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HAクラスター入門 ~ミラーディスク型クラスター機能解説~

CLUSTERPRO オフィシャルブログ ~クラブロ~

はじめに

今回は、HAクラスター入門として、ミラーディスク型クラスターの特徴とミラーディスク型クラスターを構築する際に理解しておきたい機能について解説します。
解説する機能は、ミラーディスク型クラスターを構築する際に利用されるものばかりですので、ぜひ事前にご一読ください。
ミラーディスク型クラスターで利用できる機能を学び、理解を深めていきましょう。

この記事の内容

1. 共有ディスク型クラスターとミラーディスク型クラスター

まず、HAクラスターにはどのような構成があるのかを振り返ってみましょう。
HAクラスターの構成には、主に共有ディスク型クラスターとミラーディスク型クラスターの2種類があります。
  • 共有ディスク型クラスター
    HAクラスターを構成する2台以上のサーバーに接続された共有ディスクにデータを格納することにより、フェールオーバー後も同一のデータにアクセスできるようにするクラスター構成
  •  
  • ミラーディスク型クラスター
    HAクラスターを構成する2台のサーバーのローカルディスク間でデータをミラーリングすることにより、フェールオーバー後も同一のデータにアクセスできるようにするクラスター構成

各HAクラスター構成の基本的な動作については、こちらのpopup記事を参照ください。

ミラーディスク型クラスターのミラーリングでは、現用系サーバーで書き込まれたデータをクラスターサーバー間のネットワーク(後述のミラーディスクコネクト)経由で転送し、待機系サーバーのローカルディスクへ書き込むことで、クラスターサーバーが同じデータを保有することが出来ます。

データの格納先として、共有ディスクを必要とせず、クラスターサーバーのローカルディスクを利用できることはミラーディスク型クラスターの特徴の一つです。
ただし、ミラーディスク型クラスターでは、ネットワークを経由したデータの転送とミラーリングの管理情報の書き込みが発生するため、一般に同じスペックの単一サーバー構成よりも書き込み性能が低下します。なお、書き込み性能の低下幅は、HAクラスターを構築する環境の特性(オンプレミス環境やクラウド環境、ディスクやネットワークなどハードウェアの性能)やHAクラスター構成(遠隔クラスターやミラーディスクの数など)に依存するため、それらを踏まえて利用することが重要です。

以降で解説するミラーディスク型クラスターの機能を知ることで、ミラーディスク型クラスターを構築・設計する際のポイントを理解できるようになるでしょう。

2. ミラーディスク型クラスターの基本的な用語・機能の解説

続いて、ミラーディスク型クラスターを構築する際に理解しておきたい機能について解説します。
CLUSTERPROの用語としてもそれぞれをしっかり押さえておきましょう。

ミラーパーティション(クラスタパーティション、データパーティション)

ミラーパーティションはミラーディスク型クラスターを構築する場合に作成するパーティションのことを指します。
  • ミラーパーティション
    ミラーディスクに使用するパーティション(クラスタパーティションとデータパーティション)の総称です。
    クラスターサーバー間のそれぞれのパーティション同士でサイズとドライブ文字/デバイス名を合わせる必要があります。
  • クラスタパーティション
    ミラーディスクリソースの制御に使用する専用パーティションです。
    クラスターサーバー間のミラーリング状況などは、クラスタパーティションを使用してCLUSTERPROが管理します。
    クラスタパーティションはファイルシステムを作成しない(フォーマットしない)で使用します。
  • データパーティション
    ミラーリングするデータを格納するパーティションです。
    現用系サーバーのデータパーティションに書き込まれたデータを、CLUSTERPROが待機系サーバーのデータパーティションにミラーリングします。

ミラーパーティション

ミラーディスクコネクト

ミラーディスクコネクト(MDC)は、ミラーリングするデータを転送するネットワーク経路です。
クラスターサーバー間に複数の通信経路(インタコネクト)が存在する場合、ミラーディスクコネクトを複数設定し、優先度を設定することができます。これにより、優先度の高いミラーディスクコネクトに異常が発生した際にも、優先度の低いミラーディスクコネクトに切り替えることでミラーリングを継続できるようになります。

ミラーリングのモード(同期、非同期)

ミラーリングのモード選択において、同期モードか非同期モードを指定することができます。
  • 同期モード
    リアルタイムでミラーリングするモードです。
    同期モードでは、業務アプリケーションなどからの書き込み要求に対して、現用系/待機系サーバーの両方のローカルディスクに書き込みが完了した後に完了通知を戻します。そのため、クラスターサーバー間のデータは完全に一致することが保証されます。
  • 非同期モード
    ベストエフォートでミラーリングするモードです。
    非同期モードでは、業務アプリケーションなどからの書き込み要求に対して、現用系サーバーのローカルディスク書き込みと、待機系サーバーへの転送データの蓄積が完了したタイミングで完了通知を戻します。待機系サーバーへのデータの転送やローカルディスクへの書き込みは、現用系サーバーの書き込み時に一時的な領域に蓄積したデータに対してバックグラウンドで実行されるため、ネットワーク速度が遅い場合も同期待ちによる書き込み性能低下が発生しません。
    ただし、待機系サーバーへのデータ転送が完了していない状態で、現用系サーバーが電源断などにより異常停止した場合、一時的な領域に蓄積したデータが失われることがあります。

ミラーリングのモード選択では、業務アプリケーションが必要とする書き込み性能や、HAクラスターを構築する環境のディスクI/O性能やネットワーク速度を考慮して、同期モードと非同期モードのどちらにするかを選択します。
なお、CLUSTERPROとしては業務アプリケーションとして必要な書き込み性能が確保できる場合は、基本的に同期モードの使用を推奨しています。

3. ミラーディスク型クラスターの高度な機能の解説

ここからは、より高度な機能について解説します。少し難しいですが、是非ご一読いただき、CLUSTERPROへの理解を深めていただきたいと思います。

履歴ファイル

履歴ファイルは、非同期モードでのミラーリングにおいて、業務アプリケーションなどからの書き込み要求が多い場合に書き込みデータを一時的に記録するためのファイルです。
非同期モードでは、待機系サーバーへ転送や書き込みするデータをメモリ上のキューに一時的に蓄積します。短期間での大量の書き込み等によりキューに蓄積しきれないデータについては、履歴ファイル格納先に指定されたフォルダ/ディレクトリに履歴ファイルとして一時的に蓄積します。さらに、履歴ファイルにも蓄積しきれない(履歴ファイルサイズの上限値を超える)場合は、ミラーブレイク状態(ミラーリングが中断した状態)となります。そのため、書き込みデータ量に応じた履歴ファイルサイズの検討も必要になります。
なお、履歴ファイルは、Windowsではすべてのバージョン、LinuxではCLUSTERPRO X 4.1以降で利用できます。

利用域コピー機能

利用域コピー機能は、ミラーディスクをフルコピーする際に使用される機能です。
ミラーディスクのフルコピーは、初期ミラー構築(現用系サーバーから待機系サーバーに対するディスクのコピー)の時や、最新データを保持したサーバーが不明な状態におけるミラー復帰(異常状態のミラーディスクを正常状態に戻す動作)の時、バックアップデータのリストア後などに実行されます。
フルコピーでは、ミラーディスクの空き領域を含めたすべての領域をコピーすることで、クラスターサーバー間のミラーディスクを同期するため、コピー完了に時間がかかる場合があります。この時、利用域コピー機能が使用可能なファイルシステムの場合、ミラーディスク上のデータの存在する領域だけをコピーするため、データをコピーする時間を短縮することができます。

利用域コピー機能が利用可能なファイルシステム
  • Windows:NTFS
  • Linux:ext2, ext3, ext4, xfs    ※xfsはX 4.3以降で対応

ミラーリング通信経路の暗号化機能

ミラーリング通信経路の暗号化機能は、ミラーディスクコネクトで転送されるデータを暗号化する機能です。
ミラーリング通信経路の暗号化機能を有効にすることでエンドツーエンドの暗号化が可能になるため、遠隔クラスター構成などでパブリックネットワークを利用する場合もセキュアに転送できます。
ミラーリング通信暗号化用の共通鍵ファイルは、Windowsの場合はCLUSTERPROの鍵生成コマンド(clpkeygen)、Linuxの場合はOpenSSLにより生成可能です。
ミラーリング通信経路の暗号化機能は、CLUSTERPRO X 4.3以降で利用できます。

まとめ

今回は、ミラーディスク型クラスターの特徴とミラーディスク型クラスターを構築する際に理解しておきたい機能について解説しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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