サイト内の現在位置

「はやぶさ2」とNECの関わり

惑星大気を調べ、地球の未来を知る 惑星分光観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)

2014年12月3日午後1時22分4秒。小惑星探査機「はやぶさ2」は、種子島宇宙センターから打ち上げられました。その後、予定の軌道に投入され、地球と火星の間にある小惑星「1999JU3」に向かう第一歩を踏み出しました。

「はやぶさ2」は、2010年に世界で初めて小惑星からのサンプルリターンを成功させた「はやぶさ」の後継機です。今回目指す小惑星「1999JU3」には有機物や水が存在するとみられており、衝突装置で造るクレータ内から採取する地下物質を調べれば、太陽系や生命の起源に迫ることができると期待されています。

イラスト 池下章裕

これから約1年間は、イオンエンジンの試運転や装置の動作確認をしながら地球に比較的近い軌道を周り、2015年末頃に地球の運動エネルギーを利用して軌道を変更する「スイングバイ」を行い「1999JU3」を目指します。到着は2018年夏頃。それから約1年半ほどかけて探査やサンプル回収を行い、2019年末に小惑星を出発します。地球へ帰還するのは2020年11~12月頃の予定です。その総飛行距離は50億キロ以上になります。

「はやぶさ2」とNECの関わり

NECは、JAXAの指導のもと「はやぶさ2」全体のシステム設計・組み立て・試験およびインテグレーションを行いました。

化学推進系を除くバス機器全般の設計・製造の他、イオンエンジンや中間赤外カメラといった搭載機器の設計・製造も担当しています。

【NECが担当した主な機器】

Xバンド高利得アンテナ
「Xバンド」(7~8GHz)の電波を送受信するアンテナ。地球への通常のデータ送信、コマンド受信等に使用する。金星探査機「あかつき」に搭載されて実績のあるアンテナ

再突入カプセル
小惑星で採取した石や砂を、地上に届ける際に用いる。
秒速11.6kmで大気圏に再突入する際、サンプルが入ったコンテナを熱から守る。

サンプラホーン
小惑星から石や砂を採取する装置。小惑星に長時間着陸することなく、表面にホーン先端が接触している短い間に、サンプラホーンの中で小さな弾丸を小惑星に撃ち込み、舞い上がったサンプルを機体の中に取り込む。

Kaバンド高利得アンテナ
「Kaバンド」(32GHz)の電波を送信するアンテナ。Xバンドの約4倍のデータを送信できる。主に小惑星の観測データを効率的に地球に送信する際に使用する。JAXAとして初の惑星探査機への搭載となる。Xバンドアンテナをより高い周波数で使用できるように改良した。

太陽電池パドル
パネルに太陽光を受け電気エネルギーに変換し、搭載機器へ電力供給をする役割を担う。
打ち上げ時にはパネルが折りたたまれた状態で収納され、宇宙空間で展開される。

衝突装置
小惑星表面に人工クレーターをつくる装置。中には爆薬が入っており、上空でこれを切り離して「はやぶさ2」が退避した後で中の爆薬を爆発させる。爆発すると“ふた部分”の銅板が変形して弾丸形状となり、それが秒速約2kmもの高速で小惑星に衝突し、直径数mのクレーターをつくる。

イオンエンジン
イオン化したキセノンを秒速30kmという高速で噴射することで推進力を生み出す。通常のロケットエンジンに比べて、同じ推進力を生み出すために必要な燃料が大幅に少なくてすむため、長期間の運用が求められる深宇宙探査機向けの推進装置に適している。「はやぶさ」の7年にも及ぶ運用経験を活かして耐久性向上・長寿命化を実現。推進力を25%向上させた。

中間赤外カメラ
小惑星からの熱放射を調べ、表面温度を調べるカメラ。砂と岩では温度変化の度合いが異なるため、惑星表面の状況を知る手掛かりとなる。金星探査機「あかつき」に搭載した同型カメラの改良型。