サイト内の現在位置を表示しています。

調達活動における人権尊重の取り組み強化に向けて

NECは、外部有識者とともに事業活動が影響を与える可能性がある人権課題のレビューを行いました。その結果、ハイリスクとして浮かび上がったテーマ「新技術と人権」と「サプライチェーン上の労働」のうち、サプライチェーン上の人権尊重の取り組み方法や留意点について、専門家からアドバイスをいただきました。

※ 本ダイアログは、2020年2月に開催しました。

付加価値としてのサステナビリティ

NECグループは、160ヵ国に327の拠点を持ち、ソフトフェア開発拠点は主にアジア・欧米に、ハードウェア生産拠点は主にアジアに所在しています。人権などに関する社会要請の高まりを背景に、サステナブルなサプライチェーンの実現を目指し、サプライヤーとの良好な関係構築をベースとする活動を進めています。

清水  毎年開催している国内外主要サプライヤー200社との交流会では、納期、技術、BCP(事業継続)といった課題解決のための「協働」に加え、事業をとおした社会価値創造のための「共創」、この2つを大切にしていきたいと伝えている。
これら200社には人権や環境に関するサーベイなどにもご協力いただいているが、本質的な取り組み改善のための有効な方法について、短期と長期両方の視点からアドバイスいただきたい。

高橋氏 サプライヤーとの「協働」や「共創」による社会価値創造というコンセプトや、社会からの要請を考慮している視点は非常に良い。グローバルなビジネス環境において、特に欧米では、伝統的な価値である品質、安全、価格に加えてサステナビリティを提供価値に加えることで、新興国の製品に対抗する流れがある。NECでも人権課題に取り組むことが協働だけでなく、共創にもつながるというメッセージをサプライヤーに伝えていってほしい。また、人権デュー・ディリジェンスの推進にあたっては、「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)でも提唱されているように、第一にビジネス、サプライチェーン上の人権への負の影響(人権リスク)を把握し、そのうえで人権リスクの高い領域を調査する、リスクベースアプローチをとることもできる。

真和総合法律事務所
パートナー弁護士
高橋 大祐氏

沖見  具体的な取り組みに関し、すべてのサプライヤーに対して一斉に取り組みを開始することは難しく、リスクベースアプローチが重要であると感じている。
リスクを調査する際に、地域と購入額のほかにどのような要素を考慮すべきか。

NEC 調達本部 本部長
沖見 和弘

高橋氏 セクターやサプライヤー企業、調達する製品の内容などが挙げられる。各国政府、国際機関、NGOが提供するリスク情報が、一次情報としては使える。

永井氏 リスクベースアプローチの要素としては、上記に加え人権侵害の深刻度という視点も入れられるとよい。

競争力強化につながるサプライヤーとのパートナーシップ

清水 今年度は、サプライヤー向けに当社の「サプライチェーンにおける責任ある企業行動ガイドライン」の遵守を宣言していただく書面、サプライヤー宣言書を作成した。まずは国内全サプライヤーを対象にスタートし、海外に拡大していく予定。またNEC独自の仕組みとして、バイヤーがサプライヤー訪問時に労働環境などを確認するSupplier Visit Recordという点検を中国で試験的に実施しているが、その際に注意すべき点があればご教示いただきたい。

NEC 執行役員 兼 CSCO
清水 茂樹

高橋氏 サプライヤー宣言書は、表明保証だけでなく、サプライヤーとのコミュニケーション活発化のために活用し、監査をとおして、例えばサプライヤーの能力開発にどのように協力できるか、という視点を持つことが重要。日弁連の「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス」では、サプライヤーと発注企業とのコミュニケーションをどう活性化させるか、という視点が重要であることを強調している。これらの取り組みをSDGsに照らし合わせると、目標12「つくる責任、つかう責任」と、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」に該当する。

田中氏 労働者が抱える課題は、一方的な監査では発見しにくく、また一貫性のない大量の監査を受ける状況では、アジア諸国で成長の源泉となっている中小企業が疲弊してしまう。そこで、指導原則でも強調されている「対話」や「エンゲージメント」が重要になってくる。
サプライチェーンにおいて現地事情に精通する人材を育成し、社会的責任ある事業遂行について、そのメリットをサプライヤーと十分に共有できる関係を構築することが必要。取引関係だけでNECがレバレッジ(影響力)を持つのは難しい。労働者の意見を取り入れ、労使関係を改善することで、リスク情報の早期入手や問題解決の素地ができ、紛争予防にも役立つ。1社で問題解決できない場合には、同業他社と課題を共有してアクションを起こすこともできる。サプライチェーンや産業を通じて社会的責任ある行動を根づかせ、業界や地域特有の労働の課題に対し、時には政府やステークホルダーも交えて「協働」「共創」することにより、持続可能で競争力のあるビジネスを構築するという姿勢が何よりも大事である。

ILO駐日事務所
プログラムオフィサー
田中 竜介氏

高橋氏 デュー・ディリジェンスを補完し、また救済へのアクセスを確保する取り組みとして、苦情処理窓口の設置も重要。早い段階から問題を認識することで、問題が深刻化する前に対応することが可能となる。

ICTの進化によるこれからの働き方への対応

中村 ICT分野では、技術者不足が発生しており、これからは仕事をタスクベースでクラウドワーカーに依頼しないとビジネス拡大が難しいと考えている。クラウドワーカーの雇用に関し、注意すべき点はあるか。

NEC 調達本部
本部長代理
中村 敏之

田中氏 クラウドワークを中心としたプラットフォーム経済では、労働者が個人事業主として扱われる結果として、対価に見合わない長時間労働を強いられるリスクが懸念される。また、作業の過度なモニタリング、スキル習得費用の自己負担、社会保障や利益代表の仕組みの不十分さ、国境を越えたガバナンスの在り方についても議論が必要であり、こうした新たな課題に対して十分な国際的フレームワークが確立していないのが現状。個々の企業によるディーセントワーク促進のための取り組み、課題の共有、マルチステークホルダー対話による対処方法の模索が求められている。

永井氏 欧米では労働に対する概念が変化し、個人事業主が急速に増えている。また、個人事業主には結社の自由がないため、労働環境や条件の改善を求める訴訟も増えている。法律の制定が追い付いておらず、企業が訴訟対応に苦慮している点は留意すべき。

BSR
(Business for Social Responsibility)
マネージング・ディレクター
永井 朝子氏

高橋氏 企業活動がステークホルダーに与えるインパクトを、法律が追い付いていない部分でもさまざまな角度から見ていくという視点で「指導原則」が作成された。クラウドワーカーのようなケースでも、企業が労働者との契約を通じてネガティブなインパクトを与えてないかといった点を分析し、法律の枠組みを超えて確認していくことがとても重要。

清水 本日は、取り組む姿勢や視座を上げる大変良い機会になった。「協働」と「共創」というテーマを引き続き大切にしながら、今後の人権尊重を含む責任ある調達の活動計画に反映していきたい。