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新規事業開発における「撤退」の判断基準は「AI」による客観的なスコアリングやKPI達成率が有効

事業計画・審査・推進 戦略・組織・マネジメント

新規事業を立ち上げ、勢いよく市場に投入した後、最も難しい意思決定が「撤退」の判断です。サンクコスト(埋没費用)にとらわれず、損失が拡大する前に方向転換や撤退を決めるためには、事前のルール設計が不可欠です。

今回は、感情論を排し、AIによる客観的なスコアリングやKPI達成率に基づいて、客観的に事業の撤退を判断する仕組みを解説します。

目次

1「止める」と言えない…ズルズル続くゾンビ事業のコスト

2始める前に「いつ、どの数値に達しなければ止めるか」を握る勇気を持つことが重要

3サンクコストに縛られないための、第三者(AI)による客観的な評価の有効性

4撤退は敗北ではない。リソースを次なる「有望案件」へシフトする攻めの判断

5まとめ

「止める」と言えない…ズルズル続くゾンビ事業のコスト

このようなケースをイメージしてください。

新規事業が、社内の厳しい承認を得た後にようやくスタートしました。製品の開発には総計8億円投資しています。

しかし、市場環境が変化し、顧客が当初の想定を下回り、需要予測を再精査した結果、売り上げは3億円程度にとどまることが判明しました。このまま市場投入を続けると、開発コストを回収できない見通しです。

この8億円はサンクコスト(埋没費用)と呼びますが、これまで苦労して市場投入にまでこぎつけた努力や、労力への思いなどから、「サンクコストを無駄にするのはもったいない。もしかすると、急に風向きが変わり、費用を回収できる見込みが出るかもしれないから少し様子を見よう」などと考えてしまいがちです。

このように撤退の意思決定を先送りにして、ズルズルとコストを投入し続けることで、ゾンビ事業が残ってしまうケースは少なくありません。第三者視点では、口を揃えて「すぐにでも撤退するべき」と言うでしょう。

しかし、当事者としては、容易に決断できないものです。

始める前に「いつ、どの数値に達しなければ止めるか」を握る勇気を持つことが重要

新規事業の撤退をなかなか決断できない原因の一つに、始める前に止める指標を設けていないことがあります。

「いつまでに、この数値に達しなければ撤退する」という基準をあらかじめ用意しておくことで、事業が走り出してからの「やめにくい」状況下でも「撤退する」という選択肢を冷静に検討できるようになります。

新規事業開発の際に、撤退の指標を設定することは勇気のいることです。しかし、事業を始めた後の心理を考え、事前に決めておくことで、将来の自社を守ることに繋がります。

撤退条件の計画

撤退条件は、あらかじめ事業計画に盛り込んでおく必要があります。いつまでに、どのような指標を達成すべきかに加え、許容できる累積損失額、最低限度の顧客数や売上額などを設定します。これらを数値的に明確にしておくことが重要です。

四半期ごとのレビュー、段階的な投資で撤退判断のタイミングを設定

撤退条件の指標を設定するとともに、あらかじめ「いつ」撤退判断を行うかのタイミングも設定しておくことが重要です。

例)

  • 四半期ごとにレビューを行い、継続・撤退の判断を行う
  • 投資額を段階的に投資する計画を立て、各フェーズで指標を下回った場合は、その後の追加投資を行わないと決める。

このように判断するタイミングを仕組み化することで、判断をせざるを得ない状況を作り出すことがポイントです。

サンクコストに縛られないための、第三者(AI)による客観的な評価の有効性

新規事業の撤退判断をする際には、「もったいない」「担当者の顔を潰せない」といった感情論に左右されるべきではありません。

重要なのは、「客観指標」に基づいて体系的に一貫した判断を行うことです。

では、客観指標はどのように決めれば良いのでしょうか。有効な一つの手段が、事業企画立案の初期段階からAI(人工知能)を活用することです。

例えば、事業をスタートする前の企画書の段階で、AIによる客観的な診断スコアを算出しておきます。そして、四半期ごとのレビュー時に再度状況を診断し、「当初設定したターゲットや優位性が崩れ、AIの評価スコアが基準を下回った場合は撤退(またはピボット)を検討する」といったルールを事前に設けるのです。

AIという第三者による客観的な評価を間に挟むことで、社内の人間関係に軋轢を生むことなく、合理的で公平な基準に基づく撤退判断が可能になります。これは結果的に、組織の事業開発サイクルを健全に回すことに繋がります。

AIによる撤退判断の活用ポイント

ここでは、AIを活用して撤退判断を行う際の主なポイントをご紹介します。

  • 論理の抜け漏れを予防する
    AIが得意なのは、多角的かつ網羅的な分析です。事業撤退における判断軸は多岐に渡ります。例えば、コストだけでなく、顧客や契約状況、在庫、システム、評判、従業員のフィードバック、取引先や投資家の意見など複数の視点で横断的な評価が必要です。これらをAI活用により網羅的かつ客観的に判断することで、抜け漏れのないスコアリングが可能になります。
  • シミュレーションさせる
    AIはシミュレーションも得意です。例えば、このまま撤退せずに事業を続けた場合のコストや損失はどのくらいなのか、また「すぐに撤退した場合」「3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に撤退した場合」など、それぞれに損失を試算できます。あらゆる時期を検討し、最も損失の少ない時期を見つけ出すことが可能になります。
  • 撤退判断の議論を建設的に進める
    撤退判断の社内の議論は、感情を排して冷静に行うことが重要です。AIの診断結果は冷静な議論を促進させてくれます。網羅的で合理的なデータが議論を建設的な方向に向かわせ、合意形成に繋がるでしょう。

撤退は敗北ではない。リソースを次なる「有望案件」へシフトする攻めの判断

撤退経験は、次の事業開発へと生かすことができます。撤退を敗北にしないための攻めの判断も重要になるでしょう。撤退後、次の事業開発へ生かすポイントをご紹介します。

失敗要因の分析と市場調査の強化

まずは、撤退後は撤退に至った要因を徹底的に分析して振り返ります。撤退したということは、当初設定した仮説に何らかのズレや誤りがあったことを意味します。そのため、仮説のどの部分が間違っていたのかを深く検証することが重要です。AIに分析させることで、自社特有の「失敗の傾向」を可視化することも一案です。

また、市場調査が不十分であった可能性もあります。どの点が不足していたのかについても、AIに分析させることができます。

分析した後は、再発防止のノウハウとして社内共有することが欠かせません。

撤退判断のプロセスの評価

社内で失敗を単なる失敗と捉えない文化の醸成も重要です。例えば人事評価において、撤退判断を行ったリーダーやチームに対して撤退判断のプロセス自体を評価するなどの仕組みを構築することが挙げられます。

失敗プロジェクトのリーダーの再起用

新たなプロジェクトにおいて、失敗した経験のある方をリーダーに再起用するケースも見られます。失敗した経験を持つからこそ、次は失敗しないという視点や判断力を持っているためです。組織として失敗を糧にすることで、次なるプロジェクトの成功確率を高めることができます。

まとめ

新規事業の撤退は、当事者にとって心理的負担の大きい経験です。しかし、あらかじめルールを作っておき、スコアリングやKPI設定を行うことで、有効な撤退判断を行うことができます。AIの活用により、第三者の視点を組み込んだ判断プロセスを構築でき、新規事業開発をより健全なサイクルで回していくことができるでしょう。

NECでは、新規事業開発における取り組みを支援する、「NEC企画書AI診断サービス」を提供しています。

事業立ち上げの初期段階から、NECの独自評価軸(約300項目)によるAIの客観的なスコアをゲート審査の基準として組み込むことで、属人的な評価を排除できます。

「AIのスコアが基準を下回ったから撤退する」という透明性の高いルールが、結果的に組織と担当者を守り、健全な事業開発サイクルを実現します。

NEC独自のセキュアな環境で提供するため、機密性の高い情報の取扱いも可能です。詳細は、サービスページをご覧ください。

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