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Support(支援)からIndependent(自立) へ

パラスポーツをもっと知ろう!「PARA SPORTS NEWS アスリートプライド」番組レポート第3回

パラスポーツ界も2020年に向けて、会場、運営面などの準備が着々と進んでいます。
また、写真家の蜷川実花さんが撮影したパラスポーツ選手の写真展が開かれるなど、各地で2020年に向けた様々なイベントが開催され、気運が高まってきています。

しかし、2020年をさらに盛り上げるためには、まだまだ準備できることがあるとNEC障がい攻略エキスパートの上原大祐が、緊急提言!我々に出来ることとは何か出演者の皆さんが熱く語っています。

SupportからIndependentへ

冒頭上原は、海外と日本の違いを『車いすでのバスへの乗り方』を例に挙げて、こう切り出しました。

上原「バスに乗る際、日本では運転手さんがわざわざスロープを出して、乗車したらまた運転席に戻って...という運用をしています。このようなサポートはとてもありがたいのですが、乗る側からすると“申し訳ない”という心理的な負担もありますよね。ある海外のバスでは、ボタンを押せばスロープが自動で出てくる仕様になっているので、手間をかけてもらうことがなくなり心理的な負担もありません。

つまり、“サポート”になるとどうしても、する側とされる側に分かれてしまい相手の負担を考えてしまいます。そうではなく”どうすればみんなが自立できるか”というマインドに切り替えていくとお互いの負担が無くなり、さらに良い社会を作っていけるのではと思います。」

― 日本にその意識が薄いのはなぜ?

上原「理由の1つとして、健常者が“便利だろうな“という想像で作り上げたユニバーサルデザインが多いという事。そうではなく、発案・設計の段階から当事者の意見を取り入れたインクルーシブデザインにすることが大事だと思います。」

  • ユニバーサルデザイン
    年齢や障がいの有無に関わらず誰でも利用できるデザイン
  • インクルーシブデザイン
    発案・設計の段階から高齢者や障がい者の意見を取り入れたデザイン

今回のゲスト、生まれつき左足に障がいを抱える、パラ卓球界のホープ、パラリンピックリオ大会に出場された岩渕幸洋さんは、エスカレーターの2列乗りについて語りました。

「最近エスカレーターの2列乗りを呼びかけるキャンペーンが行われていますが、特に通勤ラッシュ時の駅など、片方は止まって乗る、もう片方は歩く人のために空けるという暗黙のルールがあると思います。

本来エスカレーターは2列とも止まって乗るもので、むしろその方がたくさんの人を運べるし、障がいを持っている人の中には、どちらか片方にしか止まって乗れない人もいて、せっかくエスカレーターというバリアフリーの設備なのに、それを活かしきれてないところが気になります。

歩く人のために空けなきゃという事ではなく、そういう人たちが居るという事を知ってもらって、正しい使い方が広まったら嬉しいなと思います。」

MC滝川さん「僕も車いすで街を歩いてみると、ちょっとした段差や凸凹道など、どうしても歩きづらい所があって、まだまだ障がい者に対して住みよい街づくりというのが徹底されていないように思います。」

―ではそのような課題を改善するため、上原が取り組んでいる事とは?

上原「皆さんがおっしゃる通り、一つは『知る』という事です。“知らないから考えない”、“知らないから出来ない事”がありますよね。まずはそれを我々が発信して知ってもらう事。
もう一つは、NECの顔認証システムなどICTを活用して、今までにない全く新しい方法で、誰もが安心して過ごせるような社会にしていきたいと思っています。」

最後に、自ら介護施設、リハビリ施設を運営する、 清水宏保さんは、引退後のパラアスリートの可能性について、

「”競技から、リハビリや福祉へ” 繋げていくことが大事なのかなと思っています。今介護施設を運営する中で、リハビリ施設も併設していますが、なぜ介護、リハビリをやるのかと、よく聞かれます。それは、自分がケガをして、リハビリをした経験というのが、障がいを持った方のリハビリにも通ずるものがあると思ったからなんです。

また、誰よりもパラアスリートの方々が、介護の現場や、病院でのリハビリの動きなど、一番わかると思うので、今後そういった医療の分野も含め、選手を終えた後、色々な分野でアドバイザーとして活躍していけるのではないかと思っています。」

―私たちがこれから意識して出来ることとは

上原「日本人はとても優しくて親切だと思うのですが、シャイな部分が上回ってしまって、なかなか声がかけられないと思うんです。ぜひ一言、『手伝いましょうか?』とみんなが言えるような日本になると嬉しいですね。」

大会の会場などハード面の準備が進む中、私たち一人一人がほんの少しだけ視野を広くすることが、2020年、さらに素晴らしい大会に出来るのではないでしょうか。

掲載情報は2019年5月時点での内容です。