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地球を見つめる星を造って 第1回 30年目のバトン

伝えたい想い、言葉

写真:「しずく」による観測成果 2012年8月7日 沖縄地方を通過した台風11号による雨の分布 黄色~赤色が雨の強い領域。背景の白黒画像は「ひまわり」による雲の分布。「しずく」による観測成果
2012年8月7日 沖縄地方を通過した台風11号による雨の分布。
黄色~赤色が雨の強い領域。背景の白黒画像は「ひまわり」による雲の分布。

  • 小笠原:感慨深い話でした、さて、プロマネ、システムマネージャの醍醐味とは何でしょう。
  • 川口:プロマネは提案から長い期間ずっと関わって、お客さんの要求を聞いてから物を作り上げる一連の流れを全部体験している、そんな立場ですから、より成功した時の達成感が大きい・・・そんなものでしょうか。
  • 吉田:部品レベルから、ハードウエアを組み上げるわけじゃないですか、それをまとめる役割は開発メーカでしか味わえない。苦労は多いし・・・すごく泥くさい作業の繰り返しなのですが。

    「だいち」「かぐや」などで出た問題点は解決されていたので、「しずく」で新たに出た問題は少なかった。このことはNECとしての今後の大きな資産となったと言えますね。
  • 川口:機器ごとには細かなところはいろいろあったのですが、他の衛星プロジェクトがたくさん並行して動いていたので人の手配がつかなかったりもしました。
    でも搭載した機器としては “枯れたもの” が多いので、大きなトラブルはなかった。
  • 小笠原:他の会社とのインタフェースでは問題はなかったのですか?
  • 吉田:他社とやる時は大変、立場が違うというか、お互いの会社を背負っているので、技術とは別な面でも手間がかかり、時には声を荒げる場面もありました。でも打ち上げる時には同じ衛星を作った一緒の仲間になっていました。

写真:あうんの呼吸でプロジェクトを進めた吉田と川口あうんの呼吸でプロジェクトを進めた吉田と川口

  • 小笠原:そろそろまとめに入りたいと思います。「しずく」はお二人にとってどんな衛星ですか?
  • 川口:「しずく」は、私にとっては30年の集大成ですね、自分が手がける最後の衛星になりますから。

    「しずく」が地上試験中の2011年10月に、米国のAqua衛星に搭載されたAMSR-E(AMSR2の一世代前の機器)が回転停止して、地球の水循環の観測データが途切れてしまいました。そういったこともあり、「しずく」で観測を継続することがJAXAとしては国際的な公約になったわけです。

    このことは私たちにとって大きなプレッシャーではあったのですが、同時に、衛星がもたらす地球の水循環の画像が、気象衛星の「ひまわり」の画像みたいに、毎日あって当たり前になる。そんな、誰からも働いているのが当たり前と思われる衛星になったわけで、このようなプロジェクトに関われた事は本当に良かったと思います。
  • 吉田:私は、「自分を成長させてもらった」衛星だと思っています。チームメンバーを現場でまとめる、人に働いてもらうという難しさを実感しました。彼らを同じベクトルに向かせて、個々のモチベーションを高めて行くために、私は「まず話しを聞く」ことに集中しました。頭ごなしに言うのではなく、聞いた上で違うところはこうして欲しいと毎日説得していましたね。

    私はこの経験を活かして、次のGCOM-C1(気候変動観測衛星) では、システムの立場を離れて、さまざまな衛星の機械系を統括する立場になります。
  • 小笠原:「しずく」の経験で、後輩たちや次の世代へ伝えていきたいことは何ですか
  • 川口:一番伝えたいのは、『「衛星」が「ものづくり」だということを実感して欲しい』ということに尽きますね。形あるものを作ることで、自分たちが作ったものを実感し、それを運用してみて、コマンドを打てばその通りに衛星が動作して、まるでロボットみたいに従う。このことを十分に楽しんで仕事をして欲しいなと思ってます。

    大学の先生方から「今の学生はチームワークの概念すら知らない」と聞いたことがあります。チームワークって何だろうと調べると「他のメンバーの仕事を信頼した上で、その人の仕事を視野に入れながら自分の仕事をきっちり進める」そんな風に書いてあります。まさにこれ。「しずく」プロジェクトでも、その中のグループ間でチームワークの醸成に心がけては来たのですが、これからもこの意識を若い人達にきちんと伝えていきたいですね。

川口は、後輩たちへ、物つくりの実感や、チームワークの必要性を説くメッセージを伝えて、話しを終えた。

徹底的な妥協を許さない開発と試験、チームメンバーへの信頼、実用レベルに達する軌道上不具合ゼロの実績(2012年8月時点で)、そして最後は「人事を尽くして天命を待つ心境」様々な想いが交錯した7年。そして衛星技術者としての30年。

「あうんの呼吸」ともいえるほどの、吉田やプロジェクトメンバーへの信頼。何十人もの現場作業者と技術者を束ねた吉田の自信、こうして30年目のバトンは渡された。

取材・執筆 小笠原雅弘 2012年7月27日

川口 正芳(かわぐち まさよし)

写真:川口正芳(かわぐち まさよし)

NEC 宇宙システム事業部 シニアエキスパート
1978年NEC入社
2005年より当社GCOM-W1プロジェクトマネージャ

吉田 達哉(よしだ たつや)

写真:吉田 達哉(よしだ たつや)

NEC 宇宙システム事業部 マネージャ
1991年東芝入社、2007年NECへ移籍
2009年よりGCOM-W1システムマネージャ

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