1. 概要

1.1. Web APサーバとは

ここ数年でインターネットを中心とした情報技術(IT)の革新、およびブロードバンドやモバイルの普及によるユビキタス化が急速に進んでいます。

24 時間365 日どこからでも接続できる、安価で高速なインターネットの利用が公共機関、企業、家庭、個人へと拡大し、さらに電子ショップ、電子商取引、ネットバンキング、ネット証券、音楽・映像配信、ネットオークションなどのシステムが当たり前のように社会に浸透しています。

さらに今後は、RFID 等のセンサー機器やIC カード、情報家電の普及、およびNGN によるネットワーク環境の改善が急速に進んでいくでしょう。インターネットへの依存度が高まる一方で、流れるデータのサイズや、処理件数の幾何級数的な増加が予想される事から、今後さまざまな課題がでてくることも考えられます。

当然ながら、社会インフラ、および企業の顔として使われるインターネット業務システムは、高い信頼性が必要になります。また、不特定多数によるアクセスが生じる特性のため、ひとたび人気が出たり、注目されたりすると急激にトラフィックが増加し、システムのレスポンス低下や、最悪の場合システム事態の停止といった問題も出てきてしまいます。 さらに、悪意の利用者からのセキュリティアタックなど既存の企業内システムでは考えられなかった問題も出てくるでしょう。 影響度の高いシステムでそのような事はビジネス機会損失、および企業イメージの失墜を招くため絶対に避けねばなりません。


図1.1-1

また、このようなインターネットを中心としたユビキタス社会への進展は、公共機関や企業内の業務システムの変革を余儀なくしています。公共機関は電子政府や電子自治体などの効率的で市民へのサービ ス性の高いシステムの提供要求に、企業は世界レベルの競争に打ち勝つ効率的な調達や意思決定な どの業務システム構築の要求にさらされています。

これらの厳しい要求に対応すべく誕生したのが、ウェブアプリケーションサーバ(Web AP サーバ)です。具 体的にどのような事がWeb AP サーバに求められるのかを次に示します。

1.1.1. 信頼性

業務システムの信頼性の要件については、提供する業務や規模毎に異なるために一概に言えるもので はありません。しかしエンタープライズレベルの業務システムやインターネット業務システムには最高レ ベルの信頼性が要求されるでしょう。

アプリケーションサーバにはサーバ、ネットワーク、ディスクなどのハードウェア障害や、アプリケーション の予期せぬ障害などのソフトウェア障害を局所化し、全体のサービスへの影響を最小にできる信頼性 が必要です。ハードウェア障害に対してはクラスタ技術やフェイルオーバ技術などを使った冗長構成も必 要となります。

1.1.2. 可用性

インターネット業務では24 時間365 日運用を止めずに安定してサービスを提供し続けられるシステム が必要となります。また、急激な負荷変動があった時でもプライオリティの高い業務やユーザに対しての サービス継続を優先する「サービスレベル保証」の考え方も重要となります。たとえ現在の業務システムが イントラネットに制限され24 時間運転をしていないとしても、ビジネスがグローバルに拡大している今 日、いつインターネット業務システムへの対応を迫られるかわかりません。

アプリケーションサーバでは無停止運用技術が重要となります。つまり、無停止でサービスを提供し続け られるように各種カウンタやログファイルなどが慎重に設計されていることや、サービスを提供するアプ リケーションを動的に追加・置換できることなどが必要です。

1.1.3. 性能

インターネット業務システムは企業内システムでは考えられない不特定多数からのアクセスが発生しま す。

これを効率良く処理するため、またサービス自体の高度化によるデータ処理量の増大に対応するた めにも高性能なアプリケーションサーバが必要となります。

1.1.4. 拡張性

トラフィックの増大に対して、最終的にハードウェアの増設が必要となります。システム全体で提供する サービスを停止することなく、サーバ、CPU、メモリなどのハードウェア資源を増設できる拡張性が重要で す。

また、最適な機能分散により、性能ネックが発生している部分を切り出し、そこに集中して効率的にハード ウェアを増設することが可能です。これによりシステム全体のハードウェア投資を削減、結果としてハー ドウェアを有効活用することができます。

システム内のアプリケーションの配置を自由に変更でき、ビジ ネスロジックがネックになっていればアプリケーションサーバを増設、プレゼンテーションロジックがネック となっていればWeb サーバを増設するなどシステムを柔軟に変更できる高い拡張性が求められます。

1.1.5. 柔軟性

たとえ慎重に設計したとしても、システムは運用を開始するとエンドユーザから多くのサービス追加や変 更の要求を受けるものです。また、IT が急速に変動している現在、今後の新たな技術への対応が求め られることは容易に想像できます。

そのためには、最新の技術を採用するのは当然のこと、今後の新技 術との親和性が高く新製品との相互接続性の高い汎用的な技術を使ったアプリケーションサーバが必 要になります。

1.1.6. 生産性

IT の革新はグローバルレベルの競争を現実のものとしました。このような環境では、他社に勝るサービ スをスピーディに提供することが重要になります。

そのためには、生産性の高い開発環境と簡単に確実な 評価を行える評価環境を持ち、アプリケーションのスピーディな開発を実現することが要求されます。ま た、業務システムを再構築するのではなく、既存のデータベースや業務アプリケーションを資産として有 効利用して新たなサービスをスピーディに提供する、エンタープライズ・アプリケーション・インテグレーシ ョン (EAI) を容易に実現できるシステムが必要です。

1.1.7. 運用性

インターネットを介したシステムでは、基盤として使われるハードウェア・ソフトウェア・技術などが広範囲 に及びます。これらを24 時間365 日無停止でシステムを運用するには、運用者に多くの技術蓄積と監 視・運用操作の負担をかけます。

可能な限りシステムを自動的化することにより、必要最小限の操作で 容易に監視・運用操作でき、操作ミスが発生しない運用環境を実現することが求められます。

1.1.8. 保守性

慎重にシステムを開発しても、予期せぬ障害をゼロにするのは困難です。特にインターネット業務システ ムでは過負荷による障害発生の恐れがあります。

障害解析に必要となる情報を最小限のシステム負荷 で確実に取得し、平時でも容易に性能予測できることが重要です。また、アプリケーションの最適な配 置、部品化はシステム全体のモジュラリティを向上し、変更による影響を明らかにします。

そのためにも、 ソフトウェアの構成管理や世代管理と連携した開発環境が重要になります。

1.1.9. 安全性

インターネット業務システムに限らず、セキュリティアタックは多数発生しています。その結果、今日ではイ ンターネットのEnd-to-End の透過性がファイアウォールにより遮断されるようになりました。機密データ の露呈や、不正アクセス、改竄、盗聴、成りすましなどアタック技術も日々進歩しています。現時点では 十分なセキュリティ対策だとしても、将来のアタックには無効かも知れません。

アプリケーションは上記のようにスピーディに強化されることが必要ですが、一度作ったアプリケーション がセキュリティ攻撃に対応するために改造を必要としたのでは大変です。ファイアウォールなどのアプラ イアンスサーバを活用して、セキュリティ強化の影響をアプリケーションから独立させることができる実行 基盤が重要になります。

1.2. サービスインテグレーションとは

ブロードバンドやモバイル普及によるユビキタス化が加速度的に進んでいる中、24 時間365 日どこから でも接続できる安価で高速なインターネットの利用が公共機関、企業、家庭、個人へと拡大し、さらに電 子ショップ、電子商取引、ネットバンキング、ネット証券、音楽・映像配信、ネットオークションなどのシステ ムが当たり前のように社会に浸透しています。

さまざまな業界で多種多様な業務サービスがインターネット上で構築・運用されている中、お客様や市 場・企業のニーズも多様化してきています。それにともなって複数のサービスを組み合わせ、新たなサー ビスを編み出し活用していく動きがでてきています。


図1.2-1

一方、企業内の情報システムに目をやると、企業合併や内部統制・個人情報保護などの法規制に見ら れるような経営環境の大きな変化や、競争激化などの理由から新規の事業立上げ、経営の意思決定を 支援するための新しいシステムの構築、既存事業の収益力強化のためのシステムの改修などがめまぐ るしく進められてきており、その結果多種多様で、部門・システムごとに運用や構成がバラバラな業務が 乱立した状態となっているものも少なくありません。

その結果システム保守工数の増大のみならず、実際の企業経営判断にも大きな悪影響を及ぼす状況 に頭を悩ませている経営者の方も多いことでしょう。

こういった企業内外におけるビジネス連携・システム統合を柔軟かつ迅速に進めることや、事業環境の 変化や戦略変更にすばやく適応できるような、ビジネスを支える真の情報システムを構築することが今 後求められていくと考えられます。


図1.2-2

そのような背景で脚光を浴びているのがサービス指向アーキテクチャ(SOA: Service Oriented Architecture)です。WebOTX が提供するサービスインテグレーション製品群は、次に示すようなSOA に基づく企業システム構築に求められる要件にお応えします。

1.2.1. サービスインテグレーション製品導入前に

企業におけるIT 投資の重点課題は単なるコスト削減から、「業務プロセス・システム再編」といった戦略 的な投資への期待が大きく増加しています。それに伴い「SOA」への関心も日に日に高まっています。

企業の経営者・情報システム部門の方は、システム構築の方法論、プラットフォームのあり方、ビジネス プロセスの改善、アプリケーションのつくり方など、さまざまな観点から最適な仕組みは具体的に何かと 考えた結果、標準インタフェースを持ち、着脱の容易なサービスの集合体としてシステムを構築する SOA が有効ではないか、と認識されているようです。

では、実際にどこから手をつければいいでしょうか。ただやみくもに「SOA に基づくシステムを構築するた めの」製品群を導入するだけでは真の解決は望めません。それどころか、システムのオーバースペック、 それに伴う運用コストの増大の可能性も否定できません。

企業それぞれが目指すシステムのあるべき姿、ゴールによって対応パターンは変わります。

本質は、ビジネスの変化が激しくなっている中で、いかに業務面やシステム面での保守性を高め、長期 間に渡って使えるシステムを構築できるかにあるといっても過言ではありません。ライフサイクルにおけ るシステム変更コストをどのように最適化するかということです。できるだけ長期的な視点に立ってビジ ネスプロセスを考慮し、最適と思われるサービスの粒度に分割したシステムやアプリケーションを構築し ていくための「企画・コンサルティング」が必要です。

1.2.2. サイロ型の縦割りシステムからの脱却

「多種多様で、部門・システムごとに運用や構成がバラバラな業務が乱立した状態」に陥った企業におい て、新たな業務を追加する、あるいは既存の業務に修正を加えるとなった場合、全てのシステムで対応 しなければならない、部門間で複雑な調整が必要など予想外の負担を強いられることになります。運用 面でも新たな教育や作りこみが発生することになり、変化の激しさに対応できなくなることが考えられま す。

逆に、一つの企業内で統一されたシステムを運用していたとしても、M&A や企業統合、新たなパートナ ー企業との取引が発生することにより、異なる運用形態のシステムと連携する必要もでてきます。

機能追加や方針変更などの要求が発生しても、短期間に対応できる柔軟性と高い生産性が求められま す。それへの第一歩として、システムごとに実装されている共通機能を「サービス化」することで、他シス テムとの共同利用を可能とすることが求められます。

また、それらサービス化した部分を取りまとめ、運用方法を一元化するような仕組みも必要とされます。 これは全社あげての一大プロジェクトとなる場合も想定する必要があります。

1.2.3. 既存資産やサービスの再利用

「レガシー・マイグレーション」が注目されてから久しいですが、既存資産として抱えているメインフレーム や旧来からのオープンシステムを活用しつつSOA ベースのシステムに置き換えていくという要件は多く あります。いきなり全てのシステムを置き換えることは、価格・工数の面、リスク管理の面で難しいことも 事実です。

既存資産を活用するために、それらのインタフェースを共通化するための手段や共通化したものを連携 させるための仕組みが必要となります。

1.2.4. 組み合わせた業務の稼働状況を見える化

企業内、および企業間でのシステムでは、状態に応じて必要となる業務を「プロセス」として段階的に実 行していきます。これらの状態管理をアプリケーションやクライアント側で行うとなると、業務の組み合わ せが複雑になればなるほど困難になります。

プロセスの制御や自動化、途中でエラーとなった場合でも処理結果を巻き戻すための後処理を効率よく 実行してくれる環境が求められます。また、プロセスの変更・機能の追加が生じた際には、プロセスの 再定義を行うだけで対応できるような仕組みが重要です。

1.2.5. 高い信頼性

SOA に見られるシステム・業務モデルによって、企業内にとどまらない、インターネットを介しての業務共 有化が進みます。そのため、共有利用している業務が停止することによる社会的な影響は大きく、ビジ ネスの機会損失も甚大なものになりかねません。

そのため業務アプリケーションが実際に動作するサービス実行基盤となる部分には高い信頼性が求め られます。