プロジェクトに関わる喜びとプレッシャー
──このような大きなプロジェクトに関わることの醍醐味とたいへんさは。
- 佐藤:
私はもともと宇宙開発の仕事に携わるのが夢でしたが、入社後に配属されたのは情報処理部門でした。その後入社から7年たったころに念願かなって宇宙部門に移ることができ、それ以来十数年、今はたいへん楽しく仕事をしています。
この醍醐味は、何といっても未来につながる大規模なインフラづくりに関われることです。準天頂衛星システムは、気象衛星「ひまわり」などのように社会に欠かせない役割を担うことが期待されています。国も準天頂衛星システムの開発や利用の促進を最も重要な政策の一つに位置づけています。そのような事業に責任ある立場として携われるのは、たいへん喜ばしいことです。
一方、プレッシャーが非常に大きいのも事実です。準天頂衛星システムは休みなく24時間稼働しています。いかなる理由であってもシステムを止めてはならないため、トラブルが検知されたらいつでもすぐに対処に当たり、仮に遠地に行かなければならない状況となったら、すぐにでも飛ぶ心構えで私たちは取り組んでいます。
──今後の見通しは。
- 佐藤:天気予報でお馴染みの「ひまわり」は地球から3万8千キロも離れた静止軌道にあって、いつも日本を見つめています。これは人工衛星、つまり電子機器の塊ですが、万全の備えによって、私たちが普段気に留めることもない中で、毎日毎時活躍しています。
同じように、またそれ以上に「みちびき」も活躍しなければなりません。道しるべとなるためには、いかなる理由があっても休むことはできません。安定的に稼働するシステムをつくり、そして維持することで、より安心して安全にご利用頂けるようにしたい、これが私たちの最大の目標です。
2010年代後半には4機体制が整います。この時までに、私たちが「みちびき」の運用を通じて得た知見を最大限に生かし、目標への到達を一日でも早く成し遂げられればいいと考えています。NECグループではその準備が整っています。
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コミュニケーションロボット
「PaPeRo」余談ですが、常日頃から次世代を担う子供たちへうまくメッセージが送れないかと考えています。
「はやぶさ」や「だいち」などの人工衛星は見た目もかっこよく子供たちの目をひくのですが、同じくらい大切な地上側のシステムにはなかなか興味の目があつまりません。
そこでNECが開発したロボット「PaPeRo」とコラボレーションができないか考えています。例えば、このロボットがマスターコントロール局を見まわったり、追跡管制局のスタッフとコミュニケーションをとったりすることを通じ人と機械の隙間を埋めて“より盤石なシステムづくりを目指す”という姿をお見せする、と子供たちは興味を示さないでしょうか(笑)。
佐藤 欣亜(さとう よしつぐ)
NEC 宇宙システム事業部
マネージャー
1990年NEC入社。国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の地上システム開発を経て、2007年から準天頂衛星地上システム開発におけるシステム開発リーダーとして、主にIT系開発のまとめ役を担当。現在は「みちびき」運用支援の地上系全般とりまとめ業務に従事。