衛星の継続的運用が、気象予報の発展の基礎となる
──今後、「しずく」、あるいはそれに続くプロジェクトに期待することをお聞かせください。
- 佐藤:いいデータを、継続して送ってきてほしい。それが私たち気象予報に携わる者の願いです。天気予報は、人々の生活に不可欠のものであり、そのためには様々な観測データが必要になります。衛星の活動が途絶えてしまっては、必要なデータが得られなくなってしまいます。
気象予報の技術は、日々進化を続けています。各国の気象衛星の活動が始まって30年から40年ほど経ちますが、衛星による観測データが本当に有効に活用できるようになったのは、ここ10数年ほどのことです。近年になってコンピュータの計算能力が向上して、ようやく衛星データを的確に活用した数値予報が可能になったのです。
数値予報
- 佐藤:コンピュータの能力は、今後も日進月歩で進化していくでしょう。一方、衛星の性能ももちろん上がっていくはずです。コンピュータと衛星の能力がともに向上すれば、気象予報の精度もどんどん上がっていきます。ただしそのためには、衛星が継続的に運用されなければなりません。衛星の安定的で継続的な運用が、気象予報の発展の基礎となる。そう言っていいのではないでしょうか。
──これからの宇宙開発の技術発展は、気象予報の未来にどのような影響を与えていくとお考えですか?
- 佐藤:世界の気象機関は、協力関係にあると同時に、競争によって切磋琢磨していく関係にもあります。各国が宇宙開発を競い合って、より優れた技術を開発すれば、それだけ世界全体の気象予報のレベルが上がっていくことになります。
気象に国境はありません。例えば、日本の明日の天気を知るには、日本以外の地域の気象データが必要です。今後は「地球全体の気象状況をいかに正しく把握するか」という視点がより求められることになると私は思います。日本の宇宙開発の技術が、世界の気象予報のレベル向上に寄与することを願っています。
取材・執筆 二階堂 尚 2012年10月30日
佐藤 芳昭(さとう よしあき)
気象庁 予報部 数値予報課
データ同化技術開発推進官
1995年、北海道大学大学院理学科修士課程地球物理学専攻修了後、気象庁に入庁。
気象庁観測部、福岡管区気象台、気象衛星センターを経て2003年より気象庁予報部数値予報課に在籍。数値予報課在籍中の2007-8年に、客員研究員として米国環境予測センターに滞在。2011年より現職。