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はやぶさ2は新たな旅へ。これから11年続く拡張ミッションとは?
2020年12月6日、小惑星リュウグウのサンプルの入ったカプセルを地球に届けた後、はやぶさ2は新しい小惑星探査に出発します。目的地の小惑星へ到着する予定はなんと2031年。11年にもおよぶ長い旅は、はやぶさ2の能力の限界に挑むミッションになるでしょう。
拡張ミッションではやぶさ2は打ち上げから17年もの長い間、宇宙を航行することになります。これは、NECが設計、開発したはやぶさ2の機体が信頼されているから。将来、木星やさらに遠くの天体を探査することになった場合の貴重な経験、前例を得ることができます。今まで日本の探査機がこれほど長い間、宇宙の過酷な環境にさらされたことはなく、拡張ミッションで万が一エンジンやカメラなどの観測機器に変化が起きたとしても、「珍しいデータがとれる」とポジティブに考えられています。
2026年には、小惑星2001 CC21を高速で通り過ぎながらカメラなどで観測する予定です。この小惑星は、まだどんな探査機も調べたことがない、珍しい岩石からできていると考えられています。太陽系初期の物質を封じ込めた隕石と同じ物質を持っている可能性もあり、はやぶさ2の観測でそのつながりがわかれば未曾有の大発見です。
そして目的地は、未知の小惑星1998 KY26です。この小惑星は直径およそ30mと、小惑星リュウグウよりはるかに小さく、約11分で自転するので、5分おきに昼と夜が交代する世界です。こんなに小さく高速で自転する天体に、はやぶさ2がランデブー(位置を合わせてとどまること)を成功させれば、世界初の快挙となります。成功すればはやぶさ2が世界初になります。
太陽の周りを高速で回り続けている小惑星にランデブーするためには、探査機が対象を確認しながら、位置を合わせて地表から決まった高度に停止し続けるという高度な作業を行います。空を飛びつつ、地上を高速で走り続ける目標に位置を合わせるのはとても難しいですね。追い越してしまったり、目標を見失ったりしない緻密な制御が必要になります。はやぶさ2はこれを、高速に自転して、見える面がどんどん変化する未知の小惑星に対してしなくてはならないのです。
小さな1998 KY26ですが、実は地球にとっては脅威でもあります。このサイズの天体はこれまで何度も地球に落下したことがあり、100~200年に1回は隕石として地球に落ちて来るかもしれないという危険があります。はやぶさ2が詳細に観測できれば、岩石の密度や硬さ、どんな鉱物でできているかなどを調べることができます。万が一小惑星が地球に接近した場合にも、どのような物質でできているかわかれば、軌道をそらす計画を立てることができ、地球を守る「プラネタリー・ディフェンス」の重要なデータになるのです。
はやぶさ2の機体は、イオンエンジンの推進剤を半分も温存して、新たな旅に備えています。拡張ミッションは、未知の小惑星観測、超高速自転小惑星へのランデブー、プラネタリー・ディフェンスなどたくさんの成果を目指し、これまでの6年間にも負けず劣らずの、はやぶさ2の大きなチャレンジとなるのです。
執筆:秋山 文野
2020年12月4日 公開