永井氏 EUの人権・環境デュー・ディリジェンス義務化法案(以下、DD法案)は、ほぼ通過する見込みであるため、今から準備しておけるとよい。国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に沿ったデュー・ディリジェンスが求められる想定なので、今までの取り組みをUNGPに沿った形で整理・拡充することが重要かと思う。また、ガバナンスに関して、経営層が参画し、外部視点も取り込んだサステナビリティ委員会を設置するなど、このダイアログをより組織化することが求められるであろう。

高橋氏 DD法案は、企業に対し事業・サプライチェーンを通じた人権への影響に加えて環境への影響についても評価・対処することを求めるとみられる。気候変動・異常気象を通じて、その地域に暮らす脆弱な人たちに影響があるということがその背景にある。また、サプライチェーン・デュー・ディリジェンスを補完する役割を担う通報メカニズムも重要視されている。NECにおける人権デュー・ディリジェンスについては、潜在的な人権への影響が高いところについて、重点的に確認することを検討していただきたい。最初からすべての取引先を対象とする必要はなく、リスクの高いところから取り組みを行っていく。そしてその進捗を示すことで、デュー・ディリジェンスに取り組んでいることをより明確に説明できる。

真和総合法律事務所
パートナー弁護士
高橋 大祐氏

田中氏 いくつかの先進IT企業が行っているように、特定の人権・労働課題にフォーカスした情報開示を進めていただきたい。投資家や市民社会はICTセクターにおける移民労働者に課される募集・斡旋手数料賦課など、セクター別の脆弱性やリスクにも注目している。他社事例も認識したうえで、業界特有の課題に対する開示を強化できるとよいと思う。

清水 国際基準の人権デュー・ディリジェンスを今後さらに進めるために、お取引先に目指す姿を共有しながら、潜在的なリスクを確認し、是正するとともに、その取り組み過程を開示することで透明性を確保していきたい。

地政学的リスクをはじめとした新課題への対応姿勢

永井氏 国際情勢が不安定となり、さまざまな国で問題が起こっている。おすすめしたいのが、外部情報に照らした自社の事業活動のモニタリング。同業他社が何らかの指摘を受けたときに、NECには指摘がなかったとしても自社の状況を確認してほしい。

田中氏 大切なことは、今までどういうプロセスで政府を含むステークホルダーと対話してきたか、労働者の保護を図ってきたかを十分に明らかにできる資料の積み上げと仕組みづくりである。

清水 本日は、みなさまの知見や、NECに対してお感じになったことを率直に話していただいたことに感謝する。取り組むべき課題は多いが、世の中の動きを継続して確認するとともに、ステークホルダーのご意見を伺いながら活動を進めていきたい。引き続きご助言をお願いしたい。

NEC 執行役員 兼 CSCO 兼
サステナビリティ
推進本部長
清水 茂樹