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スペシャルインタビュー JAXA イプシロンロケットプロジェクトマネージャ 森田 泰弘 氏  組織を超えたチームワークで二兎を仕留める

一流のプロたちと仕事ができた

──「ひさき」は「スペースワイヤ」を全面的に採用した初めての衛星となりました。

  • 澤井:スペースワイヤは内部の機器をネットワークする、非常に柔軟で使い勝手がいい規格です。現場が助かるのは、機器の試験が簡単になることです。試験設備も共用でき、姿勢センサ、恒星センサ、データレコーダなどの異なるモジュールとも、スペースワイヤという共通語で話ができる。地上試験では、「ひさき」で求められる以上の多くの試験を、標準バスの確立のために行ないました。当初は「こんなスケジュールでは難しいのでは」という声もあったのですが、効率良くスムーズに運び、予定通りに終えることができました。

写真「ひさき」を打ち上げたイプシロンロケット

──イプシロンロケットは初の打上げでしたが、初号機のペイロード(載荷物)としての難しさはありましたか?

  • 澤井:前代未聞の試験をやっています。イプシロンロケットに加振機で振動を加え、シミュレーションモデルとの整合性を確かめる試験を、「ひさき」を先端に搭載した状態で行ったんです。

──本物の衛星を乗っけて、揺すっちゃったんですか。

  • 澤井:こうした試験は普通ならばダミー衛星を乗せて行ないます。本物の衛星を供試体にするのは、少なくとも私は初めてです。

──なぜそこまで?

  • 澤井:時間の節約のためです。観測対象の惑星は、軌道の関係でタイミングを逃すとやりたい観測ができなくなってしまう。年明けからのハッブル宇宙望遠鏡との協調観測も控えていましたから、何としてもそこに間に合わせないといけなかった。

──確かにダミー衛星を載せ、テスト後に降ろし、本物を載せる……そこでかかる手間と時間を考えたら、どうせ打上げるのだから、本物でやっちゃったほうが時間の節約にはなりますが……。

  • 澤井:ただ、衛星を作る立場からすれば、これはとんでもないことです。そうでなくとも苦しいスケジュールを前倒しすることになるし、振動試験がスムーズに行くとも限らない。最初にNECのプロマネの鳥海 強さんに話を持ちかけた時は、強く反対されました。きちんとした衛星を作って引き渡すという責任を負う立場の方に、その範囲外のことをお願いしているわけですから、当然です。しかしミッション成功という最終目的のため、全体最適を考えたら、ここは衛星側もがんばらなきゃいけない。議論を尽くし納得された後は、「機器の健全性確保のために気をつけるのは、こことここ」と先回りして手を打ち、「強」というお名前の通り“強力”に推進してくれました。

──深い信頼関係があればこそ……。

  • 澤井:ともすれば「行っちゃえ、やっちゃえ」で進めてしまう私からすると、NECの皆さんは冷静なプロフェッショナルでした。私がこのミッションで関わった方々は、それが組織の力なのか、偶然のめぐり合わせなのかは分かりませんが、みな素晴らしい超一流のプロでした。

    本当は、名前を上げてお礼申し上げたい人たちがたくさんいます。そうしたみなさんとのパートナーシップなくして「ひさき」の成功はあり得なかったと思っています。

2014年3月28日

澤井 秀次郎(さわい しゅうじろう)

写真:澤井 秀次郎(さわい しゅうじろう)

JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授。工学博士。
1994年、旧文部省宇宙科学研究所(現JAXA)助手となり、2003年、宇宙科学研究所システム研究系助教授、同年、JAXA総合技術研究本部主任研究員。2004年、JAXA宇宙科学研究本部助教授。2009年より現職。専門は制御工学。

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