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すでに多くの企業・組織が使っている!?
事例で見えてきたAI活用の勝ちパターンとは?

~NEC the WISE がもたらす社会・ビジネスの未来~

いかに人工知能(以下、AI)を有効活用するか――。これがビジネスの大きなテーマとなりつつあります。なぜ古くから存在するAIがあらためて注目されているのでしょうか。それは飛躍的な技術革新によって、これまで「数学の研究分野の1つ」として扱われ、研究フェーズだったAIが、「実ビジネスにどう生かすか」という実用フェーズに移行しつつあるからです。

NEC
ビッグデータ戦略本部兼
データサイエンス研究所
エキスパート
山本 康高

例えばある職業仲介事業者では、企業と人材のマッチング支援に役立てています。経歴や適性を分析することで、求職者に対してはその人に合った企業を推薦し、企業に対してはニーズに合ったハイクラス人材を紹介することが可能になりました。

またある大手飲料メーカーでは新商品の需要予測に役立てています。同社では出荷データと実販データなどを基に、新製品と過去の製品の動向をリアルタイムに比較し、製造量の調整を行っています。

ただし、このような成功事例がある一方で、「自社のビジネスにAIを適用できるのか」「AIをどう活用したらよいのか」に悩む企業も少なくありません。

NECは約半世紀以上前からAI技術の研究開発に取り組み、理論と実践の両輪でこうしたお客さまの課題解決に取り組んできました。事業ビジョン・コンセプトの企画から、AI活用シナリオの検討とアクションプランの策定などをトータルに支援するコンサルティングサービスや組織横断的な透明性の高い統合データ環境の実現をサポートするデータ基盤などを用意しています。

iEXPO KANSAI 2016「『事例で語る』IoTとAIが加速するビッグデータによる新たな価値創造」セミナー内容より、AIを実際にビジネスで活用した事例と成果、さらにはそれを実現したNECのAI技術やソリューションについてご紹介します。

多様なAI技術を網羅した「NEC the WISE」
人とAIが協調する社会の実現を目指す

ビッグデータを活用する上で、欠かせない技術要素の1つが人工知能(AI)です。AIは人の知的活動をコンピュータ化した技術の総称で、近年では、人の作業を圧倒的に効率化する事例が出始めています。NECは、約半世紀以上前からAI技術の研究開発に取り組み、理論と実践の両輪でお客さまの課題解決に取り組んできました。その取り組みは、今日、外部機関から「No.1」「オンリーワン」と評価されるAI技術群の蓄積につながっています(※)。2016年7月にはこれら最先端のAI技術群を体系的にまとめ、「NEC the WISE」というブランド名称を発表しています(図版1)。

  • 米国国立標準技術研究所ベンチマークテストやNEC調べによる
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図版1 「NEC the WISE」の技術ポートフォリオ
ビッグデータの価値を高める世界トップクラスのAI技術を豊富に保有する。データを認識・理解し、分析を行い、それを制御・誘導につなげるプロセスで、お客さまのビジネス変革を支援する

"The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で課題解決を図るというNECの想いが込められています。

「NEC the WISE」を構成するAI技術は、既に多方面のソリューションに適用され、多くの成果を上げています。その中から今回は、最先端のAIが、どのようなお客さまの課題に適用されうるのかを、事例に基づいて紹介します。

データを自動認識するRAPID機械学習により
高精度な人材マッチングモデルを実現

1つめが「RAPID機械学習」の事例です。AIブームの火付け役の一つにディープラーニング(深層学習)があります。従来の機械学習では、機械が分類や予測をする際に、注視すべき情報を人が決めていました。これを「特徴量」と言い、適切な特徴量を設計することで機械学習の精度が向上します。ディープラーニングは、大量の正解データに基づいて、機械が特徴量を自動設計する点がポイントであり、正解/不正解がはっきりしていて、曖昧性のないような問題では、人を超える精度を出せる事例が報告されています。「RAPID機械学習」は、そのディープラーニングを省メモリかつ高速に動作させることができます。これにより、例えば、秘匿性が高く閉じた環境に置いてあるようなデータに対しても、潤沢な計算環境を用意することなくディープラーニングを適用できます。事例を紹介しましょう。

ある職業仲介事業者は、この技術を活用し、企業と人材のマッチング支援に役立てています。エントリーシートの情報をもとに経歴や適性を分析することで、求職者に対してはその人に合った企業を推薦し、企業に対してはニーズに合ったハイクラス人材を紹介することが可能になりました(図版2)。

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図版2 RAPID機械学習を活用した人材マッチングモデル
企業が求める人材情報と求職者のエントリーシートの情報を分析し、適性などを把握する。求職者にはその人に合った企業を推薦し、企業はニーズにマッチした人材を獲得しやすくなる。求職者、求人企業双方のミスマッチを減らし、業務効率化と成約率の向上を実現した

求職者10万人と求人企業10万社とのマッチングを行ったケースでは、大きな効果を発揮しました。従来方式では9000属性のパラメータ分析に対し不正解率は29%ありましたが、RAPID機械学習は倍以上のパラメータ数にあたる21万属性の分析により不正解率は半分以下の14%。分析に要するシステムのメモリ量も従来は2200メガバイト必要だったのに対し、わずか32メガバイト。処理時間に至っては888秒かかっていたものが、わずか4秒で完了しています。つまり求職者、企業双方にとって最適なマッチングをより短時間で行えるようになり、業務効率化と成約率の向上を実現し、ビジネス拡大につながっています。

この技術を検品作業に活用する企業もあります。検品対象の画像と不良品候補の画像を学習させ、従来は検品担当者が人的に行っていた良品・不良品の判別作業の自動化を進めているのです。高速かつ高精度なマッチングを実現できるメリットを生かせば、企業内の人事業務や流通の最適化、防犯対策などにも威力を発揮します。

以上のように、判定基準に曖昧性が無く、大量にデータがあるような課題に対して、お客さまの計算環境でも高度なマッチングや判定が行えるようになってきています。

90%超の精度で新商品の需要予測に成功
チェーン全体の売上が約11%向上した企業も

2つめが「異種混合学習技術」の事例です。異種混合学習技術は、多種多様なデータに混在するデータ同士の関連性を自動で解析し、特定の規則性を見つけ出す技術です。これにより、時系列の数値データに基づいて、将来の数値を予測する、といったことが可能になります。前述したディープラーニングのような精度重視の技術は、機械が何故そう予測したのかが分からない点で「ブラックボックス型」と言えます。一方、異種混合学習技術は結果を導き出す「式」や「条件」を自動探索し、それらを見える化することができる「ホワイトボックス型」である点が特長です。すなわち「当たりやすさ」と「わかりやすさ」を同時に実現することができます(図版3)。このような性質は、特に、機械の判断と人のノウハウの双方を生かしたいような場面で生きてきます。

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図版3 異種混合学習技術の特長
通常の機械学習は人手による試行錯誤が必要で、予測を導き出せても、わかるのは結果だけ。そのプロセスはブラックボックスになっている。それに対し、異種混合学習技術はホワイトボックス型。結果のもととなる「式」や「条件」など根拠まで知ることができる

例えば、ある大手飲料メーカーでは新商品の需要予測に役立てています。定番商品は過去のデータに基づいた製造量の調整がしやすいものの、新製品は参考になるデータが少ないため予測が難しい。そこで同社は異種混合学習技術を活用し、出荷データと実販データなどを基に、新製品と過去の製品の動向をリアルタイムに比較することで、製造量の調整を行いました。その結果、予測値と実績値との乖離はほぼ10%以内。すなわち、90%超の高精度で新製品の需要予測が可能になったのです。機械がどういう情報に基づいて予測値を出しているかが分かるため、需要予測が難しい新商品でも欠品や過剰在庫の削減が可能になり、より戦略的な商品展開につながるものと期待されています。

また、ある企業は保守部品の需要予測にこの技術を活用し、部品在庫の適正化を実現しています。「なぜそれだけの在庫が必要なのか」という根拠までわかるため、在庫計画もより立てやすくなったといいます。

以上のように、ただ暗黙的に機械の出力を信じるのではなく、機械の予測の理由を知り、人と機械が協調しながら意思決定をしていく、というAIの適用事例も増えてきています。

そして3つめが、「予測型意思決定最適化技術」を用いた事例です。これは異種混合学習技術を用いた予測結果に基づき、従来は人が行っていた戦略や計画の立案といった、より高度な判断まで自動で行う技術です(図版4)。

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図版4 予測型意思決定最適化技術の特長
機械学習で生成される多数の予測式を累積し、その誤差を考慮しつつ、予測式の組み合わせを高速探索する。これにより、全体最適を図る高度な戦略や計画の立案を自動化し、低リスクかつ短期間で効果の創出が可能になる

予測結果は、人の行動に影響を与えます。例えば、ある商品Aが明日何個売れるかを予測したとします。商品Aの在庫が多く残っている場合、商品Aをもっと売るために値段を下げるといった行動をとる可能性があります。しかし、商品Aが売れることで、別の商品BやCの売れ行きが変化することが想定され、結果としてトータルの売上が減少するといったことが生じる可能性があります。すなわち、精度の高い予測ができるようになった次は、予測結果に基づいて売上が最大化される価格を決定し、全体最適を行う技術が必要になってくるのです。これは通常、莫大な可能性を検討することになるのですが、予測型意思決定最適化技術は従来技術で数時間から数日かかっていた戦略策定を1秒待たずに行うことを可能にします。

例えば、プロモーションを打つ場合でも「クーポンを配るのか」それとも「割引するのか」という選択は悩ましいところです。ある商品は売れても、全体の売上アップにつながるとは限らないからです。しかし、この技術を使えば、全体の売上アップという目標に対して、クーポンなのか割引なのか、あるいはその両方を組み合わせた方法がいいのかを瞬時に判断・提案してくれます。

ある小売りチェーンは予測型意思決定最適化技術の活用により、欠品や廃棄のない発注や、よりよい価格戦略を実現し、チェーンストア全体の売上を約11%アップさせることに成功しました。全体最適に向けた施策を即座に立案できるメリットを生かせば、エネルギーの需要予測、道路交通の渋滞緩和などにも大きな効果が期待できます。

以上のように、予測に基づき需要や人の行動が変わり、全体最適を実現する施策の立案が難しい場面にも、AI技術の適用の可能性が広がってきています。

単語ではなく文章の意味を理解するAIも
お客さまの声を分析し効果的な改善施策を実現

最後に「テキスト含意認識技術」の事例です。これまでの技術と少し毛色が異なりますが、AIが目指す世界の一つが、機械が自律的に思考し、言葉により人とコミュニケーションをとる世界です。現状、世界的に見てもまだ未来の話ですが、NECでは、その要素技術となるテキスト含意認識技術を強化してきました。テキスト含意認識とは、一方の文が他方の文の意味を含むかどうかを判定する技術で、従来の単語の一致・不一致を中心した分析ではなく、文の構造も考慮し認識することを特長としています。異なる単語で同じ意味が表現されていたり、同じ単語で異なる意味が表現されていたりする場合も、文意を正しく認識し、情報を迅速かつ正確に分類・整理します。

ある企業は、お客さまからコンタクトセンターに寄せられる商品の不具合分析に、この技術を活用しています。具体的にはお客さまから寄せられる意見を、音声認識技術も組み合わせ、お客さまテキストデータとして自動で蓄積。膨大なテキストデータからどんな意見が何件あるのかを整理・分類することで、効果的な改善施策を打つための傾向分析を可能にします(図版5)。

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図版5 テキスト含意認識技術の活用イメージ
コンタクトセンターなどに寄せられるお客さまの声を高速かつ高精度に収集・分類する。音声認識技術との組み合わせにより、電話の声も自動でテキスト化することが可能だ。集計に要する手間と時間を大幅に軽減し、改善施策のPDCAサイクルを高速に回していくことができる

客観的な集計により、改善施策による意見の変化も分析できるため、現状把握や施策の効果測定を行いやすくなり、改善施策のPDCAサイクルの高速化が可能になっています。また、アフターコールワークの時間も大幅に削減されました。

以上のように、文に含まれる意味から、非構造のデータを構造化し、分析や検索に役立てるといった場面にもAI技術の適用の可能性が広がってきています。

価値創造プロセス「DIVA」モデルをベースに
効果の最大化を図るソリューションを提供

これまで4つの適用パターンの主要技術とその事例を紹介しましたが、データから価値を生み出すには、価値を最大化するための考え方「フレームワーク」が重要になります。

まず取り組むべきは、事業目的を明確に設定すること。その達成のためにどんなデータが必要かを考え、その収集方法や活用技術を選択していくのです。このフレームワークを体系化したものが、NECが提唱する「DIVA」モデルです。これは「データ(Data)」「情報(Information)」「価値(Value)」「成果(Achievement)」の頭文字から命名した価値創造のプロセスです。設定した事業目的を達成するために、「どのような成果を出すべきか」、「そのためにはどんな価値を生み出せばよいか」、「どのような情報を導き出せばよいか」「どのようなデータが必要になるのか」と遡って考えていくことで、やるべきことが明確化されていきます。

この「DIVA」モデルは、「センシング(見える化)」「アナリティクス(分析)」「アクチュエーション(制御・誘導)」という3つのステップで成り立っています(図版6)。

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図版6 「DIVA」モデルのフレームワーク
センシングはIoTなどを活用し、様々な事象をデータとしてサイバー空間に取り込み、見える化する。アナリティクスは取り込んだ大量データを分析し、規則性や法則性を見つけ出す。アクチュエーションは分析で得られた情報を価値に変え、実世界へフィードバックする。事業目的をベースに、このプロセスを実践することで、成果の最大化につなげていく

またNECでは、このプロセスを確実に回していくため、AIによる価値の最大化を支援する多種多様なソリューションも提供しています。その1つが「AIディスカバリープログラム」というコンサルティングサービスです。本サービスでは、「どこから手を付ければよいかわからない」「データをどのように業務に活用すべきか」といった不安を持つお客さまに対し、ビッグデータの有効活用を一からサポート。AI活用で目指す事業ビジョン・コンセプトの企画、AI活用シナリオの検討とアクションプランの策定に加え、そのシナリオやアクションプランの実現性検証などをトータルに支援しており、すでに100社を超える実績があります(図版7)

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図版7 「AIディスカバリープログラム」のサービスイメージ
AI活用で実現する事業ビジョンなどの企画から具体的なシナリオ策定、その実現性検証までトータルにサポートし、業務革新や新事業創出の実現に貢献する

もう1つは「NEC Analytics Platform」です。こちらはAI/ビッグデータ活用基盤となる「データレイク」を実現するソリューションです。データレイクとは広く澄んだデータの湖という意味。組織横断的な透明性の高い統合データ環境の実現を目指すものです。その基盤となるソリューションが「NEC Analytics Platform」というわけです(図版8)。多様なシステムやモノとつながるデータ連携基盤、データの蓄積・加工を行うデータ処理基盤、データの見える化・レポーティングを行うデータ分析基盤から成り立っており、業務や部門、システムの違いを超えた統合データ環境から価値創出を図り、お客さまが目指す施策の立案をサポートします。

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図版8 「NEC Analytics Platform」のソリューションイメージ
部門やシステムの壁を越えて多種多様なデータを収集・蓄積・加工・分析することが可能だ。NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」との連携により、統合的なAI/ビッグデータ活用基盤を実現する

このように「AIディスカバリープログラム」や「NEC Analytics Platform」は、お客さまの事業目的や経営戦略といった大局的な視点から、ビッグデータの活用を支援することが可能です。技術ありきではなく、お客さまに寄り添ったAI/ビッグデータ活用戦略を支援できるのが、NECの大きな強みです。

今後もNECは、新たな技術やソリューションの開発・強化を推進し、AI/ビッグデータ活用による価値創出をお客さまとともに力強く歩んでいく所存です。