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オンプレミス環境からAWS環境へ移行する際のポイント~構成検討編~
CLUSTERPRO オフィシャルブログ ~クラブロ~
はじめに
CLUSTERPROにより構築したHAクラスターをオンプレミス環境からAWS環境へ移行する際の検討ポイントをご紹介します。
CLUSTERPROはオンプレミスやクラウドといった環境を問わずご利用いただけますが、環境により利用できる機能が異なるため、移行時には接続先切り替え方式やデータの共有方式について検討が必要となります。また、移行する際に並行稼働する期間がある場合は、ライセンスの取り扱いについても注意が必要です。
本記事は、オンプレミス環境からAWS環境へ移行する際の検討ポイントを紹介する「構成検討編」と、実際に移行する際にCLUSTERPROの設定ファイルであるクラスタ構成情報ファイルを流用して設定変更を行う「設定変更編」に分かれており、今回は「構成検討編」になります。クラスタ構成情報ファイルの修正方法については「設定変更編」の記事を参照してください。
この記事の内容
1. オンプレミス環境からAWS環境へ移行する際の検討ポイント
オンプレミス環境からAWS環境へ移行する際の検討ポイントをご紹介します。
オンプレミス環境とAWS環境では、CLUSTERPROの使用可能な機能(リソース)に差分があるため、移行にあたってはリソースの置き換えやパラメータの変更を検討する必要があります。
オンプレミスとAWSにおけるCLUSTERPROの機能差分は以下の通りです。
機能 | オンプレミス | AWS |
共有ディスク型クラスターの構築可否 | 〇 | 〇 |
ミラーディスク型クラスターの構築可否 | 〇 | 〇 |
ハイブリッドディスク型クラスターの構築可否 | 〇 | 〇 |
管理用(マネジメント)グループの使用可否 | 〇 | × |
フローティングIPリソースの使用可否 | 〇 | × |
仮想IPリソースの使用可否 | 〇 | × |
仮想コンピュータ名リソースの使用可否 | 〇 | × |
ダイナミックDNSリソースの使用可否 | 〇 | 〇 |
AWS Elastic IPリソースの使用可否 | × | 〇 |
AWS 仮想IPリソースの使用可否 | × | 〇 |
AWS セカンダリIPリソースの使用可否 | × | 〇 |
AWS DNSリソースの使用可否 | × | 〇 |
また、機能差分や注意事項については以下のガイドにも掲載しておりますので、併せて参照ください。
- Windows > Amazon Web Services > CLUSTERPRO X 5.2 向け HAクラスタ 構築ガイド
→ 第 2 章 機能概要
→ 2.5. オンプレミスとAWS
- Linux > Amazon Web Services > CLUSTERPRO X 5.2 向け HAクラスタ 構築ガイド
→ 第 2 章 機能概要
→ 2.5. オンプレミスとAWS
ご紹介する機能の中には、CLUSTERPROのバージョンによっては利用できない機能もありますので、最新バージョンでのご利用をおすすめします。例えば、AWS DNSリソースはCLUSTERPRO X 4.0以降、強制停止リソースはCLUSTERPRO X 5.0以降で利用可能な機能となっています。
1.1 接続先切り替え方式について
機能差分にまとめられている通り、AWS環境ではフローティングIPリソースや仮想IPリソースを利用することができないため、オンプレミス環境と同様にクライアントからIPアドレスを使用して業務が稼働しているサーバーにアクセスしたい場合は、接続先切り替え方式について、AWS仮想IPリソースへ置き換えるなどの検討が必要になります。
AWS環境で利用できる接続先切り替え機能の特徴や用途、注意事項を「AWS環境におけるCLUSTERPRO Xの定番構成をまとめました」や「CLUSTERPRO X 5.0のご紹介~AWSセカンダリIPリソース~」の記事、または各種ガイドで紹介しておりますので、参照ください。
置き換え元 | 置き換え先 | 備考 |
フローティングIPリソース | AWS Elastic IPリソース | グローバルIPアドレスを使用するため、業務に接続するIPアドレスの変更を検討する必要がある。 |
AWS 仮想IPリソース | VPCのCIDRに属さないIPアドレスを指定する必要があるため、業務に接続するIPアドレスの変更を検討する必要がある。 | |
AWS セカンダリIPリソース | 同じサブネット上でセカンダリIPアドレスを付け替えるため、IPアドレスはそのまま利用できる場合がある。 | |
仮想IPリソース | AWS Elastic IPリソース | グローバルIPアドレスを使用するため、業務に接続するIPアドレスの変更を検討する必要がある。 |
AWS 仮想IPリソース | VPCのCIDRに属さないIPアドレスを使用するため、IPアドレスはそのまま利用できる場合がある。 | |
仮想コンピュータ名リソース | AWS 仮想IPリソース + hostsファイル | AWSでは仮想コンピュータ名リソースが使用できないため、hostsファイルに仮想ホスト名とIPアドレスの組を設定して利用する。 |
AWS セカンダリIPリソース + hostsファイル | ||
ダイナミックDNSリソース | ダイナミックDNSリソース | クラスターサーバーからダイナミックDNSサーバーへのアクセスが可能であれば、そのまま利用可能。 |
AWS DNSリソース | Amazon Route 53へHosted Zoneの作成が必要。 |
- Windows > Amazon Web Services > CLUSTERPRO X 5.2 向け HAクラスタ 構築ガイド
→ 第 4 章 注意事項
- Linux > Amazon Web Services > CLUSTERPRO X 5.2 向け HAクラスタ 構築ガイド
→ 第 4 章 注意事項
- CLUSTERPRO X 5.2 > Windows > リファレンスガイド
→ 第 3 章 グループリソースの詳細
→ 3.18 AWS Elastic IP リソースを理解する
→ 3.19 AWS 仮想IP リソースを理解する
→ 3.20 AWS セカンダリIP リソースを理解する
→ 3.21 AWS DNS リソースを理解する
- CLUSTERPRO X 5.2 > Linux > リファレンスガイド
→ 第 3 章 グループリソースの詳細
→ 3.14 AWS Elastic IP リソースを理解する
→ 3.15 AWS 仮想IP リソースを理解する
→ 3.16 AWS セカンダリIP リソースを理解する
→ 3.17 AWS DNS リソースを理解する
1.2 データの引継ぎ方法について
AWS環境では、オンプレミス環境と同様に共有ディスク型やミラーディスク型、ハイブリッドディスク型のHAクラスターを構築することが可能です。
AWSでは共有ディスクに相当するサービスや機能が提供されています。Amazon EBSのマルチアタッチ機能を利用したHAクラスターは、よりI/O性能が重視される環境において、選択肢の1つとなります。ただし、基本的にはSingle-AZ構成のクラスターとなるため、Multi-AZ構成やリージョン間のクラスターと比較して可用性は低下します。AWSでは複数のAZ、もしくはリージョンにEC2を配置する構成のほうがより高いサービスレベルアグリーメント(以降、SLA)の適用を受けることができます。詳細はAWSのSLAを参照ください。
より可用性が高い構成を実現する場合には、複数のAZやリージョンを跨いでサーバーを設置できるミラーディスク型やハイブリッドディスク型のHAクラスターの方が高いSLAの適用を受けられるため、適していると言えます。ハイブリッドディスク型クラスターは共有ディスク型とミラーディスク型のHAクラスターを組み合わせた構成です。
ミラーディスク型やハイブリッドディスク型のHAクラスターを構築する前に検討すべきポイントや推奨値については「ミラーディスク型クラスターを構築する際の検討ポイントや推奨設定」の記事を公開しておりますので、あわせて参照ください。
また、Linux OSの場合は、Amazon Elastic File Systemをサーバー間の共有ストレージとして利用したHAクラスターをMulti-AZ構成で構築することも可能です。ただし、Amazon EFS はデータを複数のアベイラビリティゾーンに分散して書き込みを行うため、データの書き込みについてはレイテンシーが増加する可能性があります。
なお、ミラーディスクリソースなど、一部のリソースを新規に利用する場合は追加のライセンスが必要となります。詳細は本記事末尾のお問い合わせ先までお問い合わせください。
1.3 NP解決及び強制停止設定について
AWS環境ではNP解決方法として、HTTP NP解決リソースを設定する構成を推奨しています。また、NP解決リソースに加えて強制停止リソースも併用することを推奨しています。NP解決リソースと強制停止リソースの設定詳細については「AWSで両系活性を防止する方法」として記事を公開しておりますので、参照ください。
1.4 その他の注意事項について
その他、AWS環境へ移行を検討する際の注意事項をご紹介します。
- 通信ポートの設定について
AWS環境の場合は、CLUSTERPROが通信に使用するポートの開放設定として、EC2インスタンスのファイアウォール設定の他に、セキュリティグループやネットワークACL等のAWS側のセキュリティ設定も行う必要があります。ポート番号の詳細は、スタートアップガイドに掲載しています。CLUSTERPRO X 4.2以降ではクラスタ情報管理用に新規ポートの許可設定が必要となっている等、バージョンごとに必要となるポート番号が異なりますので、ご利用になるバージョンのガイドを参照ください。
- CLUSTERPRO X 5.2 > Windows > スタートアップガイド
→ 第 6 章 注意制限事項
→ 6.2 CLUSTERPRO インストール前
→ 6.2.2 通信ポート番号
- CLUSTERPRO X 5.2 > Linux > スタートアップガイド
→ 第 6 章 注意制限事項
→ 6.3 OS インストール後、CLUSTERPRO インストール前
→ 6.3.1 通信ポート番号
- AWS AZ 監視リソースについて
AWS AZ 監視リソースは、AWS CLI コマンドを利用して Availability Zone の健全性の監視を行うモニタリソースで、AZ が異常を示す応答が返却された場合にフェイルオーバを実行します。AZの障害を監視し、異常を検知した際に、フェイルオーバを行いたい要望がある場合に検討ください。AWS AZ 監視リソースの詳細は、以下のガイドを参照ください。
- CLUSTERPRO X 5.2 > Windows > リファレンスガイド
→ 第 4 章 モニタリソースの詳細
→ 4.44. AWS AZ監視リソースを理解する
- CLUSTERPRO X 5.2 > Linux > リファレンスガイド
→ 第 4 章 モニタリソースの詳細
→ 4.45. AWS AZ モニタリソースを理解する
- Linux環境で利用するディスクのデバイス名固定について
オンプレミス環境でLinuxのミラーディスク型のHAクラスターを構築する際は、ミラーパーティションにデバイスファイル名を指定する場合が多いです。しかし、AWS環境ではインタンスタイプの変更やインスタンスの再起動、EBSの追加などによりデバイスファイル名が変更されることがあり、クラスターの運用中にデバイスファイル名が変更されることで正しくミラーリングができなくなる恐れがあります。
そのため、AWS環境でミラーディスク型のHAクラスターを構築する際は「クラウド環境でLinuxのミラーディスク型クラスターを構築する際の注意ポイント」の記事を参考に論理ボリュームを利用する、ミラーディスクの設定の際にデバイスファイル名の代わりにby-idを指定することでデバイスファイル名の変更の影響を受けないようにする等の対応が必要となります。
なお、共有ディスク型やハイブリッドディスク型のHAクラスターを構築する場合でも、上記の対策は有効です。
- OSの起動時間、CLUSTERPROのサービス起動時間の調整について
新たにAWS 強制停止リソースを利用する場合、OSやCLUSTERPROサービスの起動遅延設定が必要になる場合があります。詳細は以下の記事で紹介しています。
なお、移行期間中に新旧サーバーで並行稼働する期間がある場合は、1ヶ月単位で利用可能な期限付きライセンスの用意もございますので、利用をご検討ください。
まとめ
今回は、CLUSTERPROにより構築したHAクラスターをオンプレミス環境からAWS環境へ移行する際の検討ポイントについてご紹介しました。AWS上でどのようなクラスターを構築するかはシステムの要件ごとにそれぞれ異なるため、今回ご紹介したポイントがすべての環境で必ずしも見直す必要があるというわけではありませんが、オンプレミスからAWS上に環境の移行を検討される場合はぜひご参考にしてください。
実際にAWS環境へ移行する際に、クラスタ構成情報ファイルを流用して設定変更を行う方法を「設定変更編」に記載しておりますので、併せてご覧ください。
参考
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