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水と私たちの生活 第1回 衛星からのデータが人々の食生活を支える──漁業情報サービスセンター

衛星1台分のコスト削減が実現

写真:水温と漁場AMSR-Eが観測した日本付近の水温分布と、漁場位置の重ね合わせ図青=カツオ竿釣り
赤=マグロ延縄マグロ
緑=サンマ棒受け

──これまで、衛星からのデータ活用にはどのような課題があったのですか?

  • 為石:一番の難敵は、雲でした。赤外線は雲を通過しません。ですから、雲が出ていると、海水温を測ることができないのです。

    これまでは、雲の切れ目から見える海の水温を断片的に集め、それをモンタージュ写真のようにつなぎ合わせ、さらに沖合にいる船舶からのデータで補正しながら、おおまかな水温分布図をつくっていました。

    この課題が解決されたのは、日本製の「高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)」がアメリカの衛星「AQUA」に搭載されてからです。マイクロ波は、水分子が自ら放出しているもので、雲があっても衛星から測定することが可能です。これによって、どんなに曇っていても水温観測ができるようになりました。その結果、以前よりもはるかに正確な水温分布図がつくれるようになったわけです。

──アメリカの衛星からの情報提供を受けていたわけですね。

  • 為石:

    写真:漁業情報サービスセンター 為石 日出生 氏

    そうです。しかしそのデータもAMSR-Eのアンテナの回転が止まり、2011年10月以降は、提供がストップしていました。

    国産の衛星から安定的にデータを提供してほしい──。それが私たち漁業関係者の強い願いでした。それが、この5月に打ち上げられた「しずく」によって実現したわけです。

    日本の衛星からのデータが、日本の漁業を支える。これはたいへん画期的なことです。

──「しずく」からのデータは、どのようにして洋上の漁師さんたちのもとへ届くのですか?

  • 為石:まず、「しずく」に搭載された直径2メートルのアンテナが、海上からのマイクロ波をキャッチします。JAXAの筑波宇宙センターで処理されたデータが、専用回線を通じてJAFICに情報が届きます。そのデータに、水産庁水産研究所や水産試験場、船舶などが独自に収集している水温データをプロットして補正した上で、きめ細やかな温度線を手作りで仕上げます。

    そうしてできあがった正確な水温分布図を、1日に1回更新する。それがおおまかな流れです。データは、各漁船の漁師さんたちが、通信衛星を介してJAFICのデータセンターに取りに来る仕組みになっています。

──「しずく」からのデータが漁業にもたらす効果についてお聞かせください。

  • 為石:数値の面から言えば、船の燃料が大幅に節約できることです。正確な水温分布図を見て、目的とする漁場を知ることができれば、ピンポイントでそこに到達することができます。つまり、無駄な燃料を使わずにすむということです。

    こんな数字があります。衛星データの活用が始まった80年代中頃の漁船の燃料使用量をそれ以前と比較すると、年間で約16パーセント下がっています。これは、国内の巻網船、サンマ置網船、延縄船、カツオ船、イカ釣り船など全ての漁船が、衛星情報を利用したとして、節約できる燃油量を金額にすると、およそ264億6000万円になります。衛星1機にかかるセンサ費用がおよそ200億円ですから、それを超える効果が出ているわけです。

──その費用対効果が、「しずく」になってさらに高まると。


  • 為石:そう期待しています。これまでよりも正確な水温分布図の作成が可能になるわけですから、それだけ漁船の活動のロスは少なくなり、必然的に使用燃料も少なくなるでしょう。
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