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日本電気株式会社

全社の経営改革を支えるグローバルネットワーク
NECグル-プの国内、海外拠点をSDNで統合

業種:
  • 製造・プロセス
業務:
  • 共通業務
  • 設計・開発・製造
  • 生産管理
製品:
  • ネットワーク/SDN
  • ネットワーク/LAN/WAN
  • ソフトウェア/セキュリティ
ソリューション・サービス:
  • SDN
  • ネットワーク/企業ネットワーク
  • セキュリティ

事例の概要

課題背景

  • M&Aやパートナー企業、グループ企業間での共創の機会が増えるなど、ネットワークは、ビジネススピードを強化するための重要なサービスとなっている。
  • コスト削減は企業ICTの恒常的な課題。特にネットワークは、運用管理工数が非常に大きくなっていた。
  • セキュリティは、侵入された後の被害拡大をいかに抑止するかという視点がより重要になっている。

成果

ビジネスのスピードを向上するインフラ

用途ごとに必要なネットワークをすぐに構築できる。新規プロジェクトの立ち上げ、他社との共創、生産ラインの増設や変更などにも、グローバル規模で柔軟に対応できる体制が整いつつある。

グローバルの集中管理でコストを削減

グループ会社や拠点単位で行っていたネットワーク運用を統合。設定変更などを自動化するオーケストレータも導入し、ネットワーク運用にまつわるコストを30%削減できる見込み。

インシデント発生時の被害拡大を防止するセキュリティを実現

セキュリティ製品とSDNが連携して、感染端末を自動的に遮断するなど、インシデント対応の自動化を実現。人手で対処するよりも短時間で対応でき、被害拡大を防ぐ。

導入ソリューション

NECグループの全社グローバルネットワーク

SDNを活用して、国内の主要72拠点をはじめ世界48社、主要76拠点をSDNでつなぎ、全世界11万人のグループ社員が利用する統合ネットワークを構築。2018年度に国内展開をほぼ終え、海外へ展開中。

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事例の詳細

プロジェクトの背景や課題

NEC
経営システム本部長
中田 俊彦

高まるネットワークの重要性。グローバルレベルの全体最適化に向けて

運用管理の効率化をベースとするコストの削減、高まるリスクを抑止するためのセキュリティの強化。これらは、企業ICTが常に解決策を考えなければならない恒常的な課題です。

さらに現在、企業ICTには、刻々と変化する事業環境に迅速に対応するため、デジタル技術による革新をいかに推進するかという新たなテーマも課されています。いわゆるデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みです。

NECは、これらの経営課題と向き合う多くのお客様を日々支援していますが、同時にNEC自身も、製造業として同じ課題やテーマの解決に取り組んでいます。

そのために組織体制や業務プロセスの見直し、システムの集約など、様々な取り組みを進めていますが、グループ全体のネットワークの見直しにも取り組んでいます。

「事業拡大のためのM&A、パートナー企業、あるいはグループ企業間での共創の機会が増え、以前にも増してネットワークは重要なインフラとなっています。その一方、既存のネットワークには、私たち本社の経営システム本部以外に、グローバルの各リージョン、グループ会社などが、それぞれの事情や目的に応じて独自に構築して管理しているものがあり、使用している機器やセキュリティポリシーが異なることから、必要な時に、必要な接続を実現するのに時間がかかるといった課題を抱えていました。もともとは、オフィス、工場、国や地域、グループ会社ごとの事業の違いなどの多様性に配慮して部分最適化してきたからですが、今後NECが目指す姿を考えると、全体最適と集中管理が必要だと判断したのです」とNEC 経営システム本部長の中田 俊彦は話します。

様々なクラウドサービスの活用、働き方改革、IoTを活用したスマートなものづくりや物流の実現など、ビジネスの求めに応じて、今日のネットワークはあらゆるモノやサービスを即座につながなければなりません。つまりネットワーク運用は、ビジネススピードを向上するための重要かつ戦略的なサービスなのです。その要求に応えるために全体最適化、集中管理を目指すことは、当然、恒常的な課題であるコストの削減にもつながります。

プロジェクトの概要

NEC
経営システム本部 マネージャー
田中 夏生

スピード、セキュリティ、コスト、3つの理由でSDNを採用

全体最適化を前提とする全社グローバルネットワークサービスの実現に向けて、NECが採用したのがSDN(Software-Defined Networking)です。経営システム本部主導のもと、SDNを活用して、国内の主要72拠点をはじめ世界48社、主要76拠点を同じネットワークでつなぎ、全世界のグループ社員11万人が利用する統合ネットワークを構築することを決めました。

「SDNの採用を決断したポイントは大きく3つ。(1)柔軟なネットワーク変更によりビジネススピードを加速できること(2)ネットワークとセキュリティ製品を連携させて安全性を強化できること(3)ネットワーク運用の効率化によってコスト削減が期待できることです」と経営システム本部 マネージャーの田中 夏生は言います。

それぞれの理由が指す具体的なシーン、SDNが実現する新しいネットワーク像を整理します。

  • (1)
    柔軟なネットワークによるビジネススピードの加速

    NECは、SDNをオフィスや工場のLANだけでなく、WANやデータセンターにも適用しています。SDNなら、これらのあらゆる場所、あらゆる用途のネットワークを物理的に統合しつつ、「一般業務用」「生産管理用」「モバイル接続用」など、用途に応じた仮想ネットワークを即座に構築することが可能です。

    例えば、新しいプロジェクトが立ち上がり、そのためのネットワークを構築するとなると、本社や拠点、工場、グループ企業、パートナー企業に分散しているメンバーをつなぐために、場合によっては、新たな機器やWAN回線を用意してプロジェクト用のネットワークを構築していました。

    しかし、SDNを活用すれば、GUIを通じて構成変更操作を行うだけで、仮想的に独立した専用のネットワークを即座に用意できます。その結果、従来、1.5カ月~2カ月を要していたプロジェクト用ネットワークを数日~1週間程度で提供できます。

    この物理統合と論理分割は、工場のネットワークにも役立ちます。

    「工場のネットワークは、生産ラインの増設や変更が発生すると、それに対応するための変更が必要になります。各機器に対して1台ずつ設定変更を行わなければならない状況では、非常に時間と工数がかかります。極端な例では、ネットワークの構成をできるだけ変えずに長いLANケーブルを用意して、生産設備の場所だけを移動させるということもありました。しかし、SDNなら、GUIを通じて生産ラインごとの仮想ネットワークをすぐに用意でき、こうした課題を解消できます」(田中)

    加えて、一般的に工場のネットワークは、情報系と生産系という2つのネットワークに分離されています。両者は用途やセキュリティポリシー、遅延に対する許容範囲や考え方、使用している機器の通信プロトコルなどが異なるからですが、SDNを使えば、異なるポリシーなどは堅持したまま、2つのネットワークを物理的に統合することも可能です(図1)。

    近年、生産設備の稼働実勢情報を収集して情報系ネットワーク内のシステムで監視、分析したり、そのためにIP化する生産系設備が増えたりするなど、いわゆるIoT活用が進んでいますが、情報系、生産系を統合でき、トライアル&エラーも行いやすいSDNは、そのための基盤としても最適となります。

    他にも、海外グループ会社からの出張者用、国内社員用、スマートデバイス用、ゲスト用など、用途に応じて細かくセキュリティポリシーを変えながら無線LANサービスを構築、運用するなど、多様な働き方にも対応。SDNの仮想ネットワークは、様々な場面で役立ちます。
    図1 工場におけるSDN適用メリット
    これまで分離することが一般的だった、情報系と生産系のネットワークを物理的に統合することが可能。その上でラインごとのネットワーク構築や、ラインの増設、変更などに柔軟に対応できる。
  • (2)
    ネットワークとセキュリティ製品の連携による安全性の強化

    サイバー攻撃はますます大きな社会問題となっており、多くの企業を悩ませていますが、NECも例外ではありません。日々、たくさんのサイバー攻撃を受けています。

    特に最近増えているのが「未知」のマルウェアを用いた攻撃です。未知のマルウェアは、多くのセキュリティ製品が採用しているパターンマッチングなどで防御することが難しく、侵入されてしまった場合を前提とした対策が、より重要になってきています。

    では、侵入されてしまった場合を前提とした対策とは、侵入を防ぐ対策とどう違うのでしょうか。それは、侵入された後の影響や被害をいかに抑えるかという観点を持つことです。

    そこで有効になるのが、SDNとセキュリティの連携です。

    「SDNと様々なセキュリティ製品は、連携して感染端末を自動的に遮断する、という対応を行えます。感染をアラートメールで知り、遮断のための処置を人手で行う対応では、数十分から場合によっては数日かかっていた時間が、数秒から数十秒にできる、被害の拡大に対する懸念を払拭できます」と田中は説明します(図2)。

    また、管理者のスキルによって対処時間にばらつきがでるという心配もありません。
    図2 セキュリティ自動化で変わるインシデント対応
    脅威の侵入を検知したとしても、人手での対応では、どうしても対処に時間がかかる。一方、対応の自動化を実現しておけば、自動的に感染端末を遮断でき、被害を最小化できる。
  • (3)
    ネットワーク運用の効率化によるコスト削減

    これまで各社、各拠点などの単位で個別に行っていたネットワーク運用を統合し、集中管理することは、ネットワーク運用にまつわる工数とコストの削減につながります。

    「新しい全社ネットワークでは、既存の機器も含めて約7000台の機器を集中管理することになります。これによる運用の効率化によって、トータルで30%のコスト削減を見込んでいます」と中田は話します。

    例えば、無線LANのポリシー変更を国内の全拠点に対して実施する場合、これまでは、1拠点ずつ、各機器に対して設定変更の作業を行っていく必要がありました。「設定作業の工数はもちろん、機器の計画停止などを行うため、各拠点との間で日程調整を行うなど、人間系作業の調整も非常に手間がかかります」と田中は言います(図3)。

    それに対して、ソフトウェアによる集中管理を行えば、設定評価や検証を行った後は、一括で設定を反映させるだけです。

    この集中管理による効率化、迅速化のメリットをさらに高めるため、NECは設定の自動化も実現。そのための集中管理用のオーケストレータも導入しました。

    ネットワークを構成している機器の構成管理データベース、ワークフローを備えており、あらかじめ定型的なネットワーク構築や変更の際の工程を組み込んでおけば、プルダウンで選択するといった簡単な操作で、様々な作業を自動化することができます。NEC製の機器やSDN対応機器に加えて他ベンダーの機器にも対応しており、前述の無線LANのポリシー変更なら、1カ月の作業を1週間程度に短縮できます。「各拠点から寄せられるネットワーク変更依頼も、定型的なものであれば、従来比で3倍のスピードで処理できると試算しています」(田中)。

    このオーケストレータのベースになっているのは「WebSAM Network Automation」という製品。この製品をベースに、NECの全社グローバルネットワークの構成、および目指す集中管理の範囲を想定したシナリオとGUI管理画面を、独自に開発しました。
    zoom拡大する
    図3 SDNによるネットワーク運用の効率化
    設定の一括反映など集中管理によって、ネットワークの運用を大きく効率化することが可能。機器の停止などを伴わないことから、人間系作業の調整も最小で済む。

今後の展望

国内とは事情が異なる海外は段階的に展開を実施

SDN技術を採用した全社グローバルネットワークは、現在、段階的に適用範囲を広げています。既に国内拠点、グループ会社への展開はほぼ完了し、期待どおり、様々な成果につながっています。「運用管理負荷の低減、セキュリティ強化など、期待したとおりの成果を得ています」(田中)。

また現在、海外グループ会社への展開も進めていますが、こちらは国内とは異なるアプローチで進めています。

「全社ネットワークですから、基本的なアーキテクチャ、および集中管理の考え方は、国内も海外も同じです。ただ、海外への展開は国内より慎重に行っています。社会的なインフラの成熟度や調達可能な回線や機器など、地域によって事情が異なる中、プロジェクトをスムーズに進めるため、各リージョンの責任者と、より密接にコミュニケーションを取り、今回のネットワーク統合のビジョンや目的を共有し、理解を深めてもらってから、実際のネットワークの構築を進めるようにしています」と田中は話します。

国内と違い、海外は何かがあっても経営システム本部のメンバーがすぐに駆けつけられるわけではありません。海外への展開は、それを前提にした運用設計も必要になります。

「展開は容易ではありませんが、NECがグローバル競争力を高めていくには絶対に不可欠なインフラです。慎重かつ確実に展開を進めていきます」と中田は強調します。

今回のプロジェクトで得た経験、ノウハウをお客様に還元

このようにNECは、現在、SDNを活用して、グローバル製造業にふさわしいネットワークを構築していますが、この取り組みは、いわばグローバル製造業のリファレンスを模索する取り組みでもあります。今回の経験は、必ずお客様への支援においても役立つと考えています。

具体的なネットワークインテグレーションやオーケストレータ開発だけでなく、運用設計、そして海外展開時のポイントなど、今回のプロジェクトを通じて経営システム本部が得た知見は、お客様向けの事業を展開する部門と共有して、製品、ソリューション、サービスなどに反映させ、NEC自身の取り組みを、多くのお客様のビジネスに還元していく考えです。

企業プロフィール

日本電気株式会社

所在地 〒108-8001 東京都港区芝五丁目7番1号
設 立 1899年(明治32年)7月17日
資本金 3,972億円 (2018年3月末現在)
売上高 単独 1兆5,744億円
連結 2兆8,444億円 (2017年度実績)
従業員数 単独 21,010名
連結 109,390名 (2018年3月末現在)
事業概要 「パブリック事業」「エンタープライズ事業」「テレコムキャリア事業」「システムプラットフォーム事業」を柱として、社会に不可欠なインフラシステム・サービスを高度化する「社会ソリューション事業」に注力。「安全」「安心」「効率」「公平」という価値に基づく、「人と地球にやさしい情報社会」の実現を目指す。
URL https://jpn.nec.com/

日本電気株式会社

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(2018年12月10日)

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