「しずく」の機能と役割
──その課題は、「しずく」によって解決されるのでしょうか?
- 佐藤:「しずく」が課題を解決するというよりも、「ひまわり」にできないことが「しずく」にはできる、と表現したほうが正確でしょうね。「ひまわり」には「ひまわり」の、「しずく」には「しずく」の機能と役割があるということです。
「しずく」には、地球上の水の分子などが発するマイクロ波という電磁波をキャッチするセンサーがついています。その電磁波は雲を通過します。つまり、雲があっても、雨や水蒸気の分布、地上や海上の状況を捉えられるということです。例えば、「しずく」のセンサーなら、台風の上を雲が覆っていても、台風の中心がどこにあるかをより正確に把握することができます。それによって、さらに的確な台風情報を提供できるようになると考えています。
台風監視
- 佐藤:また、そのデータによって、天気の変化をより正確に予報できるようになったり、注意報や警報が従来よりも適切に出せるようになったりする可能性もあります。
もう一点、「しずく」は、2日間で地球表面の99パーセントを観測することができると言うことですので、日本近辺以外の情報を私たちに与えてくれます。このことも、世界中の観測データを集める必要がある我々にとっては重要な点です。
──「しずく」がもたらすデータの活用法を、具体的にお聞かせください。
- 佐藤:「しずく」が収集した海面水温、水蒸気量、降水強度といったデータは、まずJAXA(宇宙航空研究開発機構)に送られ、そこから気象庁に届くことになります。気象庁ではそれらのデータを、従来の観測データとともにコンピュータに入力し、数値予報を行います。
「しずく」から気象庁までデータが届くのに要する時間は30分以内ですから、「準リアルタイム」の情報が得られると言っていいでしょう。先に申し上げたとおり、気象予報で重要なのは、「現在」の状況を正確に把握することです。どれほど優れたデータがあっても、届くまでに時間がかかってしまっては意味がないのです。30分以内というのは、現状では満足すべきスピードであると考えています。
──「しずく」が国産の衛星であることの意義については、どうお考えですか?
- 佐藤:
私たちの希望は、信頼できるデータを、できるだけ早く得たいということです。その点で、国産衛星であることは非常に重要であると考えています。
海外の衛星の場合、どうしても自国の気象機関へのデータ提供を優先することになるので、こちらにデータが届くまでに時間がかかったり、アクシデントで、データ提供が一時的にストップしたりするケースもありえます。
その点、日本の衛星であれば、当然ながら優先的にデータが提供してもらえますし、トラブルがあったときにも、その対応状況など、様々な詳細情報を迅速に頂けます。