宇宙のインターチェンジを目指して
Q:ではもっと長いスパンでの、國中先生の考える将来像についてお聞かせいただけますか。
宇宙のフロンティアをどう開拓するか、できるだけ遠くの宇宙に出かけられるような乗り物、推進装置を造っていくというのが一つの方向性ですね。そのためには燃費がさらに良く、一層推力の大きなエンジンに改良していく必要があります。日本は「はやぶさ」で、電気推進を使った動力飛行に先鞭をつけました。電気推進を世界にアピールできたと思っています。これからは、経済性の良さをもっと有効に使いましょうというアプローチをしなくてはいけない。例えば、具体的には地球近傍の物資輸送にも使おうという提案です。その場合は大電力による大推力、そう今の「はやぶさ2」の百倍(1ニュートン級)くらいの大推力エンジンが将来の目標になりますね。
Q:國中先生の次なるフロンティアは。
何と言っても木星でしょう!
木星のスイングバイが使えれば、土星以遠の天体にも、逆に地球より内側の惑星へも行けます。例えれば木星は「宇宙のインターチェンジ」です。この「木星ルートの開拓」ができればその先が大きく広がります。「木星」は宇宙大航海時代の喜望峰みたいなものなのです。
エピローグ
國中先生は今、若い後進を育て、彼らと一緒に「はやぶさ2」プロジェクトを進めている。短期間での探査機開発やこれまでの運用を可能にした一つはこの若い力、もう一つは「はやぶさ」の経験だったと振り返る。
木星ルートの開拓、宇宙のインターチェンジ、未来を見つめる國中先生の話は一段と熱を帯びてきた。30年前小さな一歩を踏み出した電気推進の研究が、小惑星からのサンプルリターンを成し遂げ、さらに遠くの未来を見つめる。
2015年2月12日 取材
(取材・執筆 小笠原 雅弘)
國中 均(くになか ひとし)
JAXA 小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトマネージャ
宇宙科学研究所(ISAS) 宇宙飛翔工学研究系 教授 工学博士
1988年、東京大学大学院工学系研究科航空工学専攻博士課程修了。
同年、旧文部省宇宙科学研究所(現JAXA)に着任し、2005年に教授となる。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授を併任。2011年、月・惑星探査プログラムグループ プログラムディレクタを経て、2012年より現職。
専門は電気推進、プラズマ工学で、小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジンの開発を手がける。