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株式会社横浜銀行様


AIを活用した分析基盤により、
人間が見落としていた潜在顧客を発見
- 業種:
-
- 金融機関
- 業務:
-
- マーケティング
- 営業・販売
- 製品:
-
- ソフトウェア/その他
- ソリューション・サービス:
-
- AI・ビッグデータ
事例の概要
課題背景
- 銀行間競争が激化する中、ICTや金融テクノロジーとビッグデータを融合し、マーケティングや金融サービスの強化を図る必要がある
- ビッグデータの活用に関する取り組みは1997年より進めており、マーケティング分野が中心であったデータ活用人材の活躍分野は近年になって広がっている。それに伴い、データ分析・モデル作成などのプロセスに多くの業務工数がかかっている
成果
人間が見落としていた潜在顧客を発見
NECの深層学習技術「RAPID機械学習」を導入することにより、データ活用人材による既存のターゲティングモデルとは異なる顧客層から、金融ニーズのある顧客を既存モデルと同等の水準で発見できるようになった
データ活用人材の業務工数を削減
既存モデルの作成時に多くの時間を要してきた工程を「RAPID機械学習」が代替するなど、データ活用人材の業務負担を深層学習技術によって軽減できる道筋が示された
導入ソリューション

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事例の詳細
導入前の背景や課題

総合企画部
マーケティンググループ
グループ長
石川 久雄 氏
銀行間競争が激化する中、深層学習技術を活用した
マーケティング強化が課題に
横浜銀行様は神奈川県と東京都を地盤とした地銀最大手の銀行です。「当行の営業エリアは主に大都市圏であり、競合となる銀行も多く存在します。したがって、お客さまに横浜銀行を選んでいただく仕組みづくりが重要になります。これまでにも、行内の蓄積データを用いたEBM※1などの手法を駆使し、お客さまのライフステージを踏まえた金融サービスの提供に力を入れてきました」。総合企画部 マーケティンググループ グループ長の石川久雄氏は、同行のデータを活用した営業戦略の基本姿勢をこのように話します。
2013年には、地銀6行(現在は10行)共同によるデータベースシステム「共同MCIF※2システム」の利用を開始しました。また、同システムのユーザ行とグループ内シンクタンクである浜銀総合研究所による「ナレッジラボ」を通じて、データを活用できる人材の育成とノウハウの共有を進めています。
「これまで、行内で蓄積してきたお客さまに関するビッグデータの分析やモデル構築などを、データ活用人材によって実施してきました。一方で、2014年ごろからフィンテックと総称される、人工知能などの情報テクノロジーを原動力とした新たな金融サービスが急速に台頭してきました。当行グループ内でも中期経営計画の中で情報テクノロジーの活用による金融サービスの提供を基本戦略の1つとしていましたので、私たちはまず、第3世代の人工知能であるディープラーニング技術によるデータ分析とマーケティングへの活用を検討しました」(石川氏)。このような経緯から、横浜銀行様は2016年6月、浜銀総合研究所およびNECと共同で、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」(エヌイーシーザワイズ)※3の1つであるディープラーニング技術を搭載したソフトウェア「NEC Advanced Analytics - RAPID機械学習」を活用し、データベースマーケティング分野での実証実験に着手しました。
選択のポイント

総合企画部
マーケティンググループ
副調査役
松下 伴理 氏
実証実験で得られた明確な成果と、
軽量性・高速性、サポート体制などを評価
この実証実験では、過去の来店実績やATM利用履歴が十分に把握できている約30万人以上の顧客データから、カードローンの潜在ニーズがあると見られる顧客の抽出を行いました。抽出モデルの構築には、2つの分析手法を活用しています。1つは、浜銀総合研究所の研究員が長年“職人技”として培ってきたデータ分析のノウハウを活用して構築した従来型のモデル。もう1つは、RAPID機械学習による新たなモデルです。同グループ 副調査役の松下伴理氏は、「私たちやシンクタンクの研究員が行ってきた業務の代替を人工知能で可能かどうかを、両モデルを比較することで検証しました」と話します。実験により、以下の結果が得られました。
- カードローンの潜在ニーズがある顧客の抽出精度は、両モデルとも同水準だった。
- 両モデルが抽出した上位1万数千人の顧客のうち、重複した顧客は4割程度。つまりRAPID機械学習は、従来型モデルで見過ごしていた潜在顧客を新たに6割も発掘できた。
- RAPID機械学習のモデル構築時には、専門家(浜銀総合研究所の研究員)がモデル構築工程全体のおよそ60%の工数を割いて作成する「合成変数※4」を利用しないことで、抽出精度が高まった。
軽量性:「金融機関において、顧客データを社外のクラウド事業者などに持ち出すことは前例が少なく、セキュリティ面の確認も含めた煩雑な手続きが必要です。一方、RAPID機械学習は大量のマシンリソースを必要としないため、煩雑な手続きなしにオンプレミスで導入できます」(石川氏)
高速性:「実証実験を行った浜銀総合研究所の研究員は、RAPID機械学習の計算速度※5にも着目し、数百万人規模のデータ分析やモデル構築にも活用できるものと、高く評価していました」(石川氏)
将来性と、サポート体制:「ディープラーニングは、進化の途上にある技術。つまり将来性があり、今後は画像や音声など非構造データの分析にも活用できると考えています。中長期での運用を踏まえると、こうした進歩していく分野において、技術的な支援や製品保守をはじめ、NECのサポート体制にも安心感がありました」(石川氏)
AI開発者への評価:「NECの開発者が、最先端技術である人工知能を、私たち銀行員に理解しやすい言葉で説明された点は他のベンダーではないことで、好感を持ちました」(松下氏)。「実証実験の打ち合わせなどで、開発者の熱意が伝わってきました。『こんな人が活躍している会社と、一緒に仕事がしたい』と、率直に思いました」(石川氏)
導入後の成果

総合企画部
マーケティンググループ
副調査役
岡村 駿 氏
他の金融商品においても、
成約率が向上
横浜銀行様では現在、カードローンの新規勧誘DMを送付する実務で、RAPID機械学習を活用しています。「RAPID機械学習による多面的な分析からは、“この金融商品はこういったお客さまにニーズがあるだろう”という、人間が抱きがちな先入観を排した結果が得られています。その結果、従来では資金ニーズが想定されていなかったお客さまが抽出されていますが、実証実験の数十倍の顧客を抽出した場合でも、DM送付先の申込率は従来型のモデルで発見した顧客と同水準でした」(松下氏)
これにより、これまでデータ活用による顧客理解が十分でなかった顧客であっても、従来の取り組みと同水準でニーズを検知できることが、実ビジネスにおいても証明されました。「申込率を維持したまま、新たな顧客層を開拓できており、担当部署からはとても感謝されています」と石川氏は述べます。
併せて同行では、営業店の行員が訪問すべき顧客のリストを作成するのにもRAPID機械学習を活用しています。「従来は、お客さまのご預金の残高など、ニーズを想定することが容易な変数を中心に、ご訪問する優先順位を決めていました。RAPID機械学習を利用することで、これまで当行の商品を保有されていないものの、潜在ニーズが高いと考えられるお客さまを発見できるなど、お客さまのニーズ検知がより高度に実施できるようになりました。従来モデルが見落としていた新しいセグメントの発見はもちろん、RAPID機械学習によるモデルと従来モデルの双方が重複して抽出したお客さまは特に成約率が高まるなど、お客さまのニーズをさらに高度に検知するための知見も得られています。」と、同グループ副調査役の岡村駿氏は説明します。
今後の取り組みについて、松下氏は「深層学習技術のマーケティングへの活用をさらに進めていきますが、金融サービスによる顧客課題の解決にも結び付けていきたいですね。たとえばお客さまの金融行動の変化の予兆を事前に検知し、適切なお知らせをすることで、お客さまの他の行動変化を促すような活用を検討しています」と話します。
最後に、石川氏は次のように展望を述べます。「お客さまのライフステージの変化に応じた、より効果的な商品提案はもちろん、人的負担の大きい業務の効率化など、マーケティング用途以外の分野にも活用を広げていきたいです」
- ※1Event Based Marketing。蓄積データを基に、顧客に発生するライフイベントなどを検知し、検知したイベントをトリガーに、最適なタイミングで最適な商品を顧客にご提案していくマーケティング手法。
- ※2Marketing Customer Information File。
- ※3NECの最先端AI技術群の名称。"the WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めている。
- ※4蓄積したデータの中に、多数の分析軸項目があり、それらが互いに相関を持っている場合、その重なり合っている部分の情報を数理的に合成し、できるだけ多くの情報を保存しながら全体を簡潔に説明するための変数。
- ※5NEC社内で行った試験では、一般的なディープラーニングツールのおよそ10倍に相当するベンチマークを示しています。
- ※所属は2018.3末時点のものです

お客様プロフィール
株式会社横浜銀行
本店所在地 | 神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目1番1号 |
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創 立 | 1920年12月 |
総 資 産 | 16兆3,357億円(連結) |
従業員数 | 4,840人 (2017年9月30日現在) |
事業内容 | 普通銀行業務預金・貸出・為替・投資型商品の販売業務、金融商品仲介、相続関連業務、投資銀行業務など多様化するニーズに対する幅広い金融商品・サービスの提供。 |
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(2018年6月6日)
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