国立大学法人 群馬大学医学部附属病院 様
サーバからクライアント端末までオールフラッシュ(SSD)化。
超高速かつ堅牢な電子カルテシステムを構築し、診療現場での活用を視野に入れたビッグデータ基盤へ
業種 | 医療・ヘルスケア |
業務 | 共通業務 |
---|---|---|---|
製品 | ソフトウェア/情報管理,PCサーバ,ストレージ,ネットワーク/LAN/WAN |
ソリューション・サービス | AI・ビッグデータ,基盤技術/サーバ仮想化/デスクトップ仮想化,ネットワーク/コミュニケーション,ネットワーク/無線LAN |
事例の概要
課題背景
- 業務の専門化・部門化に伴い診療データ全体を俯瞰して把握する一覧表示への要求が高まっている。
- 災害拠点病院として、業務の高い継続性が求められる。
- 院内のスピーディーな診療情報のコミュニケーションが求められる。
- 膨大な診療データの高速集計やリアルタイムな診療分析にも耐えうるシステムパワーが必要。
成果
オールフラッシュ(SSD)基盤の採用によりレスポンスを大幅に向上
実績豊富なミドルウェアとRAID10を組み合わせて事業継続性を確保
電子カルテシステムと連携したスマートフォンを全職員に配布し、検査終了のメール通知などスピーディーな病院運営を実現
オールフラッシュ(SSD)基盤の導入により膨大な過去データの利活用が可能
導入ソリューション
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事例の詳細
導入前の背景や課題
多様化・複雑化する医療ニーズに応えるためシステム全体の刷新が必要
群馬大学医学部附属病院
システム統合センター
群馬大学大学院医学系研究科
情報医療学
センター長 診療教授
斎藤 勇一郎 氏
1949年に開院した群馬大学医学部附属病院様は、731床の病棟と1,700名を超えるスタッフを擁し、1日約2,000名の外来患者様と年間約13,000名の入院患者様の診療を行う北関東有数の拠点病院です。重粒子線照射設備を利用したがん治療をはじめ、数多くの先進医療を実施し、がんや難病に苦しむ患者様に高度先進的な医療を提供しています。また、東日本大震災の経験と教訓を踏まえて2012年に県より災害拠点病院に指定され、地域の安全と安心を守る医療機関としての役割も担っています。
「過去約6年間のデータによると、当院の入院患者様数および外来患者様数は約2割増加していますが、一方で平均在院日数は減少傾向にあります。この背景には、地域社会の高齢化などで医療ニーズが高まっていることに加え、診療ガイドラインの整備やクリニカルパスが浸透したことで標準化が進み、入院日数が減少していることがあります。その結果、病院を訪れる患者様数が増え、業務の多様化・高度化が進み、業務量は増大する一方です。こうした環境変化に対応するには革新的な医療プロセス・ソリューションの導入が必要と判断し、電子カルテや医事会計をはじめとする病院情報管理システムを刷新することを決断しました」と群馬大学医学部附属病院システム統合センター長の斎藤勇一郎氏は、ソリューション導入の背景を説明します。
診療データを集計し一覧表示する際の時間を短縮したい
群馬大学医学部附属病院
システム統合センター
重粒子線医学研究センター
特命病院長補佐
准教授 博士(工学) 医学物理士
鳥飼 幸太 氏
同院の電子カルテシステムは、導入から6年が経過し、データ量の増大により業務への影響が危惧されていました。群馬大学医学部附属病院 システム統合センターの鳥飼幸太氏は次のように述べます。
「医療現場では患者様の状態を適切かつ安全に診断するために、様々な診療データを目的別に収集して一覧表示する必要がありますが、履歴の多い患者様の場合でも短時間で画面を表示したいという要望がありました。電子カルテシステムでは、患者様の診療履歴を記録するためにツリー状のデータ構造が不可避であるため、特定項目での一覧取得には複数テーブルへのランダムアクセスが重なります。この課題をハードウェアを中心としたソリューションの導入によって本質的に解決することが今回のシステム刷新における大きなテーマの一つでした」
万一のシステム障害時にも業務が円滑に継続できるよう可用性を更に高めたい
地域中核病院としては、より高いレベルの業務継続性を追求することも重要です。従来システムでもサーバをクラスタリング構成で冗長化しアクティブ・スタンバイ形式で運用していましたが、障害時にはフェイルオーバーに多少の切り替え時間が発生します。業務継続性を向上させ、かつシステム高速化も同時に実現する方策を模索していました。
また、サーバシステムのメンテナンス時にも従来システムではストレージ領域にHDDを採用しており再起動にどうしても一定の時間が必要なことも課題でした。
院内の情報共有をスピードアップさせたい
同院では医師・看護師・事務員などの職員間連絡にPHSを活用していました。1対1の音声によるコミュニケーションは可能でしたが、正確な情報伝達には文字メディアが不可欠でありながら職員全員に対するシステムとしての連絡能力が不足していました。また、電子カルテシステムの中にしかない緊急性の高い診療データは、これまで電子カルテシステムを閲覧できる端末でしか情報を参照することができませんでした。
選択のポイント
すべての分野でNECの提案が選ばれた理由
同院が目指したのは、これからの医療ニーズに対応でき、次世代において世界標準モデルとなる病院情報管理システムを構築することでした。そのためには、既存のシステム構成を抜本的に見直す必要があると考え、病院情報管理システム(サーバ基盤)、ネットワーク、周辺機器という3つのシステム領域すべてを統合する新たな仕組みを設計しました。
本調達に対して、複数のベンダーがソリューションを提案してきました。多数の提案を検討した結果、同院は3分野すべてにおいてNECグループの提案に魅力を感じていました。「NECは今回のプロジェクトが計画される前から、電子カルテや医事会計システムの保守運用を担当しており、NECの担当者は営業もSEも頻繁に現場へ足を運び、現場レベルでどのような問題が起きているのかをしっかり調査・把握していました。そうした日々の活動が、我々のニーズを満たす提案に結びついたのだと思います」と、鳥飼氏はNECの保守運用体制と提案力を評価します。
システム概要
電子カルテシステムのストレージをオールフラッシュ化して、ディスクのランダムアクセスを高速化
「新システムでは、病院システムの本質的課題であるランダムアクセス高速化を徹底して追求した結果、電子カルテシステムのデータ格納領域である18TBのSANストレージ『iStorage M510』をすべてSSD構成としました。加えて、電子カルテシステムのサーバである『Express5800シリーズ』やクライアント端末の内蔵ストレージ部分も、すべてSSDを採用しています。またこうして準備した高速なストレージ基盤を最大限に活かすため、ネットワーク部分の強化にも力を入れました。
バックエンドであるサーバ同士の接続については、現行の1Gbpsメタルネットワークを10Gbps光ファイバーに増強して伝送速度の高速化を図りました。また、特に高速な処理が求められ、かつ特定の時間に処理が集中する外来などの端末は、サーバと端末を10Gbpsの光ファイバーで直接つなぐFTTDを採用しました」と鳥飼氏は話します。
Oracle RAC及びActiveDataGuard、CLUSTERPRO X、RAID10を導入し可用性を大きく向上
高速化に並び重要テーマとした可用性と業務継続性の強化については、各種実績豊富なソリューションを組み合わせることで実現しました。「従来型のアクティブ・スタンバイ形式によるクラスタリング運用から更に業務継続性を向上させるべく、我々はOracle Databaseのクラスタリング機能RAC(Real Application Clusters)を使ったソリューションを採用しました」と鳥飼氏は話します。また、同じくOracle Databaseの機能としてActiveDataGuardも採用。障害時に切り替わる参照系システムのストレージへリアルタイムな同期が実施されており、万全のバックアップ環境を提供しています。
更に、システムの稼働環境を監視・運用する機構にはNEC 製のミドルウェア「CLUSTERPRO X」が導入され二重化構成に対してより可用性を高める要素が加えられています。「CLUSTERPRO X」では豊富な監視オプションが準備されており、Oracle Databaseの稼働状況等を常時監視し、トラブル発生時の自動的なアラート送信にも役立っています。
今回のシステムでは、それに加えてSSDストレージの高速性・高速復旧性・耐障害性を高める仕組みとしてRAID10構成を採用しました。一般的にはディスク容量を効率的に利用でき、なおかつ障害時のデータ普及の信頼性も高いRAID6を採用するケースが多いと思いますが、同院ではあえてRAID10を採用しています。
「レスポンスという観点で考えるとRAID6には一般論として2つの欠点があります。1つは、データを書き込む際に、パリティ生成の演算処理が必要なこと。もう1つは、復旧時に長時間の再演算処理が必要となるため、レスポンスへの影響が懸念されることです。RAID1の特長により、演算処理なしでダイレクトにデータを書き込むので高速ですし、かつSSDとRAID0の特長により、障害復旧時のレスポンスならびに復旧速度も高速になります」と鳥飼氏はRAID10のメリットを話します。
電子カルテシステムと連携したスマートフォンを全職員に配布
今回同院では、全職員が活用していたPHSの代わりに、スマートフォンを導入しました。スマートフォンは従来高価であることなどから導入が見送られてきましたが、PHSよりも安い価格での導入を実現し、全職員への配布に踏み切りました。このスマートフォン上に、音声、ナースコール、業務アプリの機能を搭載、業務の省力化を図りました。また、電子カルテシステムに搭載されているメール機能(コミュニケート機能)と連携し、緊急性の高い検査結果を通知できる機能を新開発、即座に情報共有が可能になりました。
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導入後の成果
診療記録の一覧表示スピードが大幅に向上
オールフラッシュ(SSD)化、RAID10、10Gbpsネットワークなど、現時点で最高レベルのレスポンスを発揮できる環境を整えた新システム。その効果を電子カルテシステムの機能ごとに計測した結果、一覧表示部分では従来システムと比べて5-12倍、診療のレスポンスで高速化しているとの結果が出ました。これにより、特定患者様の検査結果をいち早く知ることができ、診療のスムーズさが格段に向上しました。
また、今回の調達では電子カルテと連携する部門システムサーバの仮想化に伴い、部門の協力を得て殆どすべての部門システムをファット/シンクライアント端末上で相乗り動作させることや、病棟を中心とした高速かつ安全なノート型無線シングルチャネルUSB起動型シンクライアント、フルHDのデュアルディスプレイに対応したシンクライアント専用端末の導入など、新規デザインコンセプトを掲げて大胆に導入しました。鳥飼氏は強調します。「医療の情報化を進めるうえで、常に重要なことは病院全体のスループットを考えた、高速なシステム設計を行う事です」
これらさまざまな新しいソリューションの導入ができたのも、今回刷新された高速なプラットフォームが礎としてあるためです。
それに加え、Oracle RACを核とした耐障害対策の導入により、障害で片方のサーバが停止しても、瞬時にサーバを切り替えて業務を継続できるようになり、災害対策病院としての機能も向上させることができました。
「医療の世界は、医療スタッフが患者様の生命と安全確保に安心して集中できる環境を提供することが何よりの価値と考えます。これまでの現場経験から、システムのレスポンスや情報伝達手段の向上が医療現場の環境を向上させる効果があります」(鳥飼氏)
今後の展望
高速化されたプラットフォームをベースに臨床現場でのビッグデータ活用を推進
今後の展望について斎藤氏は、「今回構築したシステムを基盤として、地域の医療機関との連携を深めていきたいと考えています。現在、地域の病院・診療所から当院への紹介率は約90%、逆紹介率は約80%と非常に高い数値となっていますので、今後地元の医師会が構築するポータルシステムと当院のシステムの連携をはかり、患者様の情報を容易に共有できる環境を構築したいと考えています」と話します。
鳥飼氏は、今回新たに構築したシステムを発展的に活用し、臨床現場を支援する戦略的な近未来ソリューションへ発展させる構想を話してくれました。
「近年、医療の世界でビッグデータが注目を集めています。膨大な診療データを活用し、類似症例を見つけ出し、早期に疾病を特定できれば、医療は大きく進歩します。しかし、私は昨今いわれているビッグデータの議論には、本質的に問題があると思っています。最大の問題は処理スピードです。たとえば、当院では10年間の診療データは約10TBになりますが、これをテキストベースで抽出して分析するには少なくとも1週間はかかってしまいます。データ量が増えればさらに時間がかかりますから、研究用ならばまだしも臨床用としては実用に耐えません。そのボトルネックは、結局ディスクアクセスにあるのです。今回、我々がオールフラッシュ(SSD)化にこだわった本当の理由は、こうした次世代の医療環境を実現するためのインフラ整備を見据えてのことです。
また、ビッグデータ分野では分散型データベースのHadoopなども注目されていますが、この場合のボトルネックはネットワークです。たとえデータベースを分散して処理能力を上げても、データを集約するネットワークが遅ければ、結果をすぐに入手できないからです。我々が今回のプロジェクトで院内ネットワークを、すべて10Gbpsに拡張した理由はここにあります。さらに、Hadoopでは個々の分散データベースの読み書き速度もボトルネックになります。これについても、我々は今回600台のファットクライアント端末すべてにSSDを搭載したので、これをリソースにすれば実用速度での分散コンピューティングが、新たに解析用の高価なコンピューティングサーバを購入することなく、診療システムによって可能になると考えています」
さらに同院では、NECが開発した機械学習アルゴリズムも導入しました。これによりインテリジェントかつ高速に候補やヒントを導き出せる環境の構築を目指しています。
「もちろん、治療方針など最終的な判断は、医師と患者様がコミュニケーションを取りながら決めることですが、そこに至るまでの道筋は機械的インテリジェンスを活用すればより診療精度を高められると思っております。システム開発を通じ、超高齢化と医療リソース需要の増大に対応する、省力化・自動化に取り組むことが我々の社会的使命だと考えています」
と鳥飼氏は、次世代医療システム構築に向けた展望を話してくれました。
NEC担当者の声
将来に向けてビッグデータ活用にも耐えうるプラットフォームを構築
NEC医療ソリューション事業部
大学病院ソリューション部
主任 常塚 創
電子カルテシステムを稼働させるサーバ基盤に対して、部分的にSSDをご採用いただくケースは数多くありますが、群馬大学病院様はサーバ、ストレージ、クライアント端末の全領域でSSDを整備する提案をご採用いただきました。
また、グループ会社のNECネッツエスアイ株式会社にてネットワーク導入を担当。センタースイッチからクライアント端末まで直接光ケーブルで接続するFTTDをご採用いただきました。
これにより、これまで病院情報システムによって蓄積された膨大な診療データを高速に扱うことができ、診療データを最大限に活かしたさまざまな付加価値をOneNECとしてご提供することができました。
群馬大学病院様では、今後これらの強固なプラットフォームをもとに過去の膨大な診療データから未来の診療に役立てるビッグデータの活用を推し進めていかれます。
NECは、独自の高度なビッグデータ分析技術を有しています。今後は電子カルテの設計ノウハウとこれら分析技術を駆使しながら、診療現場でのデータ活用という新たな付加価値を病院様へ提案していきたいと考えています。
お客様プロフィール
国立大学法人 群馬大学医学部附属病院
所在地 | 群馬県前橋市昭和町3-39-22 |
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開院 | 1949年 | |
病症数 | 731床 | |
概要 | 1949年に開院し約70年の歴史を誇る群馬大学医学部附属病院。731床の病棟と1,700名を超えるスタッフを擁し、一日2,000名の外来患者様と年間13,000人の入院患者様の診療を行う北関東有数の拠点病院。大学病院として唯一の総合的な重粒子線がん治療設備を有する先進的医療機関である。また、県から災害拠点病院として指定されるとともに、臨床研修中核病院として地域医療連携にも大きな貢献を果たしている。 | |
URL | http://hospital.med.gunma-u.ac.jp/ |
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(2015年11月6日)
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